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王子の真実の愛の真実
9(改訂版)
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ヴィルヘルムとジェーンは国事犯として裁判にかけられることになった。罪状は様々なものをつけられたが、主なものとしてはヴィルヘルムの父である国王を毒物で暗殺しようとしたこと、そして無実の罪で国王の承諾なしに婚約破棄を無断でしたうえキャサリンを処刑しようとしたことだ。
法廷は王宮内の一室に特設されたが、傍聴席は設けられず完全に非公開だった。そのかわり裁判に周辺諸国から派遣された法曹官吏が担うとされた。この裁判は帝国の意向が反映されていた。
法廷でヴィルヘルムはジェーンの姿を見ることが出来た。彼女とは逮捕された日以来であった。ジェーンは少し痩せていたが元気そうだった。ヴィルヘルムは彼女を見てうれしくなったが、ジェーンは視線を合わせようとせず逸らしてばかりだった。それはまるで関わらないでほしいといわんばかりであった。
法廷に検事と判事がはいってきたが、全身黒づくめの死に神のような衣装を身に着け顔すらわからなかった。裁判は始まったが、被告人二人の発言は許されることはなかった。一応二人のいいぶんは弁護人のチェスターが代弁したが、必ずしも一致したものでなかったように二人には思えたが異議を申し出ることは出来なかった。
裁判は儀式のように進んでいったが、それは結論は決まっていたからだ、有罪だと。既にホルストの裁判で事実が認定されていたためであった。ホルストの裁判はどのように行われたのか分からないが、もはや覆される可能性はなかった。ホルストの裁判で真相だとされた今回の婚約破棄事件などは次のように起きたとされた。
王国の伯爵であったホルスト・フォン・シュタインは国政を手中に収めるために、まず姪のジェーン・フォン・フォレスタル公爵に命じて、婚約者がいるにもかかわらず真実の愛を探していて心に隙のある王太子ヴィルヘルムに色仕掛けで近づき籠絡した。そして王太子の側近になった。
次いで早期に国王にヴィルヘルムを確実に継がせるために、砒素の入った砂糖を国王に差し入れ、徐々に死んでいくように企てるとともに、ヴィルヘルムの婚約者であったキャサリンとの婚約破棄するように仕向けた。ホルストは配下の者を使い存在もしない愛人をでっち上げ、製作者不明の呪詛を使いキャサリンを裁判を経ることなく処刑しようとした。結果的に寸前のところで食い止めたので全て未遂となった。
裁判で検察官はそれらの事が主張されたが、弁護人のチェスターは全てホルストがやったことであり、ヴィルヘルムは全く知らなかった、ジェーンはそそのかされただけだと主張してくれた。起訴された罪状のうち国王に対する砒素による暗殺未遂については、証拠不十分であるとしてヴィルヘルムとジェーンは無罪になった。
しかし、キャサリンに対する罪は全面的に認められた。数多く参加しているパーティーで婚約破棄を自分の口からしているので言い逃れできなかった。また極刑にせよと言っていたという証言も多数あるので、そこは否認できなかった。実際、キャサリンは処刑される寸前でもう少しで貞操を失うところであった。
裁判が始まってから三日目で判決が出された。二人ともキャサリンへの仕打ちで死刑だった。裁判が終わって二人はようやく同じ部屋に監視付きで再会できた。うれしい思いのヴィルヘルムに対しジェーンは無視を決めつけように見えた。
「ジェーン大丈夫か?」
「・・・・・」
「叔父さんには悪い事をしたね」
「・・・・・」
「これからおれたちどうなるだろうか?」
「・・・・・」
「何か言ってくれない?」
「・・・・・」
ジェーンはなにも口にしなかった。言葉を忘れてしまったかのように。そんなジェーンにヴィルヘルムはイライラしだした。
「君は俺の真実の愛の相手なんだろ? 仲良くしてもらえないかね」
真実の愛という言葉が出たことで、ようやく魔法が解けたかのようにしゃべりだしたが、それはヴィルヘルムにとって悪夢の始まりだった。
「真実の愛? なによそれ! それは王太子だったあんただからこそなんだ! もう、王太子でもなんでもないあんたなんて・・・もう会いたくない! ホルスト叔父さんの言うとおりにしたというのに、わたし四肢引き裂き刑にされるのよ!」
会いたくない! ジェーンの言葉にヴィルヘルムは激しく動揺した。
「そんなはずじゃないだろ! あんなに二人で愛し合ったじゃないの!」
「ふん! さっき裁判でも言っていたでしょ。叔父様に勧められて身も心もあんたに捧げたんだと。でもそれは全て打算があったのよ! わたしは優秀すぎる婚約者から未来の王妃の座を奪いたかったのよ。あの女はこの国からいなくなったけど同時にあんたも王太子じゃなくなったから、もう要らないわよ! あんたのような王太子以外に価値がない男なんか!」
「じゃあ、俺の真実の愛ってなんだったんだよ!」
「きまっているじゃないのよ、愛情よりも地位と名誉がないと成就できないものよ! もうあんたには両方ないわ。そうでしょう、真実の愛といったって動機付けがなければいけないのよ。満たされた結婚生活がおくれる、立派な子供を育てられる環境、なによりも妻として女として尊敬してくれる夫。それらを今のあんたは出来ないでしょ!」
「そんなあ・・・」
ヴィルヘルムは床に崩れていった。ショックがひどかったためだ。
「もうあんたもわたしも一文なしだ。これであなたとサヨナラできる。嬉しい」
ジェーンからそれを聞いてヴィルヘルムは悔しがっていた。
「ちょっとまってくれないか? 君に対する俺の愛情は本気だったんだ。だからこそあの女を・・・排除するために君が言い出したんだろ、あの女を処刑することを」
そういったヴィルヘルムに対してジェーンは近くに置かれていたテーブルを投げつけた。
「それは言わないで頂戴! あたしは後悔しているのよ! あんな恐ろしい事をいってしまったことを! 牢屋に入れられているときに死にたいと思ったのよ! あんたをそそのかしたことを! そのせいで叔父さんも多くの知っていた人達が死んでしまったわ! それに・・・」
ジェーンははっとしたようだ。監視者がいるこの場で罪の告白をしようとしていたことに。今回のキャサリンの婚約破棄は全てジェーンの欲望が生み出したものであった。その欲望に応えるためにヴィルヘルムは過ちを犯したのだから。
その二人の前に思わぬ人物が現れた。王国宰相と摂政代理を務めるハインリッヒだった。
法廷は王宮内の一室に特設されたが、傍聴席は設けられず完全に非公開だった。そのかわり裁判に周辺諸国から派遣された法曹官吏が担うとされた。この裁判は帝国の意向が反映されていた。
法廷でヴィルヘルムはジェーンの姿を見ることが出来た。彼女とは逮捕された日以来であった。ジェーンは少し痩せていたが元気そうだった。ヴィルヘルムは彼女を見てうれしくなったが、ジェーンは視線を合わせようとせず逸らしてばかりだった。それはまるで関わらないでほしいといわんばかりであった。
法廷に検事と判事がはいってきたが、全身黒づくめの死に神のような衣装を身に着け顔すらわからなかった。裁判は始まったが、被告人二人の発言は許されることはなかった。一応二人のいいぶんは弁護人のチェスターが代弁したが、必ずしも一致したものでなかったように二人には思えたが異議を申し出ることは出来なかった。
裁判は儀式のように進んでいったが、それは結論は決まっていたからだ、有罪だと。既にホルストの裁判で事実が認定されていたためであった。ホルストの裁判はどのように行われたのか分からないが、もはや覆される可能性はなかった。ホルストの裁判で真相だとされた今回の婚約破棄事件などは次のように起きたとされた。
王国の伯爵であったホルスト・フォン・シュタインは国政を手中に収めるために、まず姪のジェーン・フォン・フォレスタル公爵に命じて、婚約者がいるにもかかわらず真実の愛を探していて心に隙のある王太子ヴィルヘルムに色仕掛けで近づき籠絡した。そして王太子の側近になった。
次いで早期に国王にヴィルヘルムを確実に継がせるために、砒素の入った砂糖を国王に差し入れ、徐々に死んでいくように企てるとともに、ヴィルヘルムの婚約者であったキャサリンとの婚約破棄するように仕向けた。ホルストは配下の者を使い存在もしない愛人をでっち上げ、製作者不明の呪詛を使いキャサリンを裁判を経ることなく処刑しようとした。結果的に寸前のところで食い止めたので全て未遂となった。
裁判で検察官はそれらの事が主張されたが、弁護人のチェスターは全てホルストがやったことであり、ヴィルヘルムは全く知らなかった、ジェーンはそそのかされただけだと主張してくれた。起訴された罪状のうち国王に対する砒素による暗殺未遂については、証拠不十分であるとしてヴィルヘルムとジェーンは無罪になった。
しかし、キャサリンに対する罪は全面的に認められた。数多く参加しているパーティーで婚約破棄を自分の口からしているので言い逃れできなかった。また極刑にせよと言っていたという証言も多数あるので、そこは否認できなかった。実際、キャサリンは処刑される寸前でもう少しで貞操を失うところであった。
裁判が始まってから三日目で判決が出された。二人ともキャサリンへの仕打ちで死刑だった。裁判が終わって二人はようやく同じ部屋に監視付きで再会できた。うれしい思いのヴィルヘルムに対しジェーンは無視を決めつけように見えた。
「ジェーン大丈夫か?」
「・・・・・」
「叔父さんには悪い事をしたね」
「・・・・・」
「これからおれたちどうなるだろうか?」
「・・・・・」
「何か言ってくれない?」
「・・・・・」
ジェーンはなにも口にしなかった。言葉を忘れてしまったかのように。そんなジェーンにヴィルヘルムはイライラしだした。
「君は俺の真実の愛の相手なんだろ? 仲良くしてもらえないかね」
真実の愛という言葉が出たことで、ようやく魔法が解けたかのようにしゃべりだしたが、それはヴィルヘルムにとって悪夢の始まりだった。
「真実の愛? なによそれ! それは王太子だったあんただからこそなんだ! もう、王太子でもなんでもないあんたなんて・・・もう会いたくない! ホルスト叔父さんの言うとおりにしたというのに、わたし四肢引き裂き刑にされるのよ!」
会いたくない! ジェーンの言葉にヴィルヘルムは激しく動揺した。
「そんなはずじゃないだろ! あんなに二人で愛し合ったじゃないの!」
「ふん! さっき裁判でも言っていたでしょ。叔父様に勧められて身も心もあんたに捧げたんだと。でもそれは全て打算があったのよ! わたしは優秀すぎる婚約者から未来の王妃の座を奪いたかったのよ。あの女はこの国からいなくなったけど同時にあんたも王太子じゃなくなったから、もう要らないわよ! あんたのような王太子以外に価値がない男なんか!」
「じゃあ、俺の真実の愛ってなんだったんだよ!」
「きまっているじゃないのよ、愛情よりも地位と名誉がないと成就できないものよ! もうあんたには両方ないわ。そうでしょう、真実の愛といったって動機付けがなければいけないのよ。満たされた結婚生活がおくれる、立派な子供を育てられる環境、なによりも妻として女として尊敬してくれる夫。それらを今のあんたは出来ないでしょ!」
「そんなあ・・・」
ヴィルヘルムは床に崩れていった。ショックがひどかったためだ。
「もうあんたもわたしも一文なしだ。これであなたとサヨナラできる。嬉しい」
ジェーンからそれを聞いてヴィルヘルムは悔しがっていた。
「ちょっとまってくれないか? 君に対する俺の愛情は本気だったんだ。だからこそあの女を・・・排除するために君が言い出したんだろ、あの女を処刑することを」
そういったヴィルヘルムに対してジェーンは近くに置かれていたテーブルを投げつけた。
「それは言わないで頂戴! あたしは後悔しているのよ! あんな恐ろしい事をいってしまったことを! 牢屋に入れられているときに死にたいと思ったのよ! あんたをそそのかしたことを! そのせいで叔父さんも多くの知っていた人達が死んでしまったわ! それに・・・」
ジェーンははっとしたようだ。監視者がいるこの場で罪の告白をしようとしていたことに。今回のキャサリンの婚約破棄は全てジェーンの欲望が生み出したものであった。その欲望に応えるためにヴィルヘルムは過ちを犯したのだから。
その二人の前に思わぬ人物が現れた。王国宰相と摂政代理を務めるハインリッヒだった。
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