メイコンな彼女に振り回されて

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
6 / 12
序章・メイコンな彼女

幽霊?

しおりを挟む
 劉美齢、それが彼女の名前だった。黒く長い髪、大きな瞳、そして均整がとれた顔立ちに、鍛えられているが女性らしいメリハリがあるボディライン。それらは全て完璧であった。ただ、この世の者でないという点をのぞけばであるが。

 「ちょっと待ってくれいないか? 君って死んだはずではないのか? それじゃあ幽霊なのか?」

 慎司は嬉しいよりも驚きの方が上回っていた。死んだと聞かされていたはずなのに、目の前に自分と結婚した娘がいるのだから。

 「うん、そうよ。フツーにいえば幽霊になるわね」

 そういうと美齢は一気に缶ビールを飲み干していた。

 「幽霊っていったって、足があるじゃないの!」

 そういって美齢の足を触ろうとしたら突き抜けてしまった感覚があった。

 「足? そういえば日本じゃ幽霊って足がないって言うそうだってね。でも、ここでは足があるし、わたしって特別な魂なのよ! なんだって五千年も生と死を繰り返してきたからね」

 そういって、美齢は顔を慎司の目の前に摺り寄せてきた。彼女は美人だと感じたけど、幽霊ならばタナトスなんだよなという事を感じていた慎司の身体は震えていた。

 「ご、五千年ですか・・・つまりは転生してきたわけってことなの? 本当にそんなことが?」

 美齢の瞳は深い闇のように感じていた。それにしても幽霊なのになぜビールが飲めたんだろうかという事を考えていたが、慎司はなにをまずしないといけないかが、分からなかった。大抵の人間なら逃げるという選択肢があるはずだが、ここは異国。逃げ出しても行くところもないし、理由を言ったところで頭がおかしくなった日本人、という扱いをされるのが目に見えていた。

 「そうよ! あるのよ! それにしても聞いてくれる? 私が死んだ理由を!」
 
 美齢はそういって髪をかき上げていた。そういえば美齢が死んだ経緯をなにも聞いていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた エアコンまとめ

エアコン
恋愛
冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた とエアコンの作品色々

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...