【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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歳の差夫婦の謎

扶養者などいないよ

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 お盆前のある日。澤村さんが出勤してこなかった。その日はたまたま急な業務のない日だったkど、休んだことなどない人だったので意外だった。午前10時を過ぎても連絡がないので、うちの部署はちょっとした騒ぎになった。

  「澤村さんの自宅も携帯もつながりません、誰か様子を見てきてくれませんか?」

  それに私は志願したが、その前に総務課によることにした。澤村さんが出勤していない旨の報告とともに。玲子さんの携帯番号を総務課が知っているかもしれないと思ったからだ。事情を説明したところ総務課のお局と陰口をたたかれている50歳代の女性職員は怪訝そうな表情をした。澤村さんに家族はいないはずだと。

  「あのねえ、澤村さんにご家族はいないのよ。会社には扶養控除の申請が出されたこともないし社会保障の申請もない。ましては娘さんもいないよ」

  「そんなはずはないですよ。この前澤村さんの部屋に招かれたときに奥さんがいましたよ」

  「その人は内縁の妻かなんかじゃないのかね? それにしてもおかしいわ・・・あの人は今頃珍しい操を立てた人なのに」

  「えっ?」

  わたしは絶句した。意味が分からなかったからだ。その顔を見たお局事務員が説明し始めた。

 「澤村さんには若い時に奥さんと娘さんがいたのよ。でも30年前に亡くなったのよ、事故で・・・田口さん、その奥さんだという人の名前玲子さんといっていなかったの?」

 「はい、そうですが・・・」

 そういったとき、お局事務員の顔色が蒼白になってしまった。

 「わかったわ。じゃあ私もついていくわ、なにかとんでもないことがおきているのかもしれないから!」

 お局事務員は古株で迫力を使い、私と一緒に澤村さんのアパートに行けるように段取りをしてしまった。そして私が運転する自動車に強引に乗り込んできた。
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