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三・愛莉と一緒に!

愛莉の内臓のため息(3)

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 内臓の彼女はそれら人形に人を変えてしまうアイテムを目の前にしてため息をしていた。それらのアイテムの所有者はほんの半年前までは自分ではなかった。だから、彼女自身はメンテナンスをするのが精いっぱいで未完成のマスクを完成させる能力はなかった。出来る事といえば、前の所有者のかわりに内臓になることだけであった。

 さっきまで被っていた愛莉のマスクの中をアルコールで消毒し、ヘアスプレーで乱れたウィッグを直してあげた。今できる事といえば、それぐらいだった。この離れには着ぐるみマスク制作のための道具や未使用の材料であふれていたが、それはの大半は手を付けていなかった。まだ前の所有者の情念が籠っているように感じられたし、それらを使いこなせる能力がないからだ。

 そんなマスクの中から、現在なんとか完成させようとしているマスクがあった。それは愛莉の対になる愛奈のマスクだった。設定上は双子の姉妹なのでほぼ同系だが、瞳の色が微妙に違っていた。そのマスクを愛莉と同じ状態にしようとしていたのだ。

 「ふー、はあ」

 内臓の彼女はため息をついていた。さっきまで自分が人形になっていた時の事を思い出していたのだ。あんなふうに男に対し大胆になるなんて、自分はおかしいと思ったからだ。あのときの自分は人形の愛莉、彼にはそれ以外の何者でもなかったと。
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