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第二章 聖女フランチェスカの受難
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フランチェスカの出自は残念ながら何ひとつ分からない。記録によれば匿名の何者かの手で孤児院に預けられたというしかわからない。ただ、美しく成長していることから、それなりの部族の血縁者のようだ。そんな彼女が10歳のときに聖女候補として見出された。以来、厳しい聖女修行を経て現在では最上位の聖女の一人といわれるまでになった。
彼女が任命された破魔の聖女は危険な任務であることから、上流貴族並みの待遇を約束されていた。しかし、いつまでも元の孤児院にいる子供たちを弟や妹のように援助を惜しみなく行っていた。また治安の悪い地区にある孤児院に一人で出かけていた。普通なら若い女性一人で歩いたら無事ですみそうもないが、フランチェスカの場合はどんなゴロツキも手を出さないという。原因は本人も分からなかったが、噂では悪いものほど恐れるオーラが自然に発生していたという。
「すいません、そこにおいてください」
用心棒というよりも荷物持ちをしていたアベルが孤児院についたのは日が暮れかかったことだ。
「フランチェスカ様。外泊の許可はとられているのですか?」
「はい、ここに」
そこには、聖女たちを管理する聖務尚書の許可状があった。たしかにこれで孤児院に泊まることができる。
「わかりました。それでは」
アベルは帰ろうとした。帰る場所は騎士団の宿舎だ。騎士団長は非番でも定められた場所にすぐ戻れるところまでしか外出できなかった。もちろん、外泊は論外だった。
「せっかくですから、弟や妹たちに会っていただけないでしょうか?」
フランチェスカの申し出にアベルは戸惑っていた。
彼女が任命された破魔の聖女は危険な任務であることから、上流貴族並みの待遇を約束されていた。しかし、いつまでも元の孤児院にいる子供たちを弟や妹のように援助を惜しみなく行っていた。また治安の悪い地区にある孤児院に一人で出かけていた。普通なら若い女性一人で歩いたら無事ですみそうもないが、フランチェスカの場合はどんなゴロツキも手を出さないという。原因は本人も分からなかったが、噂では悪いものほど恐れるオーラが自然に発生していたという。
「すいません、そこにおいてください」
用心棒というよりも荷物持ちをしていたアベルが孤児院についたのは日が暮れかかったことだ。
「フランチェスカ様。外泊の許可はとられているのですか?」
「はい、ここに」
そこには、聖女たちを管理する聖務尚書の許可状があった。たしかにこれで孤児院に泊まることができる。
「わかりました。それでは」
アベルは帰ろうとした。帰る場所は騎士団の宿舎だ。騎士団長は非番でも定められた場所にすぐ戻れるところまでしか外出できなかった。もちろん、外泊は論外だった。
「せっかくですから、弟や妹たちに会っていただけないでしょうか?」
フランチェスカの申し出にアベルは戸惑っていた。
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