【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
17 / 23
ピンクに染まった彼女

ステージの後で・・・お別れ

しおりを挟む
 紗代が抱きついたからか、眞子が触ったからかは分からないが、とにかく紗代はその場にうずくまり皮膚の色が変化していった。最初は黒ずんでいたけどやがて七色に変化してついに緑色になってしまった!
 顔の凹凸は消え、髪の毛も消えさってしまった。そう眞子と同じゼンタイ姿になってしまったのだ!

 「うーん、この姿って気持ちいいじゃないのよ」
 そういって、紗代は制服を脱ぎ始めた。それを周囲にいた大人が当然止めた! 紗代の肥満体を覆うゼンタイはまさにグリーンモンスターであった・・・

 「これって・・・女の子には感染するんじゃないのかな・・・」

 眞子の母親はつぶやいたけど、そういったのは眞子を触っても何ら異常が起きなかったというのに紗代に限ってこんな変化が起きたからだ。

 そうこうしているうちに、二人の出演時間が近づいているのに気が付いた! 本当は中止してどこか病院にでも・・・っていうか、これって病気なのか定かではないが、どこかに行かないといけない状況だったが。

 「早うして! お二人さんも先生も! 悠太も早う着替えて!」

 グリーンモンスターと化した紗代にせかされるまま悠太は更衣室に押し込められた。そういえば、紗代にさわられても悠太には変化は起きなかったので、ゼンタイ姿に普通に着替えた彼であった。

 ステージのショーは問題なく進行した。というよりも、他にも似たいようなダンスを披露したクラスと比べると反応はイマイチだった。やっぱり二人しか出ないステージは寂しいものだった。しかし、問題はそのあとだった。眞子のゼンタイ姿が気になった男女がクラスの控室に集まっていたのだ。野郎はともかく問題は女子だった。もし眞子に触れたら紗代と同じになってしまう!

 それで急いで車に眞子を乗せ学校を後にしようとした。しかし運が悪いことに邪魔が入った。校門にいた生徒指導の中林先生だ! さぼるために脱出すると思われたのだ。しかも事情を知らないので眞子と紗代の二人はガミガミ怒られ始めた。しかも連絡がいっていなかったので事情をしらなかったから、長引きそうだった。それで、担任の元に戻って中林先生を説得するように頼みに行ったが、その少しの時間に大変な事になっていた。

 通りかかった女という女がなぜか二人のゼンタイ姿を見て触っていったのだ! その結果は・・・

 町中の女という女が影人間のような姿へと変貌したのだ! 当然、パニックになった。いったいこれからなにがどうなるというのだろうか?

 女性の身体をゼンタイのようなものに覆われる原因は地球外から来た未知の存在によるものであるとされた。なお、そんな姿になっても一週間ほどすれば元の姿に自然と戻ることが判明し騒動は収束していったが、それが分かるまでは世界中が大混乱になった。しかも未知の存在の目的は分からなかったので謎は残った。

 ともかく、問題なのは眞子がどこいったのか分からないってことだった。あの日、数多くのゼンタイ少女が大量発生したので、個人の認識などが出来なくなっているうちに見失ってしまったのだ。騒動が起きて一ヶ月が経過しても眞子の行方は不明のままだった。

 学校も落ち着いだが、前項の女子生徒の大半がゼンタイ少女になったためか、なぜかゼンタイがブームになってしまった。どうも家で楽しんでいるようだったが、そんなのは関係なかった。眞子がいないからだ。彼女はどこに行ってしまったんだろうか?

 そう思っていたある日の放課後、講堂のステージに行ってみた。あの日以来ステージは封鎖状態だった。ゼンタイ化少女が大挙してステージ上で狂喜乱舞の表現が当てはまる様な大騒ぎをしたためだ。その場で眞子を見失ったからだ。ここにいれば眞子に会えそうな気がしたのだ。

 ステージに立っていると目の前にピンクの人の形をした何かが歩いてきた。

 「君は・・・眞子?」

 そう問いかけたが、その人の形は何一つ言わなかった。すると、いきなり抱きついてきた。それは冷たかった! まるで幽霊でも抱かれたかのように!

 「つ、冷たいぞ! どうしてだ?」

 そういうと、そいつは何かを書きたいというような動作をした。それで持っていたノートとシャーペンを渡した。するとノートにこう筆談した。

 ”あたいは人間でなくなったの! いろんな人をこの姿にしたけど、やっぱり選ばれたようなのよ”

 「それって、どういうことだ!」

 ”この姿に適合したという事よ! この惑星から標本として連れ去るんだって”

 「それって、まさか?」

 ”みんなをゼンタイ姿にした奴よ! なんでも超光速航法に地球上の生物は耐えられないので、特殊加工しても大丈夫なのを探していたそうよ。だから私はこれから連れ去られるのよ。だからこうしてアイサツに来たわけ”

 「そんなのダメだ! 嫌だとお願いしろ!」

 ”だめよ。もうすぐ消えるから。私の事は忘れて! もし運がよかったらまた会えるわ。その日ははるか未来かもしれないけど。バイバイ!”

 「まつんだ眞子!」

 そういった瞬間、眞子らしきゼンタイ少女の姿は消えていった。結局あれ以来眞子をみることはなかった。もし彼女の言葉が正しければ、そのうち戻ってくれるかもしれなかったが、当てのない事だった。おそらく待っても戻ってくることはないかもしれなかった。

 そのあと、同じような女性失踪事件は世界各地で報告されたが、いづれも地球外文明社会に拉致されるという言葉を残していた。だから、もう戻ってこないかもしれなかった。

 あれ以来、ピンクのゼンタイを見ると眞子を思い出した。あの日ステージで感じた彼女の手の温もりと一緒に。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

歩きスマホ

宮田 歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

[連載中・短編集]ホラー短編集。〜こっくりさんー女子中学生のオカルト体験ー他

コマメコノカ・21時更新
ホラー
ホラー短編集です。

引きこもりアラフォーはポツンと一軒家でイモつくりをはじめます

ジャン・幸田
キャラ文芸
 アラフォー世代で引きこもりの村瀬は住まいを奪われホームレスになるところを救われた! それは山奥のポツンと一軒家で生活するという依頼だった。条件はヘンテコなイモの栽培!  そのイモ自体はなんの変哲もないものだったが、なぜか村瀬の一軒家には物の怪たちが集まるようになった! 一体全体なんなんだ?

焔鬼

はじめアキラ
ホラー
「昨日の夜、行方不明になった子もそうだったのかなあ。どっかの防空壕とか、そういう場所に入って出られなくなった、とかだったら笑えないよね」  焔ヶ町。そこは、焔鬼様、という鬼の神様が守るとされる小さな町だった。  ある夏、その町で一人の女子中学生・古鷹未散が失踪する。夜中にこっそり家の窓から抜け出していなくなったというのだ。  家出か何かだろう、と同じ中学校に通っていた衣笠梨華は、友人の五十鈴マイとともにタカをくくっていた。たとえ、その失踪の状況に不自然な点が数多くあったとしても。  しかし、その古鷹未散は、黒焦げの死体となって発見されることになる。  幼い頃から焔ヶ町に住んでいるマイは、「焔鬼様の仕業では」と怯え始めた。友人を安心させるために、梨華は独自に調査を開始するが。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

逢魔ヶ刻の迷い子5 ~鬼哭の古寺—封印の綻び

naomikoryo
ホラー
【◆2025/3/1 連載スタート◆毎日お昼12時更新予定◆】 「封印は、まだ完全ではない——」 高校2年生になった陽介たち6人。 京都での修学旅行中、彼らは再び“あの寺”へと足を踏み入れることになる。 鬼の封印を終えたはずの鬼哭の古寺——だが、そこで彼らを待っていたのは、新たな異変だった。 鬼の消滅とともに生まれた“封印の綻び”。 それは、長きに渡る怨念と、かつて封印された者たちの影を呼び覚ましてしまった。 彼らは本当に封印を完成させたのか? それとも、新たな脅威を解き放ってしまったのか? 再び試される彼らの絆。 消えた少年・白銀蒼真が残した“最後の願い”とは? そして、6人が最後に選ぶ道とは——? 過去と未来、現世と異界が交錯する青春ホラー・ミステリー。 『鬼哭の古寺—封印の綻び』——それは、終わりなき封印の物語。

触穢の代償――デッフェコレクション2――

せとかぜ染鞠
ホラー
「デッフェでお逢いしましょう」は婚活に励む人々を支援する縁結びの会社だ。会社の提供する出会い系caféでのbuffet形式のパーティーが良縁成就の苗床となることを願い,出会いの「デ」,カフェの「フェ」あるいはビュッフェの「ッフェ」を結合させて「デッフェ」を活動拠点の名称とした。そのデッフェにおいて恒例のパーティーが開催され,会員でもあるマジシャンの錦織光太祐(にしこりこうだゆう)がサプライズショーを行った。ギロチンマジックのさなか,アシスタントの娘は頸部に断頭台の大刃を落とされた直後に満面の笑みを振りまいたが,俄に身の毛も弥立つような嗄れた声を発し,八つ裂きにされてしまった……

処理中です...