ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田

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リースバックされてきたRW55

04・戻ってきたよ!

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 レンタロボ・ニシオカ。それがRW55が所属する会社だった。郊外の山奥にあった物流会社の倉庫を買い取って営業しており、常時1000体の人型ロボットを所有していると宣伝していた。所有する機体には、ポージングするだけのマネキンから最新鋭の高級機体まであったが、多くは古いものや映画などの動画撮影用に製作される新作などであった。その多くを占める中に「中の人」が必要なものがあった。

 人型ロボットを稼働させているAIのうち、人と全く同じ動きをして自律的に動けるように設計された機体は大変高価であった。世界各国の一流企業が多額の資金を投入しているので、それを回収するために特許使用料が高く設定されているので、そんなAIは機体価格の半分を占めるといわれていた。

 そこで、一部のロボリース企業は、人間を機体に入れ込み動力源と頭脳として稼働させるものを貸し出していた。一種のパワードスーツを纏ったものをロボットとしていたのである。そんな、機体の一つがRW55だった。

 RW55は、長期間着用可能な宇宙服を起源とする特殊な生体ラバースーツを着用して、表面をパワーサポート機能が付いた外骨格で覆う事で製造されたものだった。外骨格が頑丈にフィットしているので自力で脱ぐことが出来ず、リース期間が終わるまで人間にもどれなかった。

 「だだいまリースバックされましたRW55です」

 腕に内蔵されたIDをかざし事務所に戻った彼女を待っていたのは受付ロボットだった。ロボットは中枢センターにアクセスして行き先を検索して指示を仰いだ。

 「ご苦労様RW55。D練に向かってください」

 D練は女性型ロボットを管理しているところで、そこでリースされるロボットの製造と解体・・・装着と解除をしていた。D練の入り口は物流倉庫そのものの外観をしていたが、中は機密性の高い装置ばかり置かれていた。そこで、RW55の解体が行われるわけだ。

 「ただいま! それではお願いします!」

 初老の女性技術者に挨拶したRW55であるが、ここまではモノ扱いだった。だから彼女は不愛想であった。

 「じゃあ・・・やるわよ。あんたの任務は終了ね、おやすみRW55!」

 手術台のような装置の上に横たわったRW55の外骨格が刻まれていった。再度、使用するまでは部品の状態に戻されていった。それにより、中の人が人間に戻るわけであった。
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