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 俺にとって国王陛下、いや親父は優しすぎだと思っていた。そんな父親がすることで一番嫌だったのはマリアンヌを甘やかしていたことだ。いくら頭がいいといって気に入ったとしても、奴が気に入らないという俺の気持ちなんか考えてくれなかった。そんな親父が死の床に臥せったとしったとき、俺は婚約破棄を計画したわけさ。

 一番困ったのはマリアンヌを追い出す口実だった。彼女、いや奴は完璧すぎたわけさ。そこで俺は安っぽい恋愛小説から発想を得たわけだ。俺が好きになった娘をイジメているといって追い出したわけだ。ジャンヌは恋のライバルであるマリアンヌを嫌っていたから、悪いようにしかいっていなかったので都合がよかったのさ。


 「摂政陛下。婚約破棄をしたマリアンヌ様ですが、これでよかったのですか?」

 王家の私事を管轄する宮内省の幹部が伺いをしにきた。

 「なんだ?」

 「いえ、婚約破棄ですが・・・証拠がないのですが」

 「証拠? そんなのどうでもいいだろう。今は俺が最高権力者なんだからどうにでもなるだろう」

 「はい・・・」

 そうやって引き返していったら、今度はそいつの上司が来た。

 「困りました・・・いままで前例がありません。婚約破棄でその・・・イジメを理由にしたものはございません。どちらかといえば・・・」

 「なんだというのだ?」

 「あの、その、婚約破棄は異端だと・・・」

 「異端だと?」

 俺は執務机にあったペーパーナイフを手にして、こいつを切り裂きたい程、頭に血が上っていた。
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