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第一章:転校生はお人形?

7.胸のときめき

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 雛乃にそう思うまで俺は片思いであったが、ほかの女を好きになった事があった。でも全て中坊の幼い恋だったので叶え方も知らずまた何をするのか分からないままで終わった。だが今感じているこの胸のときめきは・・・戸惑っていた。いくら世話をするように言われていたとはいえ、話したこともないうえに、人形みたいな姿の女に感じるなんて!

 後で知った事であるが、その時雛乃は人形のようにされた自分の身体を動かすのに精いっぱいで周りをよく認知できなかったということであるが、唯一わかったのは俺だったという。だから互いにひかれあったと・・・いうわけではなかった。互いにそれを確認する術などなかったからだ。

 その日の午前中の授業は激しい梅雨が醸し出す鬱陶しい湿度と雨音に支配されていたが、俺の頭と胸の中は雛乃に対する思いがゆっくりと吹き上がっていた。だから俺は昼休憩中に色々聞いてみたかった。でも、やっぱりタブレットに文字が浮かぶだけなんだろうな、きっと。

 四時間目前の休憩時間、俺は雛乃の方を見ていた。彼女の人形の顔は一切変わっていなかった。彼女の顔は少し微笑みを浮かべたような感じであったが、どこか憂いがあるような気がしないでもなかった。だから俺は素顔は本当に情報を得るのに必要なんだと感じていた。

 そんなとき、彼女の方から小さく合図をしてタブレットを見ろという仕草をした。するとこんな事が表示されていた。

 ”今日の天気ってみんなやっぱりうっとおしいの?”

 そこで俺もこんな事を聞いてみた。

 「ああ湿っぽくって蒸し暑いから今日は。ところで君のその着ぐるみのようなスーツって気持ち良いの?」

 雛乃は後ろの介助員の顔を見てからどこかの誰かに聞くような素振りをしてからこう答えた。

 ”あんまり詳しく言えないけど、とても清々しいわよ。私の身体が自由になったような気がするしね”

 着ぐるみの中にいる方が清々しい? 俺は意外だと思った。でもそれは言わされているかもしれないとも感じていた。後ろの介助員は本当は監視員なんだと。だからいつ介入してくるのかを思うと次の質問ができなかった。

 四時間目が終わったので雛乃に近づいて話をしようと思ったら、外からホームルーム時間に来ていた連中の一部が入って来た。そして雛乃を連れ出していった。ひと事「メンテナンスする」といって。
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