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中編
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私マリーが婚約破棄される三週間前、喪服に身を包んで執務室にいた。一緒にいたのは婚約者のトーマスではなく経理担当のポールだ。普通なら父を喪った婚約者を慰めるだろうが、トーマスは政略のために婚約したとはいえ愛情が全くなかった。そればかりか、従姉妹のキャサリンに夢中だ。いまごろは二人してどこかに遊びに行っているだろう。
このウォレス伯爵家は歴史が長く多くの領地と美術品を抱え、大きな館を所有しており、世間的には裕福に見えた。しかし内情は火の車だった。すでに債務超過状態に陥っていた。原因は祖父のジョセフ7世が投資した新天地開発が別の国との紛争に巻き込まれ、多額の損失をだしていた。契約によって損失が発生した場合、投資額以上の負担義務が生じていた。そんな投資や契約をさせたのは叔父のジェイソンだ。あえてハイリスク・ハイリターンの無茶な事をしたのが完全に裏目にでていた。ちなみにこの損失話は現時点では国家機密とされており、叔父はまだ知らなかった。
「旦那様が銀行団や投資家にかけあって、伯爵家の大半の資産を提供するかわりに債務放棄してもらう話が進んでいたのに、水の泡になってしまい申し訳ございません、お嬢様」
ポールは謝罪してくれたが、私も父と一緒に債務放棄してもらうよう交渉していたので、内情は知っていた。次期当主として関わっていたけど、有能な父でも難航したことを未熟な自分一人では無理だと悟っていた。
「仕方ありませんポール、可能な限り努力しましょう。まずは中小や零細の債権者への弁済を優先しましょう。それと伯爵家が最低限存続できるようにしましょう」
その時、私の未来は暗かった。多額の債務がウォレス伯爵家を押しつぶそうとしていたから。それにしても、父が亡くなった馬車事故の疑念が消えなかった。乗っていた馬車が見つからないうちから事故だと一方的に警察がいったことに。それに事故現場が叔父の男爵領だったし・・・
「お嬢様、ご存じかもしれませんが、叔父上のジェイソンさまがこの家の乗っ取りを計画しています。自分の娘夫婦に跡を継がせるつもりだそうです」
「そうね、夫はトーマスでしょ? あの人はキャサリンを見た時から夢中だし」
「言い過ぎですがトーマスさまは攻略しやすがったでしょうね。お嬢様という婚約者がおられるのに顔だけは一流だからって、女の子に何人もチョッカイだしていますから。たぶん不治の病でしょう」
そう、私の婚約者トーマスは無能のうえに無類の女の子好きだ。しかも従姉妹のキャサリンは好みにぴったりだ。使用人によれば婚約者が私じゃなくキャサリンだったらよかったのにと放言していたから。
「まあ、未練はないわ。お父様だって婚約者を交代させようとしていたから。間に合わなかったけど。それはそうと叔父様は本気でウォレス家を乗っ取るつもり?」
「ほぼ確実に・・・情報筋によれば金に物を言わせて無理筋を通そうと工作活動しているそうです。こちらも、旦那様の事故が仕組まれたものではないかと調べているのですが、真相究明に難航していまして、間に合わないかと」
叔父のジェイソンは以前にもこの家の後釜に入る画策をしていた。お母様が若くして儚くなって、子供が娘の私しかいないとして女に伯爵家は継げないなどと横やりを入れていた。そして今は実力行使に出たわけだ。もしかするとお父様を亡き者にしたあとは、私を法的にも実際にも亡き者にしようとしているようだ。叔父は大変欲深く悪知恵が働くから。でも、このウォレス家の財務状況は知らなかったみたいだ。
「そうね、一層の事この家を捨てたいわ!」
少し冗談のようにいったが、ポールは真剣な顔をした。
「私に考えがあります。ジェイソンさまに譲ってしまいましょう! そのかわりお嬢様をお救いしますから!」
思わず私は呆気にとられた顔をした。それが全ての終わりの始まりだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジェイソンは全てうまくいったことに満足していた。持病を悪化させ父親の死期を早めさせ、邪魔な兄を事故に見せかけて亡き者にした。そして姪は行方不明になった。一応は探してはみたけど、どうも「合法的」に隣国に出国したようなので、後追いをしなかった。貴族の人間が政府の届け出なしに出国すれば、場合によっては貴族階級が没収される。でも、没収されたらウォレス家の家督相続に支障があるので黙殺する事にした。
世間的にはマリーは相続権を放棄した後、何処に出奔したあと行方不明と公表した。そしてウォレス家の家督相続手続きが完了し、半年が経過した今日は娘のキャサリンと娘婿のトーマスの結婚式だ。ジェイソンは贅を尽くした結婚式をあげさせた。この時が人生の最高潮だと知らなかった。
ウォレス家邸では豪華なパーティーが開かれていた。国内外の貴族などが集う華やかなものだった。ジェイソンが悦に入っていた時の事だ。突然、黒い服を着た集団が入ってきた。
「無礼者! いまパーティーしている最中だぞ!」
「失礼ですが、我々は財務省から派遣された者です。これからウォレス伯爵家を管理下に置きます」
「なんだと! 理由は?」
「この家が出資していた新天地植民地の賠償金の滞納です。先代のジョセフ8世様が策定していた返済計画をあなたが無視している。だからです」
「ちょっとまて! 新天地植民地は順調に収益を上げているのではないか?」
「それは一年前です、今は状況が変わりました。さては、あなたはウォレス家の負債について調べなかったのではありませんか?」
ジェイソンはしまったと思った。ウォレス家のプラスの資産に満足して、負債の事は殆ど考えていなかった。ましては目ぼしい投資は新天地植民地しかないから、うまくいっていると安心していたのに!
「では、どうなる?」
「とりあえず、資産確認ですが。まあ負債額と資産が同じなら国にとってもいいですが、マイナスの可能性もありますよ」
「そんな!」
ジェイソンが肩を落としているとき、新郎新婦は幸せの絶頂だった。なにが起きているのか洞察できないほどの能力だったから・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いよいよ始まったそうです。叔父様はおわりでしょう」
私はポールの手引きで母国から遠く離れた国に亡命していた。ここはポールの生まれた国でもあった。ここでウォレス家が没落し始めたとの記事を載せた新聞を見ていた。
「そうね、叔父様には感謝ですわ。わざわざシロアリに食い荒らされた伯爵家を乗っ取ってくれたのですから。それに私を失踪の上に死んだ事にしてくれて」
あの日、ポールに救い出された直後に国境まで移動してすぐ出国した私は、そこでポールが用意した偽装旅券を使いこの国まで移動してきた。そこで亡命したわけだ。今は別人になったというわけだ。
「でも、お嬢様これでよかったのですか?」
「心残りといえば、お父様の死の真相が明らかにされていないことです。叔父様が罰せられないなんて」
「それは大丈夫です。僕たちの協力者が証拠をつかんだそうです。あとはあの国の最高検察庁にリークすれば」
「ありがとうございます!」
私が感謝しているとポールは恭しく何かを差し出してきた。
「お嬢様、いやマリー。僕とこれからもずっと暮らしませんか?」
それは婚約指輪だった。私の返事は決まっていて、彼の胸の中に飛び込んでいた。
このウォレス伯爵家は歴史が長く多くの領地と美術品を抱え、大きな館を所有しており、世間的には裕福に見えた。しかし内情は火の車だった。すでに債務超過状態に陥っていた。原因は祖父のジョセフ7世が投資した新天地開発が別の国との紛争に巻き込まれ、多額の損失をだしていた。契約によって損失が発生した場合、投資額以上の負担義務が生じていた。そんな投資や契約をさせたのは叔父のジェイソンだ。あえてハイリスク・ハイリターンの無茶な事をしたのが完全に裏目にでていた。ちなみにこの損失話は現時点では国家機密とされており、叔父はまだ知らなかった。
「旦那様が銀行団や投資家にかけあって、伯爵家の大半の資産を提供するかわりに債務放棄してもらう話が進んでいたのに、水の泡になってしまい申し訳ございません、お嬢様」
ポールは謝罪してくれたが、私も父と一緒に債務放棄してもらうよう交渉していたので、内情は知っていた。次期当主として関わっていたけど、有能な父でも難航したことを未熟な自分一人では無理だと悟っていた。
「仕方ありませんポール、可能な限り努力しましょう。まずは中小や零細の債権者への弁済を優先しましょう。それと伯爵家が最低限存続できるようにしましょう」
その時、私の未来は暗かった。多額の債務がウォレス伯爵家を押しつぶそうとしていたから。それにしても、父が亡くなった馬車事故の疑念が消えなかった。乗っていた馬車が見つからないうちから事故だと一方的に警察がいったことに。それに事故現場が叔父の男爵領だったし・・・
「お嬢様、ご存じかもしれませんが、叔父上のジェイソンさまがこの家の乗っ取りを計画しています。自分の娘夫婦に跡を継がせるつもりだそうです」
「そうね、夫はトーマスでしょ? あの人はキャサリンを見た時から夢中だし」
「言い過ぎですがトーマスさまは攻略しやすがったでしょうね。お嬢様という婚約者がおられるのに顔だけは一流だからって、女の子に何人もチョッカイだしていますから。たぶん不治の病でしょう」
そう、私の婚約者トーマスは無能のうえに無類の女の子好きだ。しかも従姉妹のキャサリンは好みにぴったりだ。使用人によれば婚約者が私じゃなくキャサリンだったらよかったのにと放言していたから。
「まあ、未練はないわ。お父様だって婚約者を交代させようとしていたから。間に合わなかったけど。それはそうと叔父様は本気でウォレス家を乗っ取るつもり?」
「ほぼ確実に・・・情報筋によれば金に物を言わせて無理筋を通そうと工作活動しているそうです。こちらも、旦那様の事故が仕組まれたものではないかと調べているのですが、真相究明に難航していまして、間に合わないかと」
叔父のジェイソンは以前にもこの家の後釜に入る画策をしていた。お母様が若くして儚くなって、子供が娘の私しかいないとして女に伯爵家は継げないなどと横やりを入れていた。そして今は実力行使に出たわけだ。もしかするとお父様を亡き者にしたあとは、私を法的にも実際にも亡き者にしようとしているようだ。叔父は大変欲深く悪知恵が働くから。でも、このウォレス家の財務状況は知らなかったみたいだ。
「そうね、一層の事この家を捨てたいわ!」
少し冗談のようにいったが、ポールは真剣な顔をした。
「私に考えがあります。ジェイソンさまに譲ってしまいましょう! そのかわりお嬢様をお救いしますから!」
思わず私は呆気にとられた顔をした。それが全ての終わりの始まりだった。
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ジェイソンは全てうまくいったことに満足していた。持病を悪化させ父親の死期を早めさせ、邪魔な兄を事故に見せかけて亡き者にした。そして姪は行方不明になった。一応は探してはみたけど、どうも「合法的」に隣国に出国したようなので、後追いをしなかった。貴族の人間が政府の届け出なしに出国すれば、場合によっては貴族階級が没収される。でも、没収されたらウォレス家の家督相続に支障があるので黙殺する事にした。
世間的にはマリーは相続権を放棄した後、何処に出奔したあと行方不明と公表した。そしてウォレス家の家督相続手続きが完了し、半年が経過した今日は娘のキャサリンと娘婿のトーマスの結婚式だ。ジェイソンは贅を尽くした結婚式をあげさせた。この時が人生の最高潮だと知らなかった。
ウォレス家邸では豪華なパーティーが開かれていた。国内外の貴族などが集う華やかなものだった。ジェイソンが悦に入っていた時の事だ。突然、黒い服を着た集団が入ってきた。
「無礼者! いまパーティーしている最中だぞ!」
「失礼ですが、我々は財務省から派遣された者です。これからウォレス伯爵家を管理下に置きます」
「なんだと! 理由は?」
「この家が出資していた新天地植民地の賠償金の滞納です。先代のジョセフ8世様が策定していた返済計画をあなたが無視している。だからです」
「ちょっとまて! 新天地植民地は順調に収益を上げているのではないか?」
「それは一年前です、今は状況が変わりました。さては、あなたはウォレス家の負債について調べなかったのではありませんか?」
ジェイソンはしまったと思った。ウォレス家のプラスの資産に満足して、負債の事は殆ど考えていなかった。ましては目ぼしい投資は新天地植民地しかないから、うまくいっていると安心していたのに!
「では、どうなる?」
「とりあえず、資産確認ですが。まあ負債額と資産が同じなら国にとってもいいですが、マイナスの可能性もありますよ」
「そんな!」
ジェイソンが肩を落としているとき、新郎新婦は幸せの絶頂だった。なにが起きているのか洞察できないほどの能力だったから・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いよいよ始まったそうです。叔父様はおわりでしょう」
私はポールの手引きで母国から遠く離れた国に亡命していた。ここはポールの生まれた国でもあった。ここでウォレス家が没落し始めたとの記事を載せた新聞を見ていた。
「そうね、叔父様には感謝ですわ。わざわざシロアリに食い荒らされた伯爵家を乗っ取ってくれたのですから。それに私を失踪の上に死んだ事にしてくれて」
あの日、ポールに救い出された直後に国境まで移動してすぐ出国した私は、そこでポールが用意した偽装旅券を使いこの国まで移動してきた。そこで亡命したわけだ。今は別人になったというわけだ。
「でも、お嬢様これでよかったのですか?」
「心残りといえば、お父様の死の真相が明らかにされていないことです。叔父様が罰せられないなんて」
「それは大丈夫です。僕たちの協力者が証拠をつかんだそうです。あとはあの国の最高検察庁にリークすれば」
「ありがとうございます!」
私が感謝しているとポールは恭しく何かを差し出してきた。
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