クリスタルレディ との逃亡

ジャン・幸田

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序・クリスタルレディ

03・優しさゆえに親愛であったとしても

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 宇宙士官学校というものは、人類の最高の英知を集めた学校でもあった。その学校に通う学生であればもう既にエリート扱いで、それは当然のことである。タクマはその生徒の中でも、ひときわ優秀でかつ有名人でもあった。

 士官学校に入る前は様々な競技でも有望なスポーツ選手であり、将来はプロの世界でも十分やっていけるだけの素質はあるといわれていた。しかし彼はすべて断った上で士官学校へと入学していた。 そのことは広くマスコミにも報道されて知らぬ者がいなかった。

 そんな彼とチズルの兄が仲良くなったのは、ネットワークゲームという共通の趣味があるのが分かったからさ。しかもネットワーク上で顔見知りだったので、リアルの世界においても友人関係を築けた理由である。

 チズルはそんな二人に付き添うような形で一緒にいるようになっていた。 士官学校が全寮制であるため、わずかな自由時間であったが。チズルは恋心を抱くようになっていたが、その思いを口にすることはしなかった。あまりにも身分の差が激しかったためだ。

 ある時、タクマには婚約者がいるのが分かった。その婚約者はいくつもの恒星系を経済的に支配する複合企業体の社長令嬢で あった。もしそのまま彼女と結婚すれば宇宙軍における出世は間違いないし、また退役した後も再就職に困らないようはないだろう。一生経済的にも苦労しない生活を約束されたといえた。だからチズルは諦めるしかなかったが、そんな彼女をタクマは妹のように優しく扱ってくれた。それが優しさゆえに親愛であったとしてもチズルはそれでよかった。叶わぬ恋だと諦めていたが、少しでも長く彼のそばにいたいと思っていた。

 彼が結婚するまで、もしくは卒業前ぐらいまでは一緒にいたいと思ったチズルは兄とタクマの三人で時間を過ごしていたが、それが終わる時がきた。タクマの選択したコースが外宇宙への実習航海に向う事になったためだ。そんな時チズルは思いついた。実習船に乗務すればいいんだと、彼にも内緒に! でも、それは士官学校に入学するよりも難しい事であった。宇宙士官学校の実習船は宇宙軍の精鋭揃いであったから。ただの少女が乗り込む方法なんて色々探してみたところ、ひとつだけあった! それは亜空間専用運航乗務員に改造される素体に志願する事だった それならタクマにもバレずに一緒に旅が出来る!

 もちろん、いろんな条件があり、一年間は人間扱いされず宇宙軍の備品扱いを受け入れる事だ。機械と肉体が融合する境遇を受け入れる事! そのためには心身ともに耐えられることが条件だった。チズルはその試験を受け合格した!
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