ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田

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リースバックされてきたRW55

02・内なる想い

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 RW55の正体は人間の少女だった。とある理由で7歳のときから機ぐるみを着てロボットのように振舞う職についていた。以来12年もロボットの姿で仕事をしていた。RW55は外観だけであった。もはや稼働可能な機体が存在しないので、依頼されて振りをしていた。

 そのことはクライアントの極少数しか知らない事で、機ぐるみを装着してから現場に行くので、現場の人間たちは本物のロボットが来たぐらいしか思っていないのが常であった。今どき、人型ロボットなんて珍しくないから。

 RW55を派遣した会社は低価格で希少機体や外観だけカスタマーした機体をリースする会社だった。基本的に最新鋭のロボットは長期間リースもしくは買取であり、その場合は高額の使用料や購入費にメンテナンス料金が必要なので、短期で低価格でそこそこ繁盛していた。その低価格を実現するために中をAIや人工筋肉ではなく、生身の人間にアシストインナースーツを着用させて外骨格で覆っていたのだ。だから条件として八時間の停止があった。

 そのときRW55は想っていた。もう三週間もロボットの姿をしているから早く人間に戻りたいと。三週間の間、メーカーのショウルームで備品扱いされたことにうんざりしていた。さすがに壊れるような事はされないが、女性型ロボットの常としてセクハラやモラハラをされてしまった。スキンシップだといって無暗にボディを触られて不快だった。

 「ところで、あんたって購入できるのかい?」

 そんなことを言われることもあったけど、購入されたら困るとしか言えなかった。まさか、一生ロボットのママでいたくないから。でも、最近あまりにもロボットの姿でいる事が多いので、RW55の中の人は本当は自分は出来た・・・いや生まれた時からロボットだったような錯覚に陥っていた。
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