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王子の真実の愛の真実
12 End of…
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トリニティ王国の女王になってからのキャサリンは素晴らしい人生であったといえる。持ち前の知性と学習能力の高さで君主として次の国王に譲るまで名君として名前をはせた。一方、私生活では初期には処刑されそうになった時のトラウマから男性不信に陥り即位してから10年もの間結婚しなかったが、素晴らしい男性に巡り合い彼と結婚した後は大家族をなした。また有能な王配との間の子供たちも才能と美しさを兼ねており、歴史に名前を残したものも多かった。特に帝国に嫁いだ娘が産んだ息子が皇帝に即位したため、キャサリンは皇帝の祖母としても尊敬されたという。
ジェーンは過去の過ちを償うために医者になったという。猛勉強で奨学金を受けながら資格を取り、貧しい地域で身を粉にして働いた。その地でジェーンは大いに尊敬されたという。なお、生涯結婚しなかったという。
フラマン王国の旧王家は帝国侯爵になったが、ヴィルヘルムという不肖の後継者を失ったので、その跡目は元国王の弟が継いだという。もっとも領土は帝国内の別の地域に下賜されたが、そこは旧フラマン王国の領域よりもずっと狭い領土であったため、旧王家に仕えていた者たちの多くは一緒に行く事は出来なかった。
またハインリッヒは旧王国領のうちトリニティ王国に割譲された地域に設置された州で知事を長年務めたが、トリニティ王国から一切の叙勲を辞退し職務上の貴族位を返上した。
フラマン王国の貴族は一部は三か国の貴族として迎え入れられたが、多くは身分を剥奪されたという。特にヴィルヘルムが婚約破棄したパーティーで拍手したと判明した貴族はたとえ高位であっても領地も財産も剥奪された。奇妙なことであるが、元貴族には恨まれたが旧フラマン王国の支配階層に圧迫されていた民衆から、ヴィルヘルムは解放者だったと揶揄された。
一方、ヴィルヘルムといえば特筆すべきことは一切しなかったといえる。彼はほとんど地の果てのようなところに連れていかれチェスターにこういわれたという。
「ここで努力して立派な男になるか、それとも安易な道を選び堕落するか決めろ」
その言葉の意味を理解できなかったヴィルヘルムは怒鳴ったが、見捨てられるように馬車は去っていったという。その後については他人が興味を持つようなことはないような人生であったといえる。のちにヴィルヘルムの事を調査した歴史家は次のような言葉を残している。
”キャサリン陛下を捨てジェーン嬢に乗り換えようとしたのがヴィルヘルムの失敗だった。二人の女性を弄んで国を滅ぼした男の運命はざまあみろと罵られて当然である。
チェスターは一種の裁判にかけたといえる。もし必要な人間であれば神が運を与えるだろうと。国を滅ぼした男は処刑されるか自決すべきだとチェスターは考えていたが、殺さない代わりに死んでも構わないような場所に置き去りにした。
そのあとのヴィルヘルムの詳細はわからないが、盗賊の手下になったとか、漁船の下働きになったとか、いろんなことがいわれているが定かではない。ただ、確かな事はあまり長生きできなかったようである。
キャサリン女王が結婚した頃、ひどい飢えと病のなかで名もない集落で人生を終えたようだ。その人生で誰にも相手されなかったらしく、遺体はゴミでも埋めるように埋葬された。
ヴィルヘルムにとって追放されてからの人生は、緩慢な死刑であった。彼が追い求めていた真実の愛の真実とは儚く虚しかったものだといえる。自分だけが満足するのではなく、相手や周囲の者に対して愛することをしなかった哀れな男の末路である。"
「王子の真実の愛の真実」編 了
ジェーンは過去の過ちを償うために医者になったという。猛勉強で奨学金を受けながら資格を取り、貧しい地域で身を粉にして働いた。その地でジェーンは大いに尊敬されたという。なお、生涯結婚しなかったという。
フラマン王国の旧王家は帝国侯爵になったが、ヴィルヘルムという不肖の後継者を失ったので、その跡目は元国王の弟が継いだという。もっとも領土は帝国内の別の地域に下賜されたが、そこは旧フラマン王国の領域よりもずっと狭い領土であったため、旧王家に仕えていた者たちの多くは一緒に行く事は出来なかった。
またハインリッヒは旧王国領のうちトリニティ王国に割譲された地域に設置された州で知事を長年務めたが、トリニティ王国から一切の叙勲を辞退し職務上の貴族位を返上した。
フラマン王国の貴族は一部は三か国の貴族として迎え入れられたが、多くは身分を剥奪されたという。特にヴィルヘルムが婚約破棄したパーティーで拍手したと判明した貴族はたとえ高位であっても領地も財産も剥奪された。奇妙なことであるが、元貴族には恨まれたが旧フラマン王国の支配階層に圧迫されていた民衆から、ヴィルヘルムは解放者だったと揶揄された。
一方、ヴィルヘルムといえば特筆すべきことは一切しなかったといえる。彼はほとんど地の果てのようなところに連れていかれチェスターにこういわれたという。
「ここで努力して立派な男になるか、それとも安易な道を選び堕落するか決めろ」
その言葉の意味を理解できなかったヴィルヘルムは怒鳴ったが、見捨てられるように馬車は去っていったという。その後については他人が興味を持つようなことはないような人生であったといえる。のちにヴィルヘルムの事を調査した歴史家は次のような言葉を残している。
”キャサリン陛下を捨てジェーン嬢に乗り換えようとしたのがヴィルヘルムの失敗だった。二人の女性を弄んで国を滅ぼした男の運命はざまあみろと罵られて当然である。
チェスターは一種の裁判にかけたといえる。もし必要な人間であれば神が運を与えるだろうと。国を滅ぼした男は処刑されるか自決すべきだとチェスターは考えていたが、殺さない代わりに死んでも構わないような場所に置き去りにした。
そのあとのヴィルヘルムの詳細はわからないが、盗賊の手下になったとか、漁船の下働きになったとか、いろんなことがいわれているが定かではない。ただ、確かな事はあまり長生きできなかったようである。
キャサリン女王が結婚した頃、ひどい飢えと病のなかで名もない集落で人生を終えたようだ。その人生で誰にも相手されなかったらしく、遺体はゴミでも埋めるように埋葬された。
ヴィルヘルムにとって追放されてからの人生は、緩慢な死刑であった。彼が追い求めていた真実の愛の真実とは儚く虚しかったものだといえる。自分だけが満足するのではなく、相手や周囲の者に対して愛することをしなかった哀れな男の末路である。"
「王子の真実の愛の真実」編 了
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