燃えよ、ロボ魂!!

結城藍人

文字の大きさ
上 下
179 / 344

第179話 勇者特急マイトガイン その2 俺が噂の旋風児!編

しおりを挟む
 マイトガイン語りも2回目です。サブタイトルは主人公の舞人のセリフからいただきました。もしかしたら名字の「旋風寺」なのかもしれませんが、

 さて、今回はメタネタやパロネタを中心に語りたいと書きました。まずは語りやすいパロネタから行きたいと思います。

 本作はタイトルや主役ロボ名自体がパロネタだったりします。元ネタは「マイトガイ」。日活無国籍アクションで活躍していた時代の小林こばやしあきらのニックネームなんですね。この「マイト」は「ダイナマイト」の略で、つまりは「爆弾男」って意味です。日活映画の『渡り鳥』シリーズや『銀座旋風児』シリーズが人気を取ったのですが、これ主に1950年代末から60年代の映画なんですよね。これWikiによると「旋風児」と書いて「マイトガイ」と読んだこともあったようです。舞人の名字である「旋風寺」はこの映画が元ネタだと考えられ、サブタイにいただいたセリフも、これから取ったのでしょう。なお、舞人には「嵐を呼ぶ旋風児」というキャッチフレーズもあるので、石原裕次郎もハイブリッドしています(笑)。

 ライバルキャラである「雷張らいばるジョー」は、まあ名字はそのまんま(笑)なんですが、名前の「ジョー」は、上記映画シリーズでライバル役を演じていた「エースのジョー」こと宍戸ししどじょうから取ったものです。この、「ライバルがジョー」は特撮の『快傑ライオン丸』『風雲ライオン丸』の「タイガージョー」でも採用されているほか、『ガッチャマン』の味方ライバル「コンドルのジョー」も実は元ネタはコレなんじゃないかと少し疑ってたりします(笑)。

 あ、敵キャラの「ショーグン・ミフネ」も三船みふね敏郎としろうが元ネタじゃないかという気もしますが、こっちは、どちらかというとアメリカ人が持ってるサムライ・ニンジャのステレオタイプを元ネタにしているという印象があります。

 ほかのメインキャラも、日活無国籍アクションの女優や俳優などから取られているネーミングが多くあります。

 ただ、これらのパロネタって元ネタが相当に古いんですよ。大元ネタは60年代がメイン、二次パロネタは70年代前半なんですね。93年の作品で、これらをパロディにするというのは、どう考えても「子供向け」ではない。

 70年代にパロディにするのは、まだわかります。大元ネタが近いので。例えば特撮『快傑ズバット』(1977年)なんかも、『渡り鳥』シリーズをモチーフにしています。

 しかし、90年代前半にパロネタにするには大元ネタが古すぎるのですよ。私だって大元ネタの方は直接は知らないんですから。

 逆に、前回書いた「波動砲」なんかは、ダイレクト直撃世代なので、すぐにわかってゲラゲラ笑ってましたけど。ただ、こちらも当時は高校生や大学生だった世代にはわかるネタなので「子供向け」ではない。

 そう、このマイトガインでは、それまでの勇者シリーズの鉄則だった「子供向け」を最優先するという思想が崩れているんです。

 それは、メタネタについても言えます。たとえば、勇者ロボの製造や修理を行う旋風寺コンツェルンの工場がある地名は「青戸」です。これ、スポンサーで玩具メーカーのタカラの所在地「東京都葛飾区青戸」から取ってるんですね。

 そして、メタネタの最たるものは、最終回で明かされた悪の根源であるラスボス「ブラック・ノワール」の正体でした。何とその正体は「」だったのです。アニメの中に描かれた二次元人(=平面の中の存在)である舞人たちは、三次元人(=つまり我々)が楽しむための駒にすぎないということを語り「たまには悪が勝っても面白い」とうそぶくという。ただ、このブラック・ノワールも最後には舞人に倒されて「自分自身も駒にすぎなかった」ことに気付いて消滅します。

 これ、リアルタイム当時に見たときは、正直「凄え!」と思いながらも、「でも、これ子供向けのアニメでやっていいのかな?」とも思いました。

 その「子供向けのアニメでこれやっていいのかな?」は、細かいストーリー部分でも結構あったりします。

 例えば、ショーグン・ミフネの部下のコジローが操縦する「剣豪ロボ ケンゴー」は必殺技の「ツバメ斬り」で一度マイトガインに完勝してるんですよ。そこでトドメは刺さないで去って行くという。それを見たミフネも「奥ゆかしい」とか言って賞賛するんですよ(笑)。そこはまだネタとして許容範囲なんですが、それに対する舞人の対策がツバメロボを囮として撃ち出すというもの。それでツバメロボを斬ってる隙に攻撃するという(笑)。それを見て「これ卑怯なんじゃね?」とか思ってたところに舞人が「お前は慢心する己の心に負けたのだ!」みたいなセリフをコジローに向けて言ったので、「ちょっと待てぃ! お前偉そうに説教できる立場か!?」と思わずツッコんでしまったという(笑)。

 これだけではなく、この『マイトガイン』という作品は、全般的に「子供向けの皮をかぶせているが実はオタ向け」というテイストで作られているんですよ。そういうネタや雰囲気が随所に見られるという。

 これは、後年の『勇者王ガオガイガー』とは、また違った雰囲気なんです。詳しくはガオガイガーの所で書きますが、ガオガイガーは真摯に「子供向け」と「大人の鑑賞に耐える」を両立させています。

 それに対して、このマイトガインは、「子供向け」として作っていることは確かで、そこで手抜きをしているとは思わないのですが、やっぱり裏ターゲットである「オタ向け」の部分が、「子供向け」の部分を侵食してしまっているんですよ。

 そこが、どうしても気になる所ではあるんですね。

 その一方で、勇者シリーズとしては初めてヒロイン「吉永サリー」との恋愛きっちりと描いてたりとか、ジョーが乗るライバルロボ「飛竜ひりゅう」に敗れてパワーアップとかの燃える展開とか、評価すべき点も非常に多くあります。

 ライバルから最終的には仲間になるジョーの二号ロボ「轟竜ごうりゅう」のドリルについては、敵の幹部エグゼブが「ドリルは取れ」と言っていたのにビークル形態では機首に残っていて、それで最後にエグゼブはそのドリルに貫かれて殺されるのですが、今際いまわきわ「だからドリルは取れといったのだ……」とつぶやくという。この伏線の張り方は実に見事で、非常に記憶に残っています。Wikiとか、ほかのWebページでも書かれているので、印象に残った人が多いのかなと思います。

 それから、オープニング主題歌の「嵐の勇者(ヒーロー)」は同時代的なカッコ良さと、伝統的なスーパーロボットソングが融合した名曲です。エンディングテーマは前期、後期とも悪側を歌っているのですが、これまたカッコ良さと作品内容(悪側)にマッチした名曲なんですね。そして、合体シーンなどで使われている挿入歌の「レッツ・マイトガイン!!」と「グレート・ダッシュ!!」がまた名曲という。音楽的な面でも名曲揃いなんですよ。

 なお、本作はタカラがスポンサーだったにもかかわらずスパロボにも登場しているそうなのですが、残念ながらその頃のスパロボは未プレイです。

 私個人としては、その「メタネタ・パロネタが多い」ことは大好物なので大好きな作品ではあります。当時の漫画などでマイトガイン自体がパロディにされているのも見かけたことがあるので、オタ受けする作品だったことは間違いないかと思います。

 その一方で「じゃあ、本来ターゲットの子供向けとしてはどうよ?」という疑問もはらみつつ、総合的に考えると名作だったんじゃないかなと思える作品でした。

 さて、次は大問題作『Vガンダム』行ってみましょう!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

呪配

真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。 デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。 『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』 その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。 不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……? 「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

天空からのメッセージ vol.70 ~魂の旅路~

天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き そのために、親を選び そのために、命をいただき そのために、助けられて そのために、生かされ そのために、すべてに感謝し そのためを、全うする そのためは、すべて内側にある

1976年生まれ、氷河期世代の愚痴

相田 彩太
エッセイ・ノンフィクション
氷河期世代って何? 氷河期世代だけど、過去を振り返ってみたい! どうしてこうなった!? 1976年生まれの作者が人生を振り返りながら、そんなあなたの疑問に答える挑戦作! トーク形式で送る、氷河期愚痴エッセイ! 設定は横読み推奨というか一択。 エッセイとは「試み」という意味も持っているのである。 オチはいつも同じです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...