【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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ピンクに染まった彼女

文化祭前夜

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「どうしてあんたと一緒にモジモジ君にならなくちゃいけないのよ」と罵倒されていた。高校の文化祭では舞台のクラス発表で5分間のショーをしなければならなかった。
 ショーはコントでも演劇でも手品でもなんでもよかったが、3年D組は何故か悠太と眞緒の二人がアクロバットのようなダンスをする事になった。しかも顔も見えない全身タイツ姿で。しかも悠太はブルーの眞子はピンクのものである。クラスのみんなは、この幼馴染をカップルとして成立させたい魂胆なのは明らかである。

 「あんたとわたしが幼いころから私ん家のダンス教室でレッスンしたといっても、一緒にダンスしたことはないんだから。大体、あの衣装はなんなのよ。
 全身タイツで顔が見えないんだなんて。ウィキペディアにも『ゼンタイフェチ』なんて項目があったけど、私はそんな事で感じるフフェチじゃないわ。そんなのでフェチになるならダンスの衣装だって同じじゃないの。どうせ、このような変な事を考えるのは直美か紗代だろうけど。あんたが頼んだわけではないのね。でもしかたないわ、踊ってあげるわ」といった。

 このようなことになったのは、クラス発表会では最初手品ショーを別の同級生がワンマンショーをするはずで準備をしていたが、文化祭の前々日に登校途中に交通事故にあったためだった。幸い命に別状はなかったが利き腕を骨折してしまい手品が出来なくなった。そのため他のショーをしなければならなかったが、クラスメイトでこれという特技を持っているものが誰もいなくて、急遽代わりに出来るショーといえばダンスをしようということになった。

 しかも体育の授業でやっているようなダンスをしたのでは茶を濁すだけなので、奇抜な事をしようということになった。すなわち二人にダンスをさせようというわけである。

 そうこうしているうちに話は纏まったが、やらすのがダンスは学年でトップクラスなのに仲が悪い(といっても、いつも仲良く喧嘩しているようなものだけど)二人を使ったうえ、一部から「腐女子」と噂されている紗代が演出したのが「ゼンタイ男女によるダンス」だった。本当なら頭の固い教師なら拒絶させそうなものだけど、生憎犯罪行為にならなければ生徒の自主性を尊重するという自由な校風のため、案が採用されてしまった。もっともあと2日で出来ることは限られるけど。
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