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(外伝一)アルテミスの美少女着ぐるみ隊
アルテミスの美少女着ぐるみ隊イベントに参加する!
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作者である成海が個人的な趣味で結成したのがアルテミスの美少女着ぐるみ隊であった。着ぐるみ美少女がコスプレイベントだけでなく同人誌即売会などで開催されるコスプレイベントに出てくるのは現在では珍しい事ではない。しかしこのアルテミスの美少女着ぐるみ隊が変わっているのは大ヒットしたライトノベルでアニメ化もされた作品世界を表現するものとして、原作者自身が個人的に資金と人材を提供していることである。だから他のレイヤーからすれば異端といえる存在だった。
成海とアルテミスの美少女着ぐるみ隊が参加するイベントは公式なものが多く、当然の事であるが二人のメインヒロインである基美と真里亜は確実に参加する場合が多い。だから志桜里の参加頻度は当然多くなった。まだ体調が完全に戻っていない彼女からすれば、ちょっとしたアルバイトとなってよかった。
そんなある日の事、アルテミスの美少女たちの新刊発売イベントが行われた。これは出版元から近い大規模書店のコンコースで開催されたもので、華を添える意味で二人の着ぐるみ美少女が先生に付き添っていた。ちなみに成海は書店員のような恰好が普段着であるが、公式な場ではいつもサイヴァン先生の魔女のような老教師の衣装で登場している。
志桜里はイベントのアルバイトに行くときはいつも荷物をあまり持って行かなかった。それは誰が着ぐるみの内臓なのかを悟らせないためである。今日は書店の従業員通用口から入って楽屋として用意された在庫倉庫の一角に向った。そこには先生とスタッフ、そして真里亜の内臓の女の子が集まるはずだった。真里亜の内臓は先生が気に入った者が見つからないので、その時々に体形の近いモデルや女優を派遣してもらっていた。今日は出版元の紹介で若手女優の女の子が来るはずだった。
その若手女優、といってもまだ舞台経験の少ない新人に毛が生えた程度の女の子で、着ぐるみの内臓になるモノ初めてという事だった。そのせいか一番最後にやってきた。彼女のようなキャリアのない女優にマネージャーなんていうものは付き添っていなかった。それに表情はなんとなく不満で満ち溢れていた。
彼女は扱いとしてはモデルであったが、モデルなり女優なり売れていくためには顔の認知度が高くならなければならない。なのに、アニメの着ぐるみマスクを被るなんて! そんな仕事が嫌だった。これがスーツアクトレスや声優のように顔が出ない事を前提の仕事なら割り切れるけど、着ぐるみの内臓なんて仕事は嫌だった。もっとも彼女が拒否できなかったのは、仕事の贅沢を言っていられなかったからだ。断ったら次の仕事を回してもらえないかもしれないと恐れていたから。
彼女は電車が遅れたなどと言い分けをしてきて入ってきたが、成海のマネージャーはため息をついていた。真里亜の内臓のテンションの低さに気が付いたからだ。一方の基美の内臓は生き生きしているというのにである。本当ならその場で帰ってもらいたいと思ったけど、なかなか成海が気に入った真里亜の内臓が見つからないので毎回のように体格が似た女の子を紹介してもらっているけど、しっくりいかなかった。
「それじゃあねえ、これに着替えてね。今日は制服姿なので全身肌タイは着なくても大丈夫だからね。結構、構内暑いからね。さあ、全部脱いでね」
そういって真里亜の内臓になる女の子、名前は・・・まあ、特筆することでもないが、彼女に渡したのは顔の部分がくりぬかれた首から上のマスクと手袋だった。
「全部脱ぐのですか・・・せっかくメイクしてきたし勝負下着も・・・」
その時までには志桜里はマスクを被れば基美になれる段階まで着替えが終わっていた。彼女の首から下は基美そのものになっていた。
「基美です、今日はよろしくお願いします。真里亜さん」
志桜里のその挨拶に真里亜の内臓になる彼女の顔が、すこし怪訝そうになった。
「あれ? 基美って大きい女の子だと聞いていたから男だと思っていたけど、あなたって女なの?」
その時、二人の間に気まずい空気が漂っていた。
成海とアルテミスの美少女着ぐるみ隊が参加するイベントは公式なものが多く、当然の事であるが二人のメインヒロインである基美と真里亜は確実に参加する場合が多い。だから志桜里の参加頻度は当然多くなった。まだ体調が完全に戻っていない彼女からすれば、ちょっとしたアルバイトとなってよかった。
そんなある日の事、アルテミスの美少女たちの新刊発売イベントが行われた。これは出版元から近い大規模書店のコンコースで開催されたもので、華を添える意味で二人の着ぐるみ美少女が先生に付き添っていた。ちなみに成海は書店員のような恰好が普段着であるが、公式な場ではいつもサイヴァン先生の魔女のような老教師の衣装で登場している。
志桜里はイベントのアルバイトに行くときはいつも荷物をあまり持って行かなかった。それは誰が着ぐるみの内臓なのかを悟らせないためである。今日は書店の従業員通用口から入って楽屋として用意された在庫倉庫の一角に向った。そこには先生とスタッフ、そして真里亜の内臓の女の子が集まるはずだった。真里亜の内臓は先生が気に入った者が見つからないので、その時々に体形の近いモデルや女優を派遣してもらっていた。今日は出版元の紹介で若手女優の女の子が来るはずだった。
その若手女優、といってもまだ舞台経験の少ない新人に毛が生えた程度の女の子で、着ぐるみの内臓になるモノ初めてという事だった。そのせいか一番最後にやってきた。彼女のようなキャリアのない女優にマネージャーなんていうものは付き添っていなかった。それに表情はなんとなく不満で満ち溢れていた。
彼女は扱いとしてはモデルであったが、モデルなり女優なり売れていくためには顔の認知度が高くならなければならない。なのに、アニメの着ぐるみマスクを被るなんて! そんな仕事が嫌だった。これがスーツアクトレスや声優のように顔が出ない事を前提の仕事なら割り切れるけど、着ぐるみの内臓なんて仕事は嫌だった。もっとも彼女が拒否できなかったのは、仕事の贅沢を言っていられなかったからだ。断ったら次の仕事を回してもらえないかもしれないと恐れていたから。
彼女は電車が遅れたなどと言い分けをしてきて入ってきたが、成海のマネージャーはため息をついていた。真里亜の内臓のテンションの低さに気が付いたからだ。一方の基美の内臓は生き生きしているというのにである。本当ならその場で帰ってもらいたいと思ったけど、なかなか成海が気に入った真里亜の内臓が見つからないので毎回のように体格が似た女の子を紹介してもらっているけど、しっくりいかなかった。
「それじゃあねえ、これに着替えてね。今日は制服姿なので全身肌タイは着なくても大丈夫だからね。結構、構内暑いからね。さあ、全部脱いでね」
そういって真里亜の内臓になる女の子、名前は・・・まあ、特筆することでもないが、彼女に渡したのは顔の部分がくりぬかれた首から上のマスクと手袋だった。
「全部脱ぐのですか・・・せっかくメイクしてきたし勝負下着も・・・」
その時までには志桜里はマスクを被れば基美になれる段階まで着替えが終わっていた。彼女の首から下は基美そのものになっていた。
「基美です、今日はよろしくお願いします。真里亜さん」
志桜里のその挨拶に真里亜の内臓になる彼女の顔が、すこし怪訝そうになった。
「あれ? 基美って大きい女の子だと聞いていたから男だと思っていたけど、あなたって女なの?」
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