【完結】切手を集めていて悪いですか? 

ジャン・幸田

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(1)駄菓子屋の景品

駄菓子屋の景品の切手(上)

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 あれは昭和といわれていた時代のこと。西暦でいえば1980年代の初めであった。そのころ流行っていたといえばスポーツカーブームが落ち着いてガンダムのプラモデルがブームだった。だから同級生はプラモデルつくりに夢中だった。いまから思えば塗装に使ったのはシンナーが入っていたから危なかったよなあ。

 そんなブームに関係なくハマっていたのは駄菓子屋の景品だった。それもなぜか切手だった! なんでかというとお金がない家だったので新しい記念切手を買えるような小遣いはなく、かといって家に来る郵便物に貼っている切手は普通切手ばっかりだった。しかも当時は60円の釣り鐘のデザインで緑の枠に白地の真ん中に釣り鐘があるという飽きてしまうものだったので、集めても面白くないものだった。

 だから、駄菓子屋の景品の切手が欲しかったわけだ。しかも一枚十円なので買おうと思えばチロルチョコと同じように買えた。そういえば「昭和100年」とデザインされた五円玉を模したチョコのほうは五円だったが、そんなのは脱線話だ!

 それはそうと、通っていた駄菓子屋の女主人は今から思えば変わった人だった。歳は60ぐらいだったけど最近(2017年)から見るとかなり老けていたように思う。白い割烹着のようなエプロンをして地味な服を着ていた。

 そのおばちゃんは大正生まれで戦争中にこいつに銃撃されたんだと、駄菓子屋にあるアメリカ軍の戦闘機の箱にケチをつけていた。なんでもグラマンとかという奴が飛んできて機関砲で撃ったという事だったけど子供の時には何の話なんかわからなかった。わからないけど憎たらしいといって話をしていた。

 「はい、十億円ちょうだい!」

 そういわれ僕は十円玉を渡すと景品を引かせてくれた。その景品はいろんな切手の写真がある表紙の中に紫の袋の束が綴られていた。その束の中から引っ張り出すのであるが、おばちゃんにいつも睨まれていた。理由はというと一枚しか引けないのに黙って二枚引くのがいるからということだった。

 「あんまりみないでよ!」

 「わしだって仕事だからさ、勘弁しろ。それよりも同じものを引いてがっかりするんじゃねえぞ!」

 そういわれるのは、紫の袋の中に同じ図案の切手がよくあったからだ。そんな同じ図案を引いて泣いたことがあったから僕はおばちゃんの要注意人物にされていたのだ。

 「わかった。でもおばちゃんは切手あつめないの?」

 「わしはあんまり興味ない! だけどあんたみたいな子供が喜ぶから置いているんだよ、だから早くお引き!」

 そういわれたが、優柔不断の僕はしばし考え込んでいた。理由などなかったけど、その時間を楽しんでいたのだけは間違いなかった。おばちゃんとの時間を!
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