【中編小説集】婚約破棄して”ざまあ！”になった人々の話

結婚式をぼっちで挙げた花嫁は探偵をする（旧題:結婚式で勘違いしていたと破棄されたあとに)

【10】白夜（１）

　世界で最北の地の夏は一日中日が沈まない白夜だ。だから捜索活動も昼夜を問わず行っていてもずっと明るいままであるから、はかどりそうなものであるが、実際は難航していた。最も重要な操舵室と客室部分が発見できなかった。

　最初に地上に激突した地点と最終的に墜落したバルーン部の間のどこかにあるはずだが、見つからないのだ。そのため氷が溶けて海面が出ていた部分に墜落したため発見できないかもしれないと、砕氷船による海中捜索も始まっていたが、範囲が広範囲すぎてわからなかった。一方、捜索本部はどこかの小島に着陸した可能性もあるとみていた。

　たとえば、谷のような地形のところに一旦着陸して、「人質」と積荷を強奪してから、何らかの方法で近くにある氷河を爆破し上空から見えなくしたのではないかというものだ。実は捜索範囲には無人の島がたくさんあって、存在は知られていても詳細な探査が行われた事もないところがあったからだ。もし、巧妙に隠されていたら航空機による捜索では見つけ出せないかもしれなかった。

　そんな説明を他の乗員乗客の家族たちや報道関係者と一緒に聞いたローズマリーとリチャードだった。現地時間の午後11時過ぎでも周囲は明るいままであった。不安と絶望が渦巻いている説明会場でハインリッヒ捜査官は睨みを利かせていた。どうやら彼は「事件説」をとるようになっていた。

　「ご家族の皆様。我々国際捜索隊は考えられる範囲をくまなく見ております」

　そういって地図を指示していた。だがローズマリーはある可能性を思い付いていた。リチャードにそっと耳打ちをした。

　「まさかと思うけど、最初に激突する前にどこかに着陸しているかもしれないわね。そこで降ろしているかも」

　それは、ただの思い付きだった。