【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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ピンクに染まった彼女

ピンクに染まった眞子

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全身タイツはスパンテックスという化学繊維で出来ているので、手触りはすべすべしているし、身体にフィットする素材なので張り付いたような感じであった。しかも全身タイツの下はサポーター以外身に着けないので、裸でいるような感じがしているものだった。

 この時、俺が触った眞子の身体は異様だった。彼女は何かピンクの皮のようなものに覆われていたのだ。しかも縫い目も見えないしファスナーもなかった。そうどうやってきたのか皆目見当もつかなかった。

 「眞子、怒らないでほしいが、それってどうやってきたのか? まさか変身した・・・というわけではないのか?」

 俺がそう思ったのは、眞子の今の姿はただ事でじゃないのではないかと思ったからだ。彼女の今の姿にはシワなど一切なかったからだ。もしかするとこれって?

 「そうよ変身してしまったのよ、こんな変態な姿に。昨日帰り道でピンクのコインのようなものを拾ったのよ。普段だったらそんなものなんか気にも留めないのにね。それでコインに操られるかのように一緒に入浴してから寝たら・・・朝起きたらこんな姿になってしまったのよ!
 それから、わたしは気でも狂いそうになって脱ごうとしたけど…脱げないのよ。この姿が私の今の姿なのよ! どうなるのか本当にこまっているのよ!」

 眞子は、いままで聞いたことのないような声で戸惑っている様子だった。しかし、疑問があった。眞子はその姿で見えているのだろうか、周りの光景を?

眞子は本当に困っていた。奇妙なコインを拾ってきてお風呂に入ってから寝ていたらこんな変な身体になっていたから。その姿は今日の文化祭で着るはずだったピンクの全身タイツそのものだけど、脱げそうになかった。もしかすると、自分の皮膚自体がそのように変化したのかもしれなかった。

 「それで見えているのか眞子?」悠太にそう聞かれたけど、その答えは見えているだった。しかし見えているけどそれは人間の目ではなく、状況がピンクの皮膚を通して伝わるというのが正しかった。そう、感覚が進化しているかのようだった。

 「ええ、見えているわよ。普段よりもずっと! でも、わたし元の姿に戻れるのかな?」

 眞子は戸惑っていたが、そんな表情は周囲の者には誰にも分からなかった。ピンク一色に染まっている人型にしか見えなかったからだ。その人型に飛びついた者がいた、紗代だ。

 「蘆澤さんたらこんな素敵なお肌になったのよね? あたいもなりたいなあ。まるで抱き枕みたい」

 「宮村さんたら、いくら女同士でもそんなことをしたらシャレにならないわよ! やめてちょうだいよ!」

 眞子がそういって紗代に反対に抱きついたとき恐ろしいことが起き始めた。紗代の手足の色が変わり始め苦しみ始めたのだ
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