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(1)人形娘と機械娘
016.紹介してあげる
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仮想現実の中の美緒さんは綺麗な女性だった。同性のわたしが見ても憧れるような女性だった。なのに父はどうして人形娘ではなく機械娘にしたのだろう? その理由が分かったのは相当あとのことだった。
美緒さんはもう一度服を着せてくれたけど、わたしは人形娘の状態なので表情はかわらなかった。もっとも高校時代から喜怒哀楽の表情に乏しいいなどと周囲からいわれていたので、本当は大した違いなんかなかったのかもしれない。まあ笑顔で表情が固定化されているからいいのかもしれなかったけど。
「そうだ、奈緒美さん。これから紹介してあげたい人がいるのよ。これからあなたの教官になる人だから」
「え、教官? わたしに何を教えるというのですか?」
「決まっているんじゃないの、人形娘として活躍するための術よ!」
「そういうことは、その人も人形娘なの?」
「ううん、でも似たような物じゃないのかな? でも、今は人間だけどこれから改造措置を受けるからね」
そういうと美緒さんはわたしの手を取って大きな鏡のような部屋に案内してくれた。どうも、この仮想空間は現実世界の状況を確認できるようになっているようだった。
その鏡には三十過ぎのキャリア・ウーマンと言った雰囲気がある美人が写っていた。
「この人は?」
「この人は芝草杏奈というのよ。この人は脳漿を電脳化しているけど、いろいろ事情があってね人間体のままなのよ。でも、ここに来るたびに機械娘に変身するのよ」
「変身? 機械娘って元に戻れるの? そうしたら美緒さんも人間にもどれるんじゃないのよ?」
「いえ、私は戻らないわよ、もう元の人間には。人形娘もそうだけど機械娘には三種類あるのよ。一つはあなたがなっている疑似機械娘でこれはお洋服のように着ているだけね。
これから杏奈さんがなるのは制式機械娘、簡単に言えばパワードスーツの強化版よ。長期の宇宙旅行で何か月も着用しても大丈夫なようになっていてね、生体維持機能が優れているわよ。
それで私の場合はねえ内部構造まで改造されている真正機械娘で、機能は最高レベルだけど脱ぐことなんかできないわね。
「どうしてそんな身体にうちの父はあなたを改造したのですか? こんなに綺麗なのに!」
わたしは美緒さんを思わずハグしていた。彼女の身体は暖かく柔らかく長い亜麻色のサラサラとした髪がわたしの手にまとわりついていた。しかし、その美緒さんの身体の感覚は全て仮想現実の中の幻に過ぎなかった・・・
美緒さんはもう一度服を着せてくれたけど、わたしは人形娘の状態なので表情はかわらなかった。もっとも高校時代から喜怒哀楽の表情に乏しいいなどと周囲からいわれていたので、本当は大した違いなんかなかったのかもしれない。まあ笑顔で表情が固定化されているからいいのかもしれなかったけど。
「そうだ、奈緒美さん。これから紹介してあげたい人がいるのよ。これからあなたの教官になる人だから」
「え、教官? わたしに何を教えるというのですか?」
「決まっているんじゃないの、人形娘として活躍するための術よ!」
「そういうことは、その人も人形娘なの?」
「ううん、でも似たような物じゃないのかな? でも、今は人間だけどこれから改造措置を受けるからね」
そういうと美緒さんはわたしの手を取って大きな鏡のような部屋に案内してくれた。どうも、この仮想空間は現実世界の状況を確認できるようになっているようだった。
その鏡には三十過ぎのキャリア・ウーマンと言った雰囲気がある美人が写っていた。
「この人は?」
「この人は芝草杏奈というのよ。この人は脳漿を電脳化しているけど、いろいろ事情があってね人間体のままなのよ。でも、ここに来るたびに機械娘に変身するのよ」
「変身? 機械娘って元に戻れるの? そうしたら美緒さんも人間にもどれるんじゃないのよ?」
「いえ、私は戻らないわよ、もう元の人間には。人形娘もそうだけど機械娘には三種類あるのよ。一つはあなたがなっている疑似機械娘でこれはお洋服のように着ているだけね。
これから杏奈さんがなるのは制式機械娘、簡単に言えばパワードスーツの強化版よ。長期の宇宙旅行で何か月も着用しても大丈夫なようになっていてね、生体維持機能が優れているわよ。
それで私の場合はねえ内部構造まで改造されている真正機械娘で、機能は最高レベルだけど脱ぐことなんかできないわね。
「どうしてそんな身体にうちの父はあなたを改造したのですか? こんなに綺麗なのに!」
わたしは美緒さんを思わずハグしていた。彼女の身体は暖かく柔らかく長い亜麻色のサラサラとした髪がわたしの手にまとわりついていた。しかし、その美緒さんの身体の感覚は全て仮想現実の中の幻に過ぎなかった・・・
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