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結婚式をぼっちで挙げた花嫁は探偵をする(旧題:結婚式で勘違いしていたと破棄されたあとに)
【5】新聞報道によれば空の乙女号の足取り
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ローズマリーのぼっちの結婚式の事など即座に忘却に追い込んだのが「空の乙女号ハイジャック墜落事件」であった。どこの国でもそうであるが、大金持ちが被害に遭うような犯罪に一種の爽快感をかんじるので、それを求める大衆に新聞などはこぞって報道するものだ。ローズマリーはリチャードが持ってきた新聞を読むことにした。それによれば事件の顛末は以下のようになっていた。
万国旅客飛行船株式会社が運航する「空の乙女号」がハーヴェイドルフの空港を出発したのは二週間前だった。その日から三週間の予定で世界周回コースの一つ「北極圏横断航路」に向かった。予定では北の諸国の観光地に寄港しながらオプショナルツアーを実施し、北極圏の広大な森林地帯やツンドラを上空通過をしたのち、北極近くにある世界最北の島に寄港し、北極探検をしてから北極圏を通過し、ハーヴェイドルフの北極からみて反対側にある国々に寄港したのち、大国のトリニティ王国の首都で終わるはずだった。そこでハーヴェイドルフからの参加者がいれば、航空定期便で帰国する予定だった。
この日の乗客は33人で、それに対し乗員は80人と手厚いサービスが約束されていたはずであった。ツアーは順調に進み、世界最北の島、アムルノームを出発したのちハイジャックされた。
深夜、静かな夜にするため北極点近くで停泊していた時に操舵室がハイジャックされた。犯人は飛行船を支配すると何処かへと移動させた。緊急信号を受信した北極駐留の部隊が捜索していたところ、「空の乙女号」はアムルノームから800Km 離れた島の山岳地帯で飛行船のゴンドラの残骸を発見した。
残骸には生存者がいたが、後部の接客スタッフが大半で、乗客の大半は行方不明になった。救助された乗員によれば悪天候の中を飛行しはじめ、猛吹雪で視界不良で確認も出来ないまま山に激突し、その衝撃で飛行船のゴンドラの後ろ半分が脱落したという。
その直後、操舵室を含むゴンドラの前半分は気球本体につながったまま、急上昇してあっという間に消えてしまったという。ゴンドラの前半分には食堂や娯楽施設、客室などがあったため、乗客のほぼ全員が行方不明だという。
そのため、北極圏周辺の国々による大規模な捜索が行われたが、飛行船がなかなか見つからない状況が続いたという。最初にゴンドラが大破してから八日後に気球本体が発見されたが、なぜかゴンドラがどこかで脱落して見つからず今も乗員50名と乗客33名が行方不明のままだという。なお、後ろのゴンドラの残骸で救助された乗員30名のうち11人が衝突の衝撃で死亡しており、残りの者も凍傷などを負うなど重傷で、行方不明者の安否は絶望とみられている。
「こういったところが事件の顛末とされています。実は、これは極秘ルートで知ったのですが、口外しないでください。ハイジャックの一味にダグラスとブラックバーン嬢がいて、他の乗客を人質にしているようです。表向きにはどこかで死んだようにいわれていますが」
リチャードが口にした言葉は信じられないものだった。なぜ金持ちの御曹司がハイジャック犯にならないといけないのよ、しかも愛人と!
万国旅客飛行船株式会社が運航する「空の乙女号」がハーヴェイドルフの空港を出発したのは二週間前だった。その日から三週間の予定で世界周回コースの一つ「北極圏横断航路」に向かった。予定では北の諸国の観光地に寄港しながらオプショナルツアーを実施し、北極圏の広大な森林地帯やツンドラを上空通過をしたのち、北極近くにある世界最北の島に寄港し、北極探検をしてから北極圏を通過し、ハーヴェイドルフの北極からみて反対側にある国々に寄港したのち、大国のトリニティ王国の首都で終わるはずだった。そこでハーヴェイドルフからの参加者がいれば、航空定期便で帰国する予定だった。
この日の乗客は33人で、それに対し乗員は80人と手厚いサービスが約束されていたはずであった。ツアーは順調に進み、世界最北の島、アムルノームを出発したのちハイジャックされた。
深夜、静かな夜にするため北極点近くで停泊していた時に操舵室がハイジャックされた。犯人は飛行船を支配すると何処かへと移動させた。緊急信号を受信した北極駐留の部隊が捜索していたところ、「空の乙女号」はアムルノームから800Km 離れた島の山岳地帯で飛行船のゴンドラの残骸を発見した。
残骸には生存者がいたが、後部の接客スタッフが大半で、乗客の大半は行方不明になった。救助された乗員によれば悪天候の中を飛行しはじめ、猛吹雪で視界不良で確認も出来ないまま山に激突し、その衝撃で飛行船のゴンドラの後ろ半分が脱落したという。
その直後、操舵室を含むゴンドラの前半分は気球本体につながったまま、急上昇してあっという間に消えてしまったという。ゴンドラの前半分には食堂や娯楽施設、客室などがあったため、乗客のほぼ全員が行方不明だという。
そのため、北極圏周辺の国々による大規模な捜索が行われたが、飛行船がなかなか見つからない状況が続いたという。最初にゴンドラが大破してから八日後に気球本体が発見されたが、なぜかゴンドラがどこかで脱落して見つからず今も乗員50名と乗客33名が行方不明のままだという。なお、後ろのゴンドラの残骸で救助された乗員30名のうち11人が衝突の衝撃で死亡しており、残りの者も凍傷などを負うなど重傷で、行方不明者の安否は絶望とみられている。
「こういったところが事件の顛末とされています。実は、これは極秘ルートで知ったのですが、口外しないでください。ハイジャックの一味にダグラスとブラックバーン嬢がいて、他の乗客を人質にしているようです。表向きにはどこかで死んだようにいわれていますが」
リチャードが口にした言葉は信じられないものだった。なぜ金持ちの御曹司がハイジャック犯にならないといけないのよ、しかも愛人と!
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