もし俺の嫁がリアルにやってきたら

二・愛莉と愛華！

愛莉がしゃべった（2）

　俺が被るほうが元祖「愛莉」だった。目の前にほぼ同じアニメマスクを被る女（たぶん）が愛莉を名乗っているから今は愛華に変更されてしまった。目の前の愛莉と愛華のマスクは同じ造形であったが、唯一違っている点といえば顎に黒子があることだ。その位置に黒子を付けていた女は俺が高校の時好きだった妹尾愛莉と一緒だった。なんて偶然それとも故意？　

　愛莉とは話をする程度の仲だったが、ただの同級生で友達ともましては恋人でもなかった。なぜ、そこに黒子があるのだ？　そんなふうにマジマジと見ていると愛梨がこんなことを書いた。

　”あんまり見つめないで早くかぶって♡”

　「わかったよ。まって」

　自分の声が女声になっているのが気持ち悪かったが、愛華の声としてはふさわしいと思った。俺はマスクを被り始めた。

　着ぐるみマスクの構造はいろんなものがあるが、俺が持っているのはフルフェイスのヘルメットみたいなものだった。ウィッグに覆われた頭部は前後に別れていて、ますマスクの下を顎の位置に合わせて顔を覆い、後頭部を閉めた。すると目の前はマスクの瞳の部分の網目になった部分から外の様子を確認できた。その時だった！

　「愛華、かわいいわね♡」

　その声は愛莉だった！　愛莉がしゃべった！