ゼンタイシンドロームな人々!

ジャン・幸田

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壱:初春の別れに際しふたりは

1.お泊り

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 ある初春の夜、海が見えるマンションの一室に二人の少女がいた。二人は楽しそうに和気藹々(わきあいあい)としていた。今日はもう一方の少女がお泊りに来ていたが、両親は不在だったので何をするのも自由な状況だった。

 一人ずつ入浴してきたあと二人はパジャマに着替えることなく、下着姿のままだった。二人の手には布の塊のようなものを持っていた。そして広げるとそれは人の形になった。彼女らはそれに着替えるつもりだ。

 「競技用のレオタードは体育の授業で着た事あるけど、やはり全身になると迫力は違うわね。なんか全身レオタードのような気がしてきたわ」

 彼女が持っていたのは藍色地にアヤメなどの初夏の花柄をしていて浴衣のような絵柄だった。でもレオタード生地にプリントされたそれは身体を包み込むようになっていた。全身に!

 「ほんとうに綺麗な柄だね! ネットで着ている人の画像を見たことあるけど、私も同じようになるのかな?」

 「先輩はその人・・・姉よりもスタイルいいからもっと映えますよ。あっ、姉に内緒ね、いまいった事」

 彼女の名はレオナ。ゼンタイ(全身タイツ)フェチの姉から無断借用してきたのだ。憧れの先輩との夢を叶えるために。

 「わたし、前々からこういった全身にぴったりとフィット衣装を着るのが夢だったのよ。でも高校生なんだから敷居も高いし・・・あなたのお姉さんの所にいきなり行けなかったし」

 レオナの先輩の名はアヤカ、二人は百合の関係だった。でもアヤカは進学が決まったのでこの町を離れる事になった。だから・・・関係は終わりにしようという事になったが、最後にしたかったことをしようという話になった。それがゼンタイで百合行為をすることだった。

 「そうですね。あまり大きく言えない事ですから。それに姉は・・・ド変態ですから。それにしても先輩とは本当にとお別れですね。そしたらお会いする事もなかなか出来なくなるし・・・」

 「だからこそ、あなたを呼んだのよ! でも、このことは二人の秘密ね。こんなことをしたとバレたら他の人からのやっかみが来て、あなたも大変だろうからね」

 「それもそうね。でも私も緊張するなあ。こうして先輩と一緒にゼンタイを着るなんて夢みたいだし」

 「そんなに緊張しないでね、聞くところではあなたゼンタイを着ていると性格が変わるんだそうね。なんか積極的になるということだけど?」

 「は、はずかしい! でも何でだろうね、ゼンタイを着るとねんか別の私が目覚めるというか・・・覆われると何かが解放されるということかな?」

 これから二人だけのゼンタイスリスリお泊まり会が始ろうとしていた。二人とも一度はしたかったことであった。互いに思っている好意を確かめるために・・・
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