処刑された女子少年死刑囚はガイノイドとして冤罪をはらすように命じられた

ジャン・幸田

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少女は処刑台に登る

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なんでこうなったのだろう・・・

気がついた時、わたしはナイフを持っていた。その手は脂がついた血糊で穢れていた。

すぐさま警察に捕まったわたしは大量殺人犯として裁かれた。18歳の誕生日を迎えていたので、死刑を言い渡されてしまった。

周りの大人たちはこぞって自分がやったんだろと決めつけていた。でも、わたしはやっていない! 記憶がないのだ! そう主張したけど聞き入れてくれなかった。そして・・・


「貴様の死刑を執行する!」


わたしは黒い布を被せられ絞首台の上にいた。わたしの裁判はあっという間に進行し、一年もしないうちに確定してしまった。異常な速さで! しかも、世間の要求だといって、確定後一ヶ月もしないうちに死を宣告されたの・・・


「わ、わたしはやっていません! もう一度調べてください! お願いです!」


「調べるか? 再審を請求したって無駄な時間伸ばしをするな! だから急ぐのだ! いい加減認めろ!」


抵抗するわたしを刑務官たちは両肩を抱えながら言った。もう何を言ってもむだだのようだ。

泣き叫ぶ? 疲れ果て気力もない!

無実を訴える? 取り合ってもらえない!

悲しむ家族がいる? 天涯孤独のわたしには家族はいない!

地獄に行く? それはないわ、本当にやっていないのよ、わたしは!


視界が奪われた中で、懺悔するようにと諭す牧師らしき声が聞こえた。

「藤瀬美樹さん、いよいよ主の下にお戻りなさい。悪しき魂であっても救われるかもしれません。もし、白き魂なら、最後の審判の前に再びこの世に舞い戻るかもしれません。その時は正しき者に導かれるはずです」

わたしには、その時の牧師の言葉の意味が分からなかった。なぜ、そんなことを言うのだろうかと?


そう思っていると、首の周りに太い縄がかけられてしまった!


「それでは、執行を行います。各担当者はボタンの前にいってください。合図とともにボタンを押してください」

いよいよだった。わたし美樹が歴史上初めてだという女子少年死刑囚として執行される瞬間だった。その名称はおかしいけど・・・わたしはどうでも良かった。だって死ぬのにかわらないから。なぜ死ぬかといえば、濡れ衣で処刑されるから。

ブザーが鳴った瞬間、わたしの足元の蓋が下に開き、わたしの身体は落下していった。そして首に猛烈な圧迫が締付があった! わたしは死ぬんだ! その瞬間、意識を手放してしまった! もう考えることはないわ・・・





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「午前10時42分、心停止を確認! 御臨終です! 執行は終了!」

医師の声で藤瀬美樹の死亡が宣告された。刑務官はこれから失禁などによって汚れた床の清掃や、遺体を納棺する作業のはずだった。身寄りのない美樹の遺体は誰も引き取り手がないので、即座に火葬され共同納骨堂に送られることになっていた。

火葬場に美樹の遺体を運ぶステーションワゴンがやってきたが、その車両に違和感を感じた刑務官はいなかった。全てはいつもの事だった。犯罪者の厳罰を推進する保守政権になってから、死刑の執行件数は激増していたから、感覚が麻痺していた。

美樹の遺体を乗せたステーションワゴンが出発してからしばらくして、ちょっとした騒動が起きた。もう一台、美樹の遺体を運ぶ運搬車がやってきたのだ。その前に出発したステーションワゴンはいったいなんだったのか?

刑務官たちはざわついたが、責任問題にしたくないため、有耶無耶になった。美樹の遺体は消滅してしまった。そこから新たな物語が始まる。
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