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弑逆未遂の濡れ衣を着せられ婚約破棄された娘は修道院で黒い人形にされました

中編

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 娘が目覚めたのは修道院だった。そこで貴族いや人間として死んだ娘は魔法によって黒い漆器のような人形の
内臓にされていた。娘の身体は人形を動力源にされた。そして老婆に17号の番号を与えられた。

 17号にされた少し前に老朽化により活動停止した内臓の代わりになった。黒い人形は修道院の敷地内でのみ稼働できる設定で、もし修道院の外に出ると内臓が灰になってしまう。そのため修道院の外に行くのは不可能だった。そのうえ、意識は残っていても修道女の命令に従うだけなので、自由はなかった。ただ、労働するだけの道具だった。


 そんな17号は修道院内の農場で過酷な労働についた。そこでは同じような黒い人形が働かされていた。その人形たちは死を持って償う罪を犯した女性のうち比較的若い者が入れられていた。その人形に入れられると一生出ることができないとされ、活動停止すなわち肉体が死ぬか特赦がない限り人間に戻れないという。

 それを聞かされた17号は黒い人形の中で苦しむ事になった。こんなのなら死ぬ方がましだった、今すぐ死にたいでも出来ないと。そう、生与奪の権利は全て修道院が握っていて自由な意志はなかった。毎日、過酷な労働でへとへとになっても、翌朝は元の体調になっていた。もう道具でしかなかったから。

 三周りの四季が巡って行ったときのことだ。修道女の食料になる穀物の種を植えるために17号が畑を耕していた時のことだ。ドロにまみれている人形に一人の高位男性が近寄ってきた。17号の脳裏に何かが蘇る気がしたが、注意をそらすことは出来なかった。

 「17号! 作業を中止せよ!」

 監督役の修道女の命令で動作をやめた17号はその高位男性の前に行くように指示された。そして17号は信じられない事に臣下の礼を取った。その男性は王族だった。

 「17号いや・・・名前は今はないな。もうすぐお前を人形の中から救い出せるかも、いや絶対にできる。だから、もう少しの辛抱だ!」

 その言葉に17号はどういう意味なのと聞きたかったが、言葉を失っていて出来なかった。その様子を見た男は涙ぐんでいた。でも、17号は顔見知りだったのは思い出せたが名前と素性が浮かばなかった。

 それからしばらくして初夏になった時、大きな変化が起きた。自分を人形にした老婆に連れてこられた。そこにいたのは一人の少女で憎しみの感情を抱いたことがあった相手だった。それは元婚約者の幼馴染だった。まるで死体のようだったが・・・

 「17号、お前を嵌めた奴だ! この度死罪になったので、これから人形の中に閉じ込める! よく見とくんだな!」

 その女はドロドロの中に落とされて人形の外枠に流し込まれた。そして黒い人形に封じ込まれた。

 「おい、39号! 天下の悪女よ! 貴様はここにいる17号の代わりに黒い人形になれ! いいか!」

 そういわれた39号は小刻みに震えていたが、何が起きているのかわからなかった。すると老婆は17号にさっき39号が人形にされた水槽に入るように命じられた。そしてドロドロの液体に覆われると・・・安らかな気持ちになった。そしてしばらくすると、元の姿に戻っていた。生まれたときのような姿であったが・・・一体どうなっているのかわからなかった元17号であった。
 
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