メイコンな彼女に振り回されて

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
9 / 12
一章・二人暮らしの意味

ひとつの身体を共有

しおりを挟む
 慎司は自分の身体が女体化したことに驚いていた。でも、心の中にさっきまでいたはずの美齢の声が響いた。

 「あなたの身体を貸してもらっているわよ。わたしの魂は幽霊の姿である程度実体化できるし、軽いモノだったら物体を動かすことができるけど、出来ない事もあるのよ。それは戦う事! わたしを殺したあいつを封印しなければ大変なことになるのよ、この世界は!」

 そういわれても慎司は信じられなかった。自分の身体は美齢に憑依されると、本人になるなんて。それで、思わすしたのは自分の股間を触る事だった。アソコはなかった。すると怒りの声が聞こえた。

 「なにやっているのよ! エッチ! こうしてやるわよ」

 すると身体の自由は奪われ美齢の意志が優先するようになったらしく勝手に身体が動き出した。

 「どういうこと?」

 「決まっているじゃないのよ! 憑依している間は私の身体としていつでも動かせるのよ!」

 「ご、ごめん、夢かと思ったんだ!」

 「まあ、謝ってくれるの? まあ、いいや。でも、準備させてね。わたしも日本に行くんだからね」

 そういうと美齢は自分の部屋へと入った。そこはその国の若い娘らしい飾り付けがされた部屋だった。スーツケースに荷物を積めると写真たてを手に取った。

 「これがわたしの両親よ! この世界を護るためにあちらこちらを旅しているのよ。でも、残念なのは生きてもう会えない事ね。わたしは僅かな骨だけになったから、仕方ないわね。幽霊として会いたくないしね。だから手紙を書くから・・・あなたの意識眠ってちょうだいね!」

 そういわれ慎司の意識はシャットアウトさせられたかのようになった。

 いつの間にか朝が来てしまった。なんか悪い夢でもみたものだと慎司が目を覚ますと目の前には美齢がいた。彼女はまるで旅行に行くような格好をしていた。

 「き、きみは美齢?」

 「そうよ、当たり前じゃないのよ、あなたの妻なんだから一緒に行動するのは! はやく飛行場に行かないといけないでしょう」

 明るく爽やかな笑顔を見せて手を取ったが、彼女の手に体温はなかった。死人のように。

 「う、うんわかった。でも、君ってその幽霊だろ? 飛行機に乗れるのかい?」

 「それは大丈夫! わたしは身体は消失しているけど死亡届を役所に出していないから法律上は生きているのよ。それに、ちゃんと日本の留学ビザも取得しているしね」

 こうして、慎司は幽霊の美齢と新しい生活へと出発した。これから起きる事態を何も想像することは彼には出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

入れ替わりノート

廣瀬純一
ファンタジー
誰かと入れ替われるノートの話

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...