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第237話 機動戦士ガンダム 第08MS小隊 その10 嵐の中で輝いて編
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08小隊語りも、とうとう10回目ですよ。エヴァと並んでしまいました。今回は語り残したユーリ・ケラーネとイーサン・ライアーについて語ってキャラ編を終わり、主題歌のことと総評に移りたいと思います。なので、今回のサブタイトルは主題歌の曲名からいただきました。
前回語った本多知恵子演じる美人秘書を愛人にしていたユーリ・ケラーネですが、初登場時の厚かましいキャラという印象は大きく変わりませんでした。ただ、後半になって部下思いという属性が追加されたので印象自体は結構変わっているという。
もっとも、実は南極条約違反の核兵器を秘かに使っているあたり、やっぱり一筋縄ではいかない性格ではあるのでしょうが。その割にギニアスに嵌められたのは、ギニアスを甘く見ていたからなのでしょうか。前にも書いたように、巻き添えで死んだ部下たちが哀れでした。
あと、初代『ガンダム』でデギン・ザビとナレーターをやっていた永井一郎がジダン・ニッカード爺さんと、司令官であるイーサン・ライアー大佐を演じているというのは、既に書きました。
このイーサン・ライアー大佐というのが、査問回ではシローに理解があるところを示して好人物風に描かれていたのに、実体はというと権力欲に取りつかれており目的のためには手段を選ばず、部下の損耗も気にしないというタイプの軍人でした。三階級も上のレビル将軍を陰で呼び捨てにしているあたり、実は士官学校では同期だったとか、場合によってはレビル将軍の方が後輩の可能性もあるんじゃないかなとか思ったり。
このあたり、ギニアスの二面性と対比をなす、連邦軍側の二面性を象徴する存在でしたね。最後は、そのギニアスの放ったメガ粒子砲でビッグ・トレーの艦橋を撃ち抜かれて戦死します。
キャラ語りはこんなものでしょうか。プラモは既に弟でさえも買う年齢ではなくなっていたので、結局買ってなかったと思います。
総評に入る前に主題歌について。オープニングの『嵐の中で輝いて』は非常に名曲です。歌詞も作品のテーマに沿っていました。オープニング映像もカッコ良く、パラシュート降下する陸戦型ガンダムとか、ロングバレルキャノンを手持ちで撃つ陸戦型ガンダムとか、非常にカッコ良い絵がありました。このロングバレルキャノンを撃つときに手前の地面にシールドを刺してあったのが、遠近法でちょうど砲架のように見えたことで、シールドを砲架にして使っていると誤解されたのが、通称「輝き撃ち」なんだそうで。このネタも、今回のエッセイを書くためにググって初めて知りましたよ。
さて、最後に総評です。最初にも書いたとおり、評価が非常に難しいのですよ。というのは、全体的なストーリーラインと、部分的な演出の整合が取れてないという印象があるからなんです。
全体のストーリーで言えば、敵味方として出会った男女のラブストーリーです。ロミジュリですね。王道と言えば王道でしょう。
その展開に説得力を持たせるために、主人公は理想家肌の甘ちゃんにした。これは、ある程度しょうがないかなと思います。
その一方で、部分部分の演出は、特に初代『ガンダム』からファンになったリアルロボット派向けになっているんですよ。MSは初代『ガンダム』のバリエーション機や、よりリアル志向にディティールアップされたものだったり、初代『ガンダム』の脇役メカをディティールアップしたものだったり。
そして、その『ガンダム』ファン向けの演出として、ロボ戦にせよ、メカの描き方にせよ、リアル志向で地味な戦闘だったりするわけですよ。砂漠の中で待ち伏せしたりとか、マゼラ・アタックで戦ったりとか。派手なのは最後の決戦だけです。
さらには、初代『ガンダム』を思わせる「戦場の無情さ」みたいなものも描いているという。シローが青臭い理想論を唱えても、ゲリラ村の連中もジオン兵も殺し合って大半が死んでしまうし、シローは自らの手で敵兵を撃たないといけなくなる。苦労して味方を撤退させた兵士たちは謀殺される。その撤退した傷病兵も、アイナの必死の策も空しくケルゲレンと共に散る。
この、メインのラブストーリーと、部分部分のミリタリーな演出が噛み合ってないという印象が、どうしてもぬぐえないんです。
これねえ、本作よりあとに『ボトムズ』見たら、その印象が一層強まったんですよ。だって『ボトムズ』だって、ミリタリーな演出と雰囲気は凄くあるのに、メインは実はキリコとフィアナのラブストーリーで、それもやっぱり最初は敵として出会ってるロミジュリなんですよ。それなのに『ボトムズ』は、その両者がうまく噛み合ってて、破綻してない。
それに比べると、どうしても本作は「噛み合ってない」と思えてしまうんですよね。
これが、もし最初から最後まで神田監督が手がけていたら、うまく整合して噛み合っていたのかは判断が難しいところです。結局は変わらなかったのかもしれない。それに、飯田監督の手腕も決して悪いものではないです。ノリスのグフ・カスタムの獅子奮迅の戦いとか、非常にカッコ良くて面白い話でしたし。
しかし、それでもなお、失われた可能性について、惜しいと思う気持ちがあるのですよ。
ということで、ミリタリー系の演出とか、渋めのMS戦とか、脇役メカの活躍とか、グフ・カスタム無双とか、部分部分では非常に好みだったり、面白いと思うところもあるのですが、総評で言うと高評価を与えるのは難しいなあと思える作品だったのでありました。
さて、これで08小隊については終わりまして、次回は『勇者司令ダグオン』に行きたいと思います。
前回語った本多知恵子演じる美人秘書を愛人にしていたユーリ・ケラーネですが、初登場時の厚かましいキャラという印象は大きく変わりませんでした。ただ、後半になって部下思いという属性が追加されたので印象自体は結構変わっているという。
もっとも、実は南極条約違反の核兵器を秘かに使っているあたり、やっぱり一筋縄ではいかない性格ではあるのでしょうが。その割にギニアスに嵌められたのは、ギニアスを甘く見ていたからなのでしょうか。前にも書いたように、巻き添えで死んだ部下たちが哀れでした。
あと、初代『ガンダム』でデギン・ザビとナレーターをやっていた永井一郎がジダン・ニッカード爺さんと、司令官であるイーサン・ライアー大佐を演じているというのは、既に書きました。
このイーサン・ライアー大佐というのが、査問回ではシローに理解があるところを示して好人物風に描かれていたのに、実体はというと権力欲に取りつかれており目的のためには手段を選ばず、部下の損耗も気にしないというタイプの軍人でした。三階級も上のレビル将軍を陰で呼び捨てにしているあたり、実は士官学校では同期だったとか、場合によってはレビル将軍の方が後輩の可能性もあるんじゃないかなとか思ったり。
このあたり、ギニアスの二面性と対比をなす、連邦軍側の二面性を象徴する存在でしたね。最後は、そのギニアスの放ったメガ粒子砲でビッグ・トレーの艦橋を撃ち抜かれて戦死します。
キャラ語りはこんなものでしょうか。プラモは既に弟でさえも買う年齢ではなくなっていたので、結局買ってなかったと思います。
総評に入る前に主題歌について。オープニングの『嵐の中で輝いて』は非常に名曲です。歌詞も作品のテーマに沿っていました。オープニング映像もカッコ良く、パラシュート降下する陸戦型ガンダムとか、ロングバレルキャノンを手持ちで撃つ陸戦型ガンダムとか、非常にカッコ良い絵がありました。このロングバレルキャノンを撃つときに手前の地面にシールドを刺してあったのが、遠近法でちょうど砲架のように見えたことで、シールドを砲架にして使っていると誤解されたのが、通称「輝き撃ち」なんだそうで。このネタも、今回のエッセイを書くためにググって初めて知りましたよ。
さて、最後に総評です。最初にも書いたとおり、評価が非常に難しいのですよ。というのは、全体的なストーリーラインと、部分的な演出の整合が取れてないという印象があるからなんです。
全体のストーリーで言えば、敵味方として出会った男女のラブストーリーです。ロミジュリですね。王道と言えば王道でしょう。
その展開に説得力を持たせるために、主人公は理想家肌の甘ちゃんにした。これは、ある程度しょうがないかなと思います。
その一方で、部分部分の演出は、特に初代『ガンダム』からファンになったリアルロボット派向けになっているんですよ。MSは初代『ガンダム』のバリエーション機や、よりリアル志向にディティールアップされたものだったり、初代『ガンダム』の脇役メカをディティールアップしたものだったり。
そして、その『ガンダム』ファン向けの演出として、ロボ戦にせよ、メカの描き方にせよ、リアル志向で地味な戦闘だったりするわけですよ。砂漠の中で待ち伏せしたりとか、マゼラ・アタックで戦ったりとか。派手なのは最後の決戦だけです。
さらには、初代『ガンダム』を思わせる「戦場の無情さ」みたいなものも描いているという。シローが青臭い理想論を唱えても、ゲリラ村の連中もジオン兵も殺し合って大半が死んでしまうし、シローは自らの手で敵兵を撃たないといけなくなる。苦労して味方を撤退させた兵士たちは謀殺される。その撤退した傷病兵も、アイナの必死の策も空しくケルゲレンと共に散る。
この、メインのラブストーリーと、部分部分のミリタリーな演出が噛み合ってないという印象が、どうしてもぬぐえないんです。
これねえ、本作よりあとに『ボトムズ』見たら、その印象が一層強まったんですよ。だって『ボトムズ』だって、ミリタリーな演出と雰囲気は凄くあるのに、メインは実はキリコとフィアナのラブストーリーで、それもやっぱり最初は敵として出会ってるロミジュリなんですよ。それなのに『ボトムズ』は、その両者がうまく噛み合ってて、破綻してない。
それに比べると、どうしても本作は「噛み合ってない」と思えてしまうんですよね。
これが、もし最初から最後まで神田監督が手がけていたら、うまく整合して噛み合っていたのかは判断が難しいところです。結局は変わらなかったのかもしれない。それに、飯田監督の手腕も決して悪いものではないです。ノリスのグフ・カスタムの獅子奮迅の戦いとか、非常にカッコ良くて面白い話でしたし。
しかし、それでもなお、失われた可能性について、惜しいと思う気持ちがあるのですよ。
ということで、ミリタリー系の演出とか、渋めのMS戦とか、脇役メカの活躍とか、グフ・カスタム無双とか、部分部分では非常に好みだったり、面白いと思うところもあるのですが、総評で言うと高評価を与えるのは難しいなあと思える作品だったのでありました。
さて、これで08小隊については終わりまして、次回は『勇者司令ダグオン』に行きたいと思います。
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