【完結】切手を集めていて悪いですか? 

ジャン・幸田

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(1)駄菓子屋の景品

駄菓子屋の景品の切手(下)

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 結局のところ僕はなかなか引くことが出来なかった。実は福引でも回すのを躊躇するぐらいの小心者で優柔不断だった。だから、その後に人生も・・・という話ではない。おばちゃんとの時間を楽しんでいても向こうは暇な商売でもやることは他にもあるという事で引かないといけなくなった。

 「そろそろ引きなさいよ!」

 「分かってる!」

 それで一枚引いてみた。すると金魚の写真が図案になった大きな切手が出てきた。その切手は大きかったがアルファベットとグニュグニュした文字が書いてあった。

 「あばちゃん、この切手どこの国のものなの?」

 「知らんわよ! おばちゃんに聞かれても困る。だって読めんのよわしも」

 このおばちゃんは英語が出来なかったようで”横文字など読めん”といって教えてもらう事も出来なかった。それに当時は小学校一年だったので漢字も満足に読めないので自分でも読むことが出来なかった。だから結局のところ分からなかった。

 それから後も駄菓子屋に行っては切手を買うという事をしていたけど、時々というかしょっちゅう別のモノを買っていた。駄菓子や模型飛行機などだ。模型飛行機(薄くて軽い発泡スチロールみたいな小さな板を合わせただけで、先に小さなプロペラがついていた)などは、夢中になってしたし、小さな爆竹で鉄砲の音がする玩具などにも夢中になったが、コンスタントに買っていたのはやはり切手だった。

 でも切手に対して父親は嫌な顔をしていた。なぜなら整理するのが下手だったからだ。折角買って来た駄菓子屋の景品の切手を勉強机の引き出しに入れているだけだから、折れ曲がったりシミが入ったりと保存状態は最悪だった。特に外国切手は使用済みのはずなのに裏に糊があったりするもんだから、梅雨時などは張り付いてしまった事もあった。そんな時は洗面器に水を入れて剝がしたりしたものだった。

 駄菓子屋の切手であったが、ある日見慣れないものが登場した。それは切手の中身が見えるようになっていて、短冊状に大きな台紙にぶらさげていたのだ。

 「おばちゃん、これなあに?」

 「業者さんが持ってきたんだよ。このくじを引くとその番号の切手がもらえるんだよ。やってみない? 一回二十億円よ!」

 いつもの十億円ではなく二十億円と倍になったが、とりあえずサイダー飴を買うのを諦めて十円玉二枚を渡した。そして引いてみると七番の文字があった。その七番をみると大きな車の切手があった。ミニカーにも興味があったので嬉しかったが、それにしてもその国はどこなんだろうか知りたくなった。
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