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幼稚な正義感の名の下で
サブリナの誤算
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サブリナ・カイパーはいわゆる没落貴族の娘だった。かつて栄華を極めていたが、時代の変化によって経済的苦境に陥り父や祖父の幼年時代に過ごしたような暮らしは出来なかった。ただプライドだけは高かった。そのプライドを満足させるためには将来経済的余裕のある金持ちの妻になるという目標があった。
もちろんサブリナには同じような貴族から婚約の打診があったが、家柄は良くても一般庶民と変わりない暮らしになるのは明白なので全て断っていた。
そんなサブリナが射止めたのはギャルソン・モルトケだった。同級生の中で輝いて見えたし、モルトケ商会という飛ぶ鳥を落とす勢いの会社経営者の令息であったのが良かった。でも問題もあった、婚約者がいたことだった。しかも地味な娘キャロル・オーガスタだ! だから排除するために様々の工作をしてきた。
ギャルソンのハートは掴んでいるので後は婚約者の地位から落とすことだった。だからイジメられているとか不貞行為をしているなどと噂を立て、さらには証拠の捏造もしてきた。それでキャロルの男子生徒の間の評判も落ち、ギャルソンも敵視するようになったが、なぜか教師たちに訴えても目に見えるような措置がとられることはなかった。それで焦ったサブリナはギャルソンに実力行使してもらったわけだ。
「ボス、うまくいきそうだね。あの写真を送ったのでしょ?」
サブリナは有頂天になっていた。キャロルの逢瀬の写真が関係各所に送られたと聞いて尋ねたのは、ギャルソンが依頼した反社会的勢力の経営するバーだった。このバーはギャルソンとサブリナが横流しした幻覚誘発茶の密売組織とつながっていた。
「そうだよ、送った」
ボスと呼ばれた初老のいかにも裏社会の男はそういったが、なにか雰囲気がおかしいとおもったが、気のせいだとやりすごした。
「それはよかった。ギャルソンを焚きつけた甲斐があったわ。ボスに協力していただいて感謝します。これであの女の婚約は破棄されるわ! ざまあみろって!」
そういったとき、三か所ある出入り口から大勢の人間が突入してきた。
「サブリナ・カイパー! 君を逮捕する! 未成年であるが禁止薬物密売と強制性交未遂の共犯容疑だ! それと君には弁護人を雇い証言を拒否する権利はあるが・・・まあ、詳しい事は警察に行ってからな」
警官は逮捕令状を示しそういったがサブリナは何の事なのかわからなかった。
「ボス! これって?」
「サブリナちゃん、悪いな。俺も逮捕されたんさ。でも捜査に協力すればあの娘に関する罪は訴追しないといわれたのさ。なんだって強姦未遂の罪の方が重いからさ!」
「なんでなの! あれほどバレないって言ってじゃないのよ! 最高のスタッフと装置を用意するっていって、あたしが思い描いていたようにするって!」
そのときサブリナははっとした、まずいと。警官はニヤニヤしていた。
「やっぱり君だったんだね。キャロルさんに危害を加える事件の主犯は! まあ、もうじき君の彼氏も同じ容疑で逮捕するからな」
「なんだって! ギャルソンに会わせてよ! お願い!」
「それは出来ないなあ。別々に取り調べを受けてもらうさ! それと君は彼氏と会う事はだぶんもうないだろうな! じゃあ、いこうか!」
そういわれるとサブリナの両脇にはいつの間にか女性警官が立っており、両肩を掴まれてしまった。
「いやー! 放してよ! あたしはあの女を陥れたかっただけだし! ギャルソンと甘く贅沢な生活をしたかっただけなのに!」
泣き叫んだサブリナであるが警官たちは無表情だった。彼女に同情する者はいなかった。この時帝都では幻覚誘発茶が原因で、服用した者による殺傷事件が続発しており大きな社会問題になっていた。だからサブリナはキャロルに対する罪よりも糾弾されるべき悪女だった。
「だからといって他の人を不幸にする権利はないんだよ! さあ、行け!」
サブリナの右肩を抱えていた女性警官の声は、憎しみに満ちていた。荒々しく連行されていくサブリナの行く先は真っ暗といえた。いくら泣き叫んでも問答無用で警察車輌におし込められていった。サブリナは絶望しかなかった。
もちろんサブリナには同じような貴族から婚約の打診があったが、家柄は良くても一般庶民と変わりない暮らしになるのは明白なので全て断っていた。
そんなサブリナが射止めたのはギャルソン・モルトケだった。同級生の中で輝いて見えたし、モルトケ商会という飛ぶ鳥を落とす勢いの会社経営者の令息であったのが良かった。でも問題もあった、婚約者がいたことだった。しかも地味な娘キャロル・オーガスタだ! だから排除するために様々の工作をしてきた。
ギャルソンのハートは掴んでいるので後は婚約者の地位から落とすことだった。だからイジメられているとか不貞行為をしているなどと噂を立て、さらには証拠の捏造もしてきた。それでキャロルの男子生徒の間の評判も落ち、ギャルソンも敵視するようになったが、なぜか教師たちに訴えても目に見えるような措置がとられることはなかった。それで焦ったサブリナはギャルソンに実力行使してもらったわけだ。
「ボス、うまくいきそうだね。あの写真を送ったのでしょ?」
サブリナは有頂天になっていた。キャロルの逢瀬の写真が関係各所に送られたと聞いて尋ねたのは、ギャルソンが依頼した反社会的勢力の経営するバーだった。このバーはギャルソンとサブリナが横流しした幻覚誘発茶の密売組織とつながっていた。
「そうだよ、送った」
ボスと呼ばれた初老のいかにも裏社会の男はそういったが、なにか雰囲気がおかしいとおもったが、気のせいだとやりすごした。
「それはよかった。ギャルソンを焚きつけた甲斐があったわ。ボスに協力していただいて感謝します。これであの女の婚約は破棄されるわ! ざまあみろって!」
そういったとき、三か所ある出入り口から大勢の人間が突入してきた。
「サブリナ・カイパー! 君を逮捕する! 未成年であるが禁止薬物密売と強制性交未遂の共犯容疑だ! それと君には弁護人を雇い証言を拒否する権利はあるが・・・まあ、詳しい事は警察に行ってからな」
警官は逮捕令状を示しそういったがサブリナは何の事なのかわからなかった。
「ボス! これって?」
「サブリナちゃん、悪いな。俺も逮捕されたんさ。でも捜査に協力すればあの娘に関する罪は訴追しないといわれたのさ。なんだって強姦未遂の罪の方が重いからさ!」
「なんでなの! あれほどバレないって言ってじゃないのよ! 最高のスタッフと装置を用意するっていって、あたしが思い描いていたようにするって!」
そのときサブリナははっとした、まずいと。警官はニヤニヤしていた。
「やっぱり君だったんだね。キャロルさんに危害を加える事件の主犯は! まあ、もうじき君の彼氏も同じ容疑で逮捕するからな」
「なんだって! ギャルソンに会わせてよ! お願い!」
「それは出来ないなあ。別々に取り調べを受けてもらうさ! それと君は彼氏と会う事はだぶんもうないだろうな! じゃあ、いこうか!」
そういわれるとサブリナの両脇にはいつの間にか女性警官が立っており、両肩を掴まれてしまった。
「いやー! 放してよ! あたしはあの女を陥れたかっただけだし! ギャルソンと甘く贅沢な生活をしたかっただけなのに!」
泣き叫んだサブリナであるが警官たちは無表情だった。彼女に同情する者はいなかった。この時帝都では幻覚誘発茶が原因で、服用した者による殺傷事件が続発しており大きな社会問題になっていた。だからサブリナはキャロルに対する罪よりも糾弾されるべき悪女だった。
「だからといって他の人を不幸にする権利はないんだよ! さあ、行け!」
サブリナの右肩を抱えていた女性警官の声は、憎しみに満ちていた。荒々しく連行されていくサブリナの行く先は真っ暗といえた。いくら泣き叫んでも問答無用で警察車輌におし込められていった。サブリナは絶望しかなかった。
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