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第三章 

わかってます?①

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 しばらくして、遥斗先輩の顔に表情が戻って、微笑んでくれるようになった。
 ようやく日常が戻ってきた。
 季節はもう冬だった。

「あー、寒かったぁ」

 土曜日の朝、部室に来た私は気温差にブルッと震えた。

 遥斗先輩はいつものように絵を描いていた。
 私を見ると、次の行動がわかったようで手を拭き、イーゼルからちょっと離れた。
 ふふっ、学習してる。
 そんな先輩に駆け寄って、飛びついた。

「おはよーございます、遥斗先輩」

 先輩は私を難なく受け止めて、綺麗な笑みをこぼす。

「おはよう、優」

 遥斗先輩は私の頬を温めるように手で挟み込んで、唇を落とした。

「唇まで冷たいな」

 そのまま抱きしめてくれる。

 あったかい。
 
 私より体温の高い先輩に包まれて、うっとりする。
 いろいろあったけど、最近の遥斗先輩はこんな風にとっても甘い。

 もうそろそろいいんじゃないかな?

 私は用意していた言葉を発した。

「先輩。お誕生日が過ぎちゃったって気がついてます? 私、誕生日プレゼントをあげそこなってるんですけど」

 遥斗先輩は私を見て、首を傾げた。

「別になにもいらない。お前がいれば、それでいい」

 も、もうっ! なんてことを言うのよ!

 さらりとベタ甘な言葉を吐く先輩に、ぐっと詰まって赤くなるけど、負けてられない。

「じ、じゃあ、プレゼントに私をもらってください!」

 そう言って背中に回した手に力を込めると、先輩はビクッとして身体を強張らせた。そして、慌てて身体を離そうとする。
 離されまいと先輩にしがみつく。

「お誕生日にって言ってたじゃないですか!」
「まだ早いって言ってただろ?」

 ペリッといつものように身体を剥がされる。

 まだだったらしい……。

 最近、真奈美先輩と遥斗先輩を見て、モヤモヤしている。
 二人ともそんな気は全然ないとわかっているけど、ふとした瞬間、二人の距離が近い気がして。真奈美先輩の色っぽさにも焦りを感じる。

 遥斗先輩はさっきみたいに私を好きだとストレートに表してくれる。
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