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幼稚な正義感の名の下で
婚約破棄を映画のように!
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喫茶店に貼られていたポスターは最近ヒットした青春映画「熟した果実」のものであった。それは自由奔放な若者たちの群像劇で、映画の中で男女がくっついたり離れたりする物語だった。その映画に対し大人たちは不埒で性に対して不道徳的だと批判したが、ギャルソンはその映画にあったエピソードのひとつを思い出した。
主役の妹が婚約者のいる娘を罠にはめるというものであった。妹は横恋慕した男との婚約をぶち壊すために不良たちをけしかけて娘を襲わせるというものである。映画の中では娘は自殺未遂するわ、妹が警察に追われるわ、主役は大人たちから弾圧されるわといった事が起きるのであるが、ギャルソンはそのうち婚約を破棄するための行為に着目した。
「なあサブリナ。いいか? キャロルを罠に嵌めないか?」
小さな声で耳元でささやくものだから、サブリナはそれが婚約破棄する妙案だとわかった。
「いいわよ! 校長先生もわたしがイジメられているって訴えを真面にしてくれないから、痛い目に逢わさないといけないよね」
サブリナは自分がキャロルにイジメられているとウソを言いふらしたものの、ギャルソン以外には真面に信じてもらえないことにいら立っていた。でも、彼が婚約破棄にむけて動いてくれることがうれしかった。
「そうだな! 君がひどい目に遭っているんだ! 不正に対して少々悪い事をしても許されるのが正義だろ」
ギャルソンのいう「正義」とは自分たちにとって都合のいいものであった。本当にイジメられているのか確かめる気なんかなかったし、サブリナの言い分を完全に信じ込んでいた。キャロルは悪なのだと。
「そうよ! あんな女本当はいなくなってくれなきゃ困るのよあたしは! あなたともっと付き合いたいしね!」
サブリナにとって婚約者のキャロルは邪魔者でしかなかった。「熟した果実」に出てきたあの貴族の娘のように! 映画の中の婚約者の娘は貴族で傲慢な存在だったが、映画の中では辱めを受けてざまあみろと思った程に! だからキャロルも婚約破棄されても仕方ないぐらいの辱めを受けるべきだと勝手に決めつけていた。
「そうだな! あいつを陥れてやるぞ! 俺に考えがある! これが成功すれば来月までにあいつとの婚約も俺の親父が破棄せざるを得なくなるはずさ!」
ギャルソンは不敵な笑みを浮かべていた。頭の中でキャロルは死ぬよりも嫌であろう酷い目に遭遇するヴィジョンが浮かんでいた。そのなかでキャロルは泣きさけんでいた。そしてギャルソンの世界から永遠に退場した。
「うれしいわ! お願いね! あたしをイジメる娘にはお仕置きしなくちゃね!」
サブリナをイジメたという冤罪によってギャルソンはキャロルにと仕返しのつかないことを企てていた。それが全て自分に跳ね返って戻ってくるリスクを考えていなかった。
主役の妹が婚約者のいる娘を罠にはめるというものであった。妹は横恋慕した男との婚約をぶち壊すために不良たちをけしかけて娘を襲わせるというものである。映画の中では娘は自殺未遂するわ、妹が警察に追われるわ、主役は大人たちから弾圧されるわといった事が起きるのであるが、ギャルソンはそのうち婚約を破棄するための行為に着目した。
「なあサブリナ。いいか? キャロルを罠に嵌めないか?」
小さな声で耳元でささやくものだから、サブリナはそれが婚約破棄する妙案だとわかった。
「いいわよ! 校長先生もわたしがイジメられているって訴えを真面にしてくれないから、痛い目に逢わさないといけないよね」
サブリナは自分がキャロルにイジメられているとウソを言いふらしたものの、ギャルソン以外には真面に信じてもらえないことにいら立っていた。でも、彼が婚約破棄にむけて動いてくれることがうれしかった。
「そうだな! 君がひどい目に遭っているんだ! 不正に対して少々悪い事をしても許されるのが正義だろ」
ギャルソンのいう「正義」とは自分たちにとって都合のいいものであった。本当にイジメられているのか確かめる気なんかなかったし、サブリナの言い分を完全に信じ込んでいた。キャロルは悪なのだと。
「そうよ! あんな女本当はいなくなってくれなきゃ困るのよあたしは! あなたともっと付き合いたいしね!」
サブリナにとって婚約者のキャロルは邪魔者でしかなかった。「熟した果実」に出てきたあの貴族の娘のように! 映画の中の婚約者の娘は貴族で傲慢な存在だったが、映画の中では辱めを受けてざまあみろと思った程に! だからキャロルも婚約破棄されても仕方ないぐらいの辱めを受けるべきだと勝手に決めつけていた。
「そうだな! あいつを陥れてやるぞ! 俺に考えがある! これが成功すれば来月までにあいつとの婚約も俺の親父が破棄せざるを得なくなるはずさ!」
ギャルソンは不敵な笑みを浮かべていた。頭の中でキャロルは死ぬよりも嫌であろう酷い目に遭遇するヴィジョンが浮かんでいた。そのなかでキャロルは泣きさけんでいた。そしてギャルソンの世界から永遠に退場した。
「うれしいわ! お願いね! あたしをイジメる娘にはお仕置きしなくちゃね!」
サブリナをイジメたという冤罪によってギャルソンはキャロルにと仕返しのつかないことを企てていた。それが全て自分に跳ね返って戻ってくるリスクを考えていなかった。
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