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序章・メイコンな彼女
美齢参上!
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慎司はそのまんま冥婚の儀式を受けた。冥婚は死んだ人間同士もしくは片方が死んでいる結婚であるが当然形式的なものである。だから中華風の結婚式を挙げても全く盛り上がらなかった。しかも式場が斎場なので陰気な空気が漂っていた。参列者は死者ばかりかのような雰囲気だった。式場の新婦の席に置かれた中華風の着るものがいない花嫁衣装が印象的だった。
本当なら慎司は夕方のLCCの飛行機で日本に帰国するつもりだったが、明日にしてくれと言われた。交換条件は明日の昼に某大手航空会社のビジネスクラスに二人(!)予約してあげるというものだったが、もうこの世にいない新妻の席もあるのかと不思議であった。
その晩、宿泊先に指定されたのは美齢の実家の一室だった。彼女の正体はよく分からないが、それなりに大きな家であったが、なぜか両親などはいなかった。だから広い屋敷に独りぼっちにされた。そこはまるで結婚初夜を迎えた雰囲気なのかもしれないが、かえって恐ろしかった。
一人きりにされた慎司は、備え付けの冷蔵庫からビールを持ってきて一人きりで缶を開けていた。こんな風に一人で食事するのは日常的であり、この旅においても珍しい事でなかった。それにしても二十万円という現金に目がくらんで死んだ娘と結婚するなんてどうかしていると思って後悔していた。
目の前のテーブルには美齢の写真と彼女が死の直前までしていた璧で出来た腕輪が置かれていた。彼女の顔は慎司の理想であり、本当なら生きているうちに出会いたかったと思っていた。しかし、慎司は生きてきた年齢イコール彼女ナシなので、どんなふうに女と付き合うのか想像できなかった。そんなとき、横に気配がしたので振り向くとそこには慎司が飲んでいたビール缶に口付ける娘がいた。
「いつのまに、君が、その?」
慎司がそういうと娘の方が近寄ってきてこういった。その娘はさっきみた花嫁衣裳を身にまとっていた。
「決まっているじゃないのよ! 慎司、あなたの妻の美齢よ! 結婚してくれてありがとう! こうしてこの世に戻ってこれたんだから!」
動く美齢に初めて会った慎司だった。
本当なら慎司は夕方のLCCの飛行機で日本に帰国するつもりだったが、明日にしてくれと言われた。交換条件は明日の昼に某大手航空会社のビジネスクラスに二人(!)予約してあげるというものだったが、もうこの世にいない新妻の席もあるのかと不思議であった。
その晩、宿泊先に指定されたのは美齢の実家の一室だった。彼女の正体はよく分からないが、それなりに大きな家であったが、なぜか両親などはいなかった。だから広い屋敷に独りぼっちにされた。そこはまるで結婚初夜を迎えた雰囲気なのかもしれないが、かえって恐ろしかった。
一人きりにされた慎司は、備え付けの冷蔵庫からビールを持ってきて一人きりで缶を開けていた。こんな風に一人で食事するのは日常的であり、この旅においても珍しい事でなかった。それにしても二十万円という現金に目がくらんで死んだ娘と結婚するなんてどうかしていると思って後悔していた。
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「いつのまに、君が、その?」
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「決まっているじゃないのよ! 慎司、あなたの妻の美齢よ! 結婚してくれてありがとう! こうしてこの世に戻ってこれたんだから!」
動く美齢に初めて会った慎司だった。
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