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序・クリスタルレディ
01・思い直せよ
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その少女はどちらかといえば引っ込み思案だった。普段の行動から周囲の者たちはそう認識していた。そんな彼女の決断に一部の打ち明けられた者は驚いてしまった。好きになった彼と一緒に旅をしたいからと、とある任務に志願したというのは。それは大抵の者なら報酬目当てにするものだというのに。
「思い直せよ、ツズル! あの男はエリートなんだぞ! お前なんか、まあ言っちゃ悪いが・・・自分のにいうのもなんだが、振り向いてくれないぞ。そんなストーカーになるために自分の身体を捨てるみたいなことなんか」
宇宙士官学校の実習補助員のアズマケイタは妹にを説得しようとしていた。彼女が志願しようとしていたのは、長期の宇宙実習航海のクルーであったが、彼女の場合は亜空間で行動できる要員として身体を機械と一体化した措置を受けなければならなかった。しかも、兄に黙って志願して対象者に選抜されてしまったのだ。
「お兄ちゃん、身体を捨てるわけじゃないわよ。実習航海が終われば元の状態に戻れるのよ。その間でもあの人と一緒に過ごせればいいのよ!」
ツズルは普段の態度から想像できないほど、積極的かつ強引に主張していた。でも、ケイタは彼女が改造される姿を想像するだけで嫌だった。彼女は航海中の士官たちを慰めるような、まあ性欲のはけ口なんかVRマシーンでも出来るというのに、女性客室乗務員でも生々しい姿にされるのが分かったからだ。
「でもなあ、なんでよりによってクリスタルレディなんだ! あれってまるで良くいってヌード芸術品、悪くいえば宇宙艦隊の悪趣味でしかないぞ! 今の時代女性の方が地位が高いといってもなんなんだよ!」
亜空間では生身の人間の活動は制限されるので、亜空間航行中の宇宙船の管理を行うのは機械化措置を受けサイボーグになった人間、もしくはアンドロイドであるが、前者は姿形は人間の時と変わらないが、後者の場合はロボットそのものにしか見えない姿であった。しかも、アンドロイドの中には人間の肉体を改造したものがあった。
その一つがクリスタルレディであった。
クリスタルレディは「機械生命体」といえるもので、肉体を機械で覆ってからバイオスーツでコーディングするもので、サイボーグ化するよりもはるかに安い費用で製造できるが、そのかわり人間というのは秘密にしておかないとならないシロモノであった。
「しかたないわよ! あの人は士官候補生よ! あたいみたいな三流大学にしか入れそうもない学力と経済力じゃ一緒になれないじゃないのよ。せめて一緒に航海をお供にして見守っていたいのよ!」
彼女は一度言い出したら曲げない事を知っていたケイタはどうしたものかと思ってしまった。その彼は、ケイタの友人であった。彼とは身分の差を認識しないほど濃厚な友情を築いていたが、その様子を見て妹が夢中になるのは仕方ない事かもしれなかった。彼から見れば妹のようにしか見ていないのは確かだというのに。もう、こうなったら兄としたら・・・見送るしかなかった。
「で、いつ改造手術を受けるのか、お前?」
「次の月曜日よ。取りあえず大学には休学届を出したから。それとお父さんとお母さんには出発後に言ってね」
妹の決心は固かった。それにしても、なんでわざわざ機械になって正体が分からなくする必要があるのか? そんな疑問をケイタは感じていた。
「思い直せよ、ツズル! あの男はエリートなんだぞ! お前なんか、まあ言っちゃ悪いが・・・自分のにいうのもなんだが、振り向いてくれないぞ。そんなストーカーになるために自分の身体を捨てるみたいなことなんか」
宇宙士官学校の実習補助員のアズマケイタは妹にを説得しようとしていた。彼女が志願しようとしていたのは、長期の宇宙実習航海のクルーであったが、彼女の場合は亜空間で行動できる要員として身体を機械と一体化した措置を受けなければならなかった。しかも、兄に黙って志願して対象者に選抜されてしまったのだ。
「お兄ちゃん、身体を捨てるわけじゃないわよ。実習航海が終われば元の状態に戻れるのよ。その間でもあの人と一緒に過ごせればいいのよ!」
ツズルは普段の態度から想像できないほど、積極的かつ強引に主張していた。でも、ケイタは彼女が改造される姿を想像するだけで嫌だった。彼女は航海中の士官たちを慰めるような、まあ性欲のはけ口なんかVRマシーンでも出来るというのに、女性客室乗務員でも生々しい姿にされるのが分かったからだ。
「でもなあ、なんでよりによってクリスタルレディなんだ! あれってまるで良くいってヌード芸術品、悪くいえば宇宙艦隊の悪趣味でしかないぞ! 今の時代女性の方が地位が高いといってもなんなんだよ!」
亜空間では生身の人間の活動は制限されるので、亜空間航行中の宇宙船の管理を行うのは機械化措置を受けサイボーグになった人間、もしくはアンドロイドであるが、前者は姿形は人間の時と変わらないが、後者の場合はロボットそのものにしか見えない姿であった。しかも、アンドロイドの中には人間の肉体を改造したものがあった。
その一つがクリスタルレディであった。
クリスタルレディは「機械生命体」といえるもので、肉体を機械で覆ってからバイオスーツでコーディングするもので、サイボーグ化するよりもはるかに安い費用で製造できるが、そのかわり人間というのは秘密にしておかないとならないシロモノであった。
「しかたないわよ! あの人は士官候補生よ! あたいみたいな三流大学にしか入れそうもない学力と経済力じゃ一緒になれないじゃないのよ。せめて一緒に航海をお供にして見守っていたいのよ!」
彼女は一度言い出したら曲げない事を知っていたケイタはどうしたものかと思ってしまった。その彼は、ケイタの友人であった。彼とは身分の差を認識しないほど濃厚な友情を築いていたが、その様子を見て妹が夢中になるのは仕方ない事かもしれなかった。彼から見れば妹のようにしか見ていないのは確かだというのに。もう、こうなったら兄としたら・・・見送るしかなかった。
「で、いつ改造手術を受けるのか、お前?」
「次の月曜日よ。取りあえず大学には休学届を出したから。それとお父さんとお母さんには出発後に言ってね」
妹の決心は固かった。それにしても、なんでわざわざ機械になって正体が分からなくする必要があるのか? そんな疑問をケイタは感じていた。
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