全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第一章 ― 優 ―

同好会活動②

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「遥斗先輩、同好会できましたよ!」

 部室に入ると、相変わらずイーゼルに向かっている遥斗先輩がいた。
 私が真っ先に報告すると、チラリと見て、また絵に戻った。

「もー、すごいとか早いとか言ってくださいよー」
「すごい早いな」

 棒読みで遥斗先輩が言った。
 全然興味がなさそう。
 まぁ、そうか、先輩としてはなにも変わらないんだし。

「それで、たまにこのプリンターを使いに来ますが、大丈夫ですか?」
「なにが?」
「お邪魔じゃないですか?」
「今さらそれを聞くか?」

 あきれたように遥斗先輩は私を見た。
 だって、プリンター使えると喜んで、思い至らなかったんだもん。
 こういうところがダメなんだよね、私……。

「すみません……」

 反省して俯く私に先輩は「勝手にすればいい。これから写真同好会の部屋になるらしいし」と言った。
 口調は冷たいけど、受け入れられたうれしさに声が弾んでしまう。

「ありがとうございます!」

 そして、早速、物が積み重ねられたパソコンとプリンターの周囲を整理して、スイッチを入れた。

「もしかしてもうパスワードを入手したのか?」
「はい!」 
「本当にすごい行動力だな……」

 遥斗先輩はあきれたような感心したような声を漏らした。

 ID、パスワードを入れると、すんなりパソコンは立ち上がった。
 なんと画像編集ソフトまで入っている。私の使っているのはお小遣いの関係でフリーソフトだけど、この本格的なソフトを使うといろんなことができるんだろうな。
 でも、まずは自分で撮ったそのままの写真を確認したい。
 プリンターの電源も入れて用紙をセットすると、気に入った写真を5枚選んでプリントしてみた。
 一番最初に遥斗先輩と出会ったときの朝焼けの写真、街を眺める遥斗先輩の横顔、屋上からの街の眺め、桜吹雪の写真、ここでイーゼルに向かう遥斗先輩の写真。

 ……遥斗先輩が多いな。
 直近で撮った写真がほとんど遥斗先輩だったから仕方ないんだけど、ちょっと面映い。

 プリントアウトした写真を眺める。
 朝焼けの写真はちょっと露出を上げた方がいいかな?
 遥斗先輩の横顔の写真は、ぴったりと顔にピントが合っていて、美しい。
 こんなにピントが合ったアップに耐えられる顔なんてなかなかないよ……。

「へぇ、なかなかいいじゃん」

 写真と同じ顔がそばにあった。
 わっ、いきなり近寄らないでよ!
 ドキドキする心臓を抑え、平気な顔を装う。

「どれがいいと思いますか?」
「この朝焼けの写真は構図がいいな。もう少し鮮やかに撮れたらよかったのにな」
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