打ち切りマンガの勇者キャラ？ が家に居候して困っております

一・勇者は居候！

２・打ち切りマンガのキャラクターなの？（３）

　内容を教えていくにしたがい彼の顔に困惑がにじみ出ていた。理由ははっきり言えば話がめちゃくちゃだったからだ。打ち切りマンガといえば、最初に読者の心を掴めなくて読者アンケートの評判が悪ければ、やれることにパターンはいくつかある。

　読者の心を掴むために格闘編に入るなど、急な方向展開をやるわけだ。もちろん例外はあるかもしれないけど「ソードクエスト龍虎傳」は、打ち切りマンガの王道？　に突入した。そして打ち切りが不可避になると、最終回直前に回想編を入れて最期は俺たちの戦いはこれからだ！　といった終わり方だ。これが主人公が死んで終わりよりも救いはあるかもしれないけど、由貴をはじめとする全国のベルティーナファン（何人もいなかったかもしれないけど）は消化不良だったに違いなかった。そのうえ絡みなんかなかったのに、ユキナを孕ませたなんてなんなのよ！　と不満も抱いていた。

　全てに目を通したベルティーナのイケメンな顔に浮かぶ苦悩の表情に由貴は、なんか胸のトキメキを感じ始めていた。でも、それには憐みの感情も籠っていた。可哀そうに思っていた。

　「なあ、悪いがあんたの名前聞いておらんかったんだが、なんて呼べばいいのか？」

　それが最初の彼の言葉だった。たしかにこの家の三人は自己紹介などしていなかった。まあ、ただの通りすがりなら別段珍しいこともないけど、それなのに家の中に入れていたが。

　「あたいは由貴よ！　それでこちらは弟の貴樹で母の珠美。こちらもいろいろ聞きたいけど・・・」

　その時だった、珠美が割り込んできた。それは彼を美味しい出すと思いきや、なんと。

　「それよりも晩御飯にしましょうね♬　お腹空いたしね、そこのベルティさんも一緒にいかがですか？　残ったものしかないけど」

　その言葉を聞いてベルティーナは二つ返事でいただきます！　といった。イケメンと言えどもお腹は空いていたらしい。もっとも、その日の晩御飯は二日目のカレーライスだったが。それでも美味しく食べる彼の姿を見て由貴はこう思った。本当に打ち切りマンガのキャラクターなのこいつはと。食べている姿の描写はいくらでもあったけど、こんなふうに育ち盛りの小学生みたいな幼い感じではなかったはずだと。