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(1)コスプレ会場の出会い

美少女着ぐるみたち

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 そうした「中の人」がいなくてもしゃべってくれる美少女着ぐるみもたまにいる。そういった着ぐるみの声は女の子だ。まあ、声優と同じように実際の年齢まではわからないのが残念であるが、中の人が女性だとわかるから一安心だ。それ以外の多くの着ぐるみ美少女は・・・たぶん内臓は男だといえる。

 そんなことを思いつつ着ぐるみ美少女を物色していたら、後ろから呼び止められた。同じようにコスプレイヤーの写真を撮るのが趣味の磯貝だ。そちらの方は素顔をさらしているコスプレイヤー専門のカメラ小僧だったが。

 「やっぱ来ていたんだなあ橘高! お前も好きじゃな、こんな夏の真っ盛りのイベントに来るんだからな。それにしても、お前って彼女いねえんだな。まあ俺もだけど彼女がいたらこんな風に女の子をカメラに収めようとして出歩いたりしねえからな」

 「悪かったな! 俺だって彼女ぐらいはいたさ! いまは疎遠だけど。ところで磯貝、今回のイベントで気になる事あるか?」

 「そうだなあ、今日は晴れてはいるけど思ったよりも気温は高くないからレイヤーさんはやりやすいと言っていたな。それにしてもお前の”好物”だったらいるぞ! お前制服着たのがお気に入りなんだろう」

 「はっきり言うなよ! 学園ものが好きなんだ、学園ものが!」

 俺は少し声を荒げていってしまったが、図星だった。俺が撮るのは魔法少女などファンタジー物ではなく、可愛らしいセーラー服のような衣装かロリーファッション系がほとんどだった。実際にSNSなどにアップしている作品もそうだった。

 「それにしても、美少女着ぐるみの内蔵が野郎って場合あるんだろ? 俺はいやだなあ、それは人をだますようで。にしてもお前それでいいんか?」

 磯貝はそういったが、俺が美少女着ぐるみに夢中なのは、中の人が野郎であってもその造形が美しかったら、それで楽しめるからだ。それだけの話だった。

 だから画像を撮るだけの事だった。それに、撮影の許可を得るためにコミュニケーションを撮るのが楽しかった。時には拒否されることもあるけど。

 コスプレ会場には大勢のコスプレイヤーにそれよりも多数のギャラリーで埋め尽くされていた。レイヤーの中にはネットアイドルのように人気がある女の子もいるし、思い思いのコスプレを楽しんでいる人たちもいっぱいいた。なかには女装子も少なくなかったが、俺には出来ない事だと思った。その度胸は見習うべきだと感じていた。

 俺はその中から美少女着ぐるみを探していた。着ぐるみマスクは一点一点がハンドメイドなので、価格も高めで他のコスプレよりも金がかかるものだった。しかも全身を肌色のタイツで覆い、マスクをするのだから、戦隊ものや怪獣もののスーツアクターやスーツアクトレスと同じように耐えないといけない代物だ。

 今日のような暑い日差しのイベントにいる美少女着ぐるみはそういった苦労をしているはずだが、当然のことだが表情は笑顔のままで、颯爽とした姿で撮影に応じてくれた。そこに俺はひかれていた。

 その日も俺は着ぐるみ美少女の撮影に夢中になっていたが、そのあと人生を変える着ぐるみに出会うとは思ってもいなかった。
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