孤独な箱舟の惨劇

ジャン・幸田

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(一)幽霊船

01・少女A(1)

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 全身拘束刑囚人08567は長い人工冬眠から目覚めた。彼は自分が何の罪でこのような仕打ちを受けたのか思い出せなかった。もしかすると長い人工冬眠の副作用のせいかもしれなかった。現状を把握しようとして視覚モニターを起動させたら。先ほど目覚めたときに受けたヴィジョンと同じ可愛らしい少女がいた。

 これってメイド服? それにしてもロリ趣味が入っているよな。彼女の服は過剰な装飾があって胸元の露出もあって労働服にしては不向きなようであった。でも、なんか懐かしかった。

 「おはよう! 08567さん! 起きてください!」

 彼女はそう言って何かの操作盤らしきものをいじった。すると身体が動くようになったが、異常に動き辛かった。

 「起動!」

 08567の無粋な人工音声が響いた。

 「うーん! やっぱり数十世紀も動いていないから錆びついたみたいな動きですね! まあ、メンテナンスルームに行かなくちゃね」

 彼女はそういって08567のボディに触った。彼女の手は温かかったが、彼のボディは堅く冷たいのが自分でわかった。

 「ちょっとまってくれないか? 自分は誰で君は誰なんだ?」

 08567は質問した。自分は金属の外骨格に覆われていることに驚いていた。

 「あなたはね08567よ! 人工冬眠から覚醒した開拓者よ。わたしはこの移民船のコーディネーターロボのA12」

 彼女は自分はロボットだといったが、彼女の温もりは人間そのものだし、彼の方がロボットそのものだった。

 「A12・・・と08567か。なんだか味気ないなあ。なんか別ないいかたないのか?」

 そういうと彼女は少し困った顔をした。その表情に胸に何かの雷か落ちてきたような感覚があった。これってなんなんだ? そう思っていると、彼女は笑顔でこういった。

 「それじゃあこうしましょう。あんたのお名前は・・・なんでだろう、記録が欠落しているからとりあえずディズでいいかしら? わたしは・・・そうねえアリスでいいわ!」

 アリスと名乗った少女はディズの手を引いた。ディズは自分の手を見て驚愕した。紺色のボディをしていた!
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