【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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歳の差夫婦の謎

パーティー

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 それから三人で楽しい時を過ごした。澤村さんはこのアパートが出来たときからずっと暮らしている古株で、これからも奥さんと娘と一緒に住み続けたいといっていた。でも、気になることを言っていた。

  「田口さん。もうすぐ私も還暦なんだ。うちの会社の定年は65歳だけど玲子のためにどこかに引っ越そうと思うんだよ。妻の実家がある福岡に。だからもしかすると近いうちに会社を辞めるかもしれないよ」

  「そうなんですか。そしたら引っ越されたら一度訪ねてもいいですか? わたしの生まれ故郷は佐賀でしてもう十五年も帰っていないのですが、そのついでというわけでもないのですけどいいですか?」

  「それはいいよ。でも大したところじゃないと思うよ。それでもよかったら来てもらえないかな。今日よりも豪勢な料理を玲子に作ってもらうから」

  その日はたらふく食べてたらふく飲んで楽しい時を過ごす事ができた。玲子さんの誕生日だったので澤村さんと年甲斐もなくラブラブとした様子を見せられてうらやましく思ってしまったが、とにかく彼女は可愛らしいとおもった。わたしも、彼女のような妻がいたら人生は大きく変わっていたと思わずにはいられなかった。

  玲子さんは明るい人で割と下ネタを言うし女芸人のように面白い話をしていたけど、なぜか死人のように青い顔をしているのが気になっていた。わたしはそれは室内の照明のせいだと思い過ごした。

 また気になったのはテレビのニュース番組であの航空機事故から三十年という事を言い出した時、なぜか二人そろってリモコンでチャンネルを変えようとしていた事だ。しかも、その時の二人の顔は温和なものではなく恐怖を感じるものだった。

 パーティーもたけなわになったとき、玲子さんが今ではあまり見なくなったフィルム式のカメラを持ち出してきて、セルフタイマーで記念写真を撮った。そして帰宅する時間になって玲子さんからお土産をもらった、それは博多人形だった。
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