終末の機械娘と猫たちと(完結)

ジャン・幸田

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ニャオのデータバンク

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 キジネコの子猫を可愛がっていた瞬間、閉ざされていたデータバンクの一部の鍵が開いた。それにはミャオも動揺した。このデータはアーカイブのものだろうけど、誰の? サンプル? もしかすると自分?

 自分、という可能性はあるといえた。ミャオは遥か昔、人間の女性の身体を材料として製造された機械生命体だから。なぜ材料にされたのかという事情は封印されていたし、稼働上必要ない事なので全く気にすることは無かった。なのに、今なぜデータの封印が解除されたのか? 唐突過ぎた。

 そのデータの中の映像が小さな少女が体験したもののようだった。小さな手をしていて可愛らしい洋服を着ているようだった。そして少女は子猫の相手をしていた。目の前には母猫と思われる猫が他の子猫の相手をしていた。どうやら少女もしくは家族の飼い猫のようだった。その猫の首には赤い首輪がまかれていて子猫と同じキジネコだった。

 少女は無邪気に子猫と戯れていた。まるで子猫の姉弟のように。その時、香しい花の匂いを運んでくる心地よい風が吹いてきた。少女が顔をあげると陽だまりの心地の良い陽光を感じた。そして周りは種を蒔こうとしているのか、耕さられている最中のようだった。そして遠くから ”レイナご飯よ” という女の声が聞こえてきた。その声の主は少女の母で、少女の名前はレイナというようだった。

 その時、ミャオの機械仕掛けの心が氷解しはじめたような気がした。理性はあるといっても、それは機械としてであり人間のように喜怒哀楽が絡んだものではなかった。それにしても機械生命体の中に少女の記憶がある理由がよく分からなかった。
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