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ピンクに染まった彼女

いったい全体どうなっているのかわからないのよ!

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 粟井先生に呼ばれた二人はなぜか文化祭で賑わう校舎から遠く離れた運動部部室長屋に連れていかれた。ここは文化祭では全く使う予定ではなかったので、誰もいなかった。

 二人はそんな部室の一つ「新体操部」に招き入れられた。二人とも在校中絶対に入ることもないようなところに連れてこられたのだろうかと不審に思っていたところ、「蘆澤バレエ教室」を主宰している眞子の母が申し訳なさそうに座って待っていた。

 「下原くん、宮村さん。うちの眞子が迷惑をかけて申し訳ございませんでした」
 眞子を大人にしたような美人は少し戸惑いを湛えた表情をしていた。いったい何が訳の分からない事でも起きたのは確かのようだった。

 「それよりも、眞子、いや眞子さんはどうなっているんですか?」
 悠太は立ち上がってしまった。一方の紗代はお尻が重かったのか少し浮かしたところでやめてしまった。

 「実はその・・・まあ見ていただいた方がいいですわ。眞子入りなさい!」

 そういって更衣室から入ってきたのは、初夏だというのに冬用のオーバーを羽織ってスキー場にでもこれから行くのかと見間違うような姿をした女らしいのが入ってきた。

 「眞子、お前そんなに寒いのか? 病院に行った方が良いんじゃないかよ!」
 悠太は本当に病気かなんかをしていてさむがっているのかと思った。すると元気でいつもの勝ち気な眞子の声がオーバーの下から聞こえてきた。

 「病院に行けたら苦労していないってば! もし行ったらどこかに連れていかれてしまいそうなんだよわたしは!」

 そういって眞子は羽織っていた服を全て脱ぎ捨ててしまったら、そこにはつま先から頭の先までピンクの全身タイツで覆われているようだった。それは今日の発表会で予定していたピンクの全身タイツだった。

 「それって今日の衣装だよねえ? 別に家から着てこなくたっていいだろうに、どういうことなんだよそれは?」
 「そうよ、いくらなり切るといってもわざわざ着ていく事ないわよ! そんなことをしなくてもいいでしょうに、眞子!」

 二人は一体なんなんだと思っていると眞子は変な事をいいはじめた。

 「いま着ているのは全身タイツじゃないのよ! お風呂に入っていて気を失ったらこんな姿になっていたのよ! いくら全身タイツが第二の皮膚というたとえがあるからといっても、本当の皮膚になっているのよ! とにかく私の背中を見てちょうだい!」

 そういって眞子は背中を見せた。すると着脱するための開口部が存在せず、どこから来たかわからなかった。しかも少しもシワもなく肌にぴったりと張り付いているようだった。

 「お前、それってタイツ地が張り付いているというわけなのか?」

 「ええ、そうよ! いったい全体どうなっているのかわからないのよ!」
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