【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田

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歳の差夫婦の謎

若い奥さん

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 澤村さんは私と同じ50歳代で、同じ部署の同僚だった。私の方が後から転職してきたので、長年勤めている先輩の彼が上司だった。でも、なにかと話が合ったので、この年頃では数少なくなった親友という感覚だった。この歳まで独身だと孤独感が募っていたのでありがたい関係だった。

  澤村さんがいうには、今日は妻の誕生日だからパーティーにこないかということだった。なんでも娘さんは林間学校にいっているので不在で、二人でパーティーをするのも侘しいので来てくれとのことだった。

 私は一度も結婚をせずに、この歳になったうえに、親戚とも疎遠になっていたので、このように家庭に上がるのは滅多になかった。
 澤村さんに案内され部屋に入るとエプロン姿の女性が料理の準備をしていた。歳の頃は三十前でさほど美人ではないけど笑顔が可愛らしい女だった。

  「田口さん、いつも主人から聞いています。あたしが家内の玲子です、今日は私のために来てくれてありがとうございます」

  玲子となのる澤村さんの奥さんはどこか懐かしく感じる姿をしていた。なんだろうかと考えてみると、こころなしか松田聖子がむかししていたような古めかしい髪型に似ていた。
 いまリバイバルで流行っているのだろうか? それに洋服も今では見なくなった昭和のファッションのようにみえた。

  「ごめんね田口さん。うちの家内は昭和ファッションにはまっていてね。だから家ではいつでもそんな恰好なんだよ」

  なるほど、いま昭和が懐かしいというわけなんだと感心しながら思っていたけど、澤村さんは結構年下の奥さんと一緒になったんだと思った。
 それにしても、玲子さんって生まれたのは多分昭和から平成に代わるぐらいの事だろうから、昭和なんて時代知らないのになあとも思っていた。

 澤村さん夫婦に通されたダイニングのテーブルには、彼女が腕を振るったに違いない数々の料理が並んでいた。どうも彼女は料理が趣味のようだった。
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