終末の機械娘と猫たちと(完結)

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
16 / 17
ミャオをよんだモノ

分解処理

しおりを挟む
 ミャオが受け取った情報は恐ろしいモノであった。機体が文字通り分解したからだ。恐ろしく古くいったい何年稼働してきたのか分からない外骨格は吹き飛ばされ、内部構造がさらけ出したのだ。そのとき、はじめて自分の身体の内部を知ることになった。永久炉によって稼働し続けてきた内部を!

 かつて人間だったミャオは恐ろしい記憶が蘇って来た。生きたまま機械に改造されたことを! それも意識あるままで!

 元の姿はほとんど覚えていないが、体中強烈な圧力で押しつぶされる感覚の後、体の中にとても熱いモノが挿入され、急激に自分が自分でなくなる感覚を受けた。しかし、元の自分とは一体何かは思い出せなかった。どうも、その熱いモノを引き抜こうとしているようだ。

 ミャオを構成していた部品は容赦なく分解処理されていった。手足の動作装置、胴体の物質処理装置など、人間でいえば筋肉や内臓に相当する部分が急激に失われていった。機械の部分だけを! そんなことをすれば機械娘の自分の存在が消え、いえ永久に稼働停止するというのを理解できた。それは機械の活動停止、人間でいえば死を意味していた。

 死? それはミャオからすればどうでもいい事なのかもしれないと思った。もはや自分の存在意義といえば海辺に集まる猫たちが飢えないように釣りをするだけだ。それから解放されるはずだ・・・でも気がかりがあった。クリスだ! こんなところに彼女を連れてきたままだ! 彼女だけはどうにかしないといけない! そのときだった、剥き出しになった電脳にあるメッセージが入った。心配無用と。どうやら、それはミャオを分解処理している何らかの意思と同じのようであった。

 心配無用? なんだろうそれは? 機械娘を解体する目的なんて? 新規に作成? でも機械娘の残骸はあっても材料となる人間なんてもう存在しない! 修理? 修理したところでいまさら何の役に立つというのだろうか! 全てを終わらせる? むしろそっちの方がよさそうであった。かつて繁栄し滅び去った人類は消えてしまったのだから! もしかすると、この地球上で最期の人類の也の果てなんて、消えてしまえばいいんだ! そうミャオは思った。

 その時、ミャオのボディに残ったのは、電脳と情報伝達装置の束と永久炉、そして何なのか分からないブラックボックスだった! そのとき、電脳と永久炉との連結が解除されてしまった! ああ、自分はこれで死ねるんだ! そう安堵した。自分の死が本当の人類の死のように思えたのだ。でも、本当の最後はまだやってきていなかった!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボットウーマン改造刑を受けた少女

ジャン・幸田
SF
 AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。  そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。  機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘フェチ作品撮影!

ジャン・幸田
SF
 わたし、とあるプロダクションに所属するモデルだったの。一応十八禁作品出演OKとしていたけど、恥ずかしかったの。  そいで顔出ししないでもいいという撮影があったので行ってみると、そこでわたしはロボットのようになれということだったの。わたしはガイノイドスーツフェチ作品に出演することになった。

メタルノイド・シンドローム

ジャン・幸田
SF
 20××年、はるか彼方より人工物体が飛来し地球を周回する軌道を巡るようになった。  その日を境に恐ろしい災いが世界各地で起きた! 人類が突如として機械化される病”メタルノイド・シンドローム”が蔓延し始めたのだ。    軌道上の人工物体が関与しているのは間違いなかったが、人類を機械化する理由とは? 機械化された人類に未来があるのか?

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

処理中です...