【中編小説集】婚約破棄して”ざまあ!”になった人々の話

ジャン・幸田

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幼稚な正義感の名の下で

キャロルをディズる二人

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 学校近くの喫茶店にギャルソンとサブリナがお茶していた。話題はもちろんキャロルの事だった。サブリナのハプニングが起きた茶番をギャルソンは彼女の意図通りに認識していた。あれは嫉妬したキャロルがわざと突き落としたんだと。ギャルソンが来るタイミングでわざとサブリナが階段から突き落とされたように芝居したことなど気付くことはなかった。

 「サブリナ、大丈夫か? あいつ本当にひどい奴だな!」

 ギャルソンは心配していったが、それをサブリナは心の中でうまくいったと喜んでいた。

 「ええ、少し痛むけど平気よ! 本当に彼女の嫉妬心は半端ないわね。自分が婚約者だからっていばっているわね。婚約者といばるのなら婚約者らしくしなさいわね」

 サブリナはそういったが、本音は婚約者面しようと思っていないことは百も承知だった。そうしない方が都合よかったし。

 「婚約者か・・・なんで親父たちは勝手に決めやがったんだが。一年中仕事であっちこっち旅しているっていうのに息子に押し付けるなんて! あんな灰色の髪の毛なんって鬱陶しい! 君の方がずっと魅力的なのにねサブリナ!」

 ギャルソンにとってキャロルは不良債権みたいなものであった。不良債権なら解消する方法は結婚ではなく婚約破棄が一番だった。でも、両親は自分の意向を無視しているのと同じだった。早く正式に婚約式もやりたいし、結婚式は学校を卒業してからがいいだの、新居はどこかに屋敷を新築したいなあって、自分の意見を聞いてくることなく構想ばかり膨らましていた。

 それで、ある時キャロルと婚約したくなくなったらどうなるんかと聞いてみると、両親二人ともこういった。

 「結婚すれば彼女を一生手放したくなくなるはずだから」と。

 でも、灰色の髪と瞳を持つ痩せこけた娘と自分が添い遂げる姿を想像するだけでも嫌だった。もし結婚するなら目の前のブロンズの髪をもつ豊満な体つきのサブリナでなければ嫌だと思っていた。

 「そうよ! あたしもあなたとじゃないと嫌だし考えられないわ! どうすれば、あの女は婚約者のやめてくれるのかしらね?」

 サブリナはギャルソンに同調していた。このときギャルソンは婚約破棄の方法を考えていた。一番いいのは自分から一方的に破棄することだ。たとえば卒業パーティーの時に婚約破棄を宣告すればいいと。でも、それは一番簡単だけど一番難しかった。なんのご利益があるのかわからない竜の血を受けづいている娘を信奉している両親は絶対反対するだろうから。

 次にサブリナと駆け落ちすることだ。でもその場合、今の何不自由ない裕福な暮らしを捨てていかないといけないし、キャロルの方が悲劇のヒロインなんて同情されかれないし。それに無駄な苦労はしたくなかった。

 最後に思い付いたのがキャロルの家に辞退させることだ。それが一番難しい事のようで一番やりやすそうだった。向こうから婚約破棄してくれたら、両親は簡単に納得してくれそうだった。でも、方法が思い付かなかった。そのときだった、ギャルソンは喫茶店の壁に貼られていたとある映画のポスターを見て、悪だくみを思い付いた。それが悲喜劇のはじまりであった。
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