【中編小説集】婚約破棄して”ざまあ!”になった人々の話

ジャン・幸田

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幼稚な正義感の名の下で

婚約者を妬ましく見る女

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 恋というものは障害があるほうが燃える時もある。周囲の者が反対していたり、何かの都合で二人の物理的距離が離れている場合だ。そんな時には周囲の迷惑なんかお構いなく熱く燃え上がるわけだ。

 目下、サブリナ・カイパーはギャルソン・モルトケと恋人の関係だった。あわよくば結婚してもいいかもしれないと燃え上がっていた。でも二人には最大の障害があった。ギャルソンの婚約者であるキャロル・オーガストだ。二人からすれば幼いころから婚約者がいるなんて昔の貴族じゃあるまいし時代錯誤の存在だった。

 それでサブリナはキャロルを敵視していたわけである。キャロルを排除しめでたくギャルソンと添い遂げるにはどうすればいいのか? それを色々とサブリナは考えていた。

 無視するというイジメは・・・キャロルに友人はセイラぐらいしかいないので、あんまり効果なさそうだった。それでは嫌がらせは? あんまり効果なさそうだった。そこでサブリナが思い付いたのが、自分がイジメられているといってギャルソンに訴える事だった。そうすれば婚約破棄できるかもしれないと思ったからだ。サブリナにとって目障りな存在であるキャロルをどうにかしたいものであった。

 これがフツーの恋愛小説なら、サブリナはヒロインでキャロルは悪役という事になるが、客観的にサブリナを見ればキャロルという婚約者をないがしろにしている男に横恋慕している不倫な関係といえた。しかし二人からすれば自分中心にこの世の中回っているはずだから、自分たちの方が正義だと考えていた。

 授業そっちのけでサブリナはギャロルをにらんでいた。サブリナは学級委員長で成績も良くクラスメイトからも人気があった。またサブリナはそこそこの上流階級の令嬢で平均点以上の美貌があった。でも恋敵のキャロルに容赦しないと心に誓っていた。サブリナがギャルソンと結婚願望を達成するには婚約者キャロルは邪魔だと思っていた。

 「あいつさえいなく無くなればいいのに!」

 サブリナにとってキャロルは忌々しい存在だった。その存在を消す企てをサブリナはしていた。さっき呼び出したしと。それにしても平凡なキャロルを婚約者にしたのは、大人たちは何を考えていたんだろうか? キャロルは?

 ギャルソンによればキャロルは「赤い竜の血」の末裔だということであったが、今どき流行らないと思えた。そんなのを信じて婚約したなんてますます怪しかった。だからこそ、ギャルソンを救うためにもキャロルを排除しないとならないと固く信じているサブリナは自分に陶酔していた。


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