167 / 171
第三章
わかってます?①
しおりを挟む
しばらくして、遥斗先輩の顔に表情が戻って、微笑んでくれるようになった。
ようやく日常が戻ってきた。
季節はもう冬だった。
「あー、寒かったぁ」
土曜日の朝、部室に来た私は気温差にブルッと震えた。
遥斗先輩はいつものように絵を描いていた。
私を見ると、次の行動がわかったようで手を拭き、イーゼルからちょっと離れた。
ふふっ、学習してる。
そんな先輩に駆け寄って、飛びついた。
「おはよーございます、遥斗先輩」
先輩は私を難なく受け止めて、綺麗な笑みをこぼす。
「おはよう、優」
遥斗先輩は私の頬を温めるように手で挟み込んで、唇を落とした。
「唇まで冷たいな」
そのまま抱きしめてくれる。
あったかい。
私より体温の高い先輩に包まれて、うっとりする。
いろいろあったけど、最近の遥斗先輩はこんな風にとっても甘い。
もうそろそろいいんじゃないかな?
私は用意していた言葉を発した。
「先輩。お誕生日が過ぎちゃったって気がついてます? 私、誕生日プレゼントをあげそこなってるんですけど」
遥斗先輩は私を見て、首を傾げた。
「別になにもいらない。お前がいれば、それでいい」
も、もうっ! なんてことを言うのよ!
さらりとベタ甘な言葉を吐く先輩に、ぐっと詰まって赤くなるけど、負けてられない。
「じ、じゃあ、プレゼントに私をもらってください!」
そう言って背中に回した手に力を込めると、先輩はビクッとして身体を強張らせた。そして、慌てて身体を離そうとする。
離されまいと先輩にしがみつく。
「お誕生日にって言ってたじゃないですか!」
「まだ早いって言ってただろ?」
ペリッといつものように身体を剥がされる。
まだだったらしい……。
最近、真奈美先輩と遥斗先輩を見て、モヤモヤしている。
二人ともそんな気は全然ないとわかっているけど、ふとした瞬間、二人の距離が近い気がして。真奈美先輩の色っぽさにも焦りを感じる。
遥斗先輩はさっきみたいに私を好きだとストレートに表してくれる。
ようやく日常が戻ってきた。
季節はもう冬だった。
「あー、寒かったぁ」
土曜日の朝、部室に来た私は気温差にブルッと震えた。
遥斗先輩はいつものように絵を描いていた。
私を見ると、次の行動がわかったようで手を拭き、イーゼルからちょっと離れた。
ふふっ、学習してる。
そんな先輩に駆け寄って、飛びついた。
「おはよーございます、遥斗先輩」
先輩は私を難なく受け止めて、綺麗な笑みをこぼす。
「おはよう、優」
遥斗先輩は私の頬を温めるように手で挟み込んで、唇を落とした。
「唇まで冷たいな」
そのまま抱きしめてくれる。
あったかい。
私より体温の高い先輩に包まれて、うっとりする。
いろいろあったけど、最近の遥斗先輩はこんな風にとっても甘い。
もうそろそろいいんじゃないかな?
私は用意していた言葉を発した。
「先輩。お誕生日が過ぎちゃったって気がついてます? 私、誕生日プレゼントをあげそこなってるんですけど」
遥斗先輩は私を見て、首を傾げた。
「別になにもいらない。お前がいれば、それでいい」
も、もうっ! なんてことを言うのよ!
さらりとベタ甘な言葉を吐く先輩に、ぐっと詰まって赤くなるけど、負けてられない。
「じ、じゃあ、プレゼントに私をもらってください!」
そう言って背中に回した手に力を込めると、先輩はビクッとして身体を強張らせた。そして、慌てて身体を離そうとする。
離されまいと先輩にしがみつく。
「お誕生日にって言ってたじゃないですか!」
「まだ早いって言ってただろ?」
ペリッといつものように身体を剥がされる。
まだだったらしい……。
最近、真奈美先輩と遥斗先輩を見て、モヤモヤしている。
二人ともそんな気は全然ないとわかっているけど、ふとした瞬間、二人の距離が近い気がして。真奈美先輩の色っぽさにも焦りを感じる。
遥斗先輩はさっきみたいに私を好きだとストレートに表してくれる。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
僕《わたし》は誰でしょう
紫音
青春
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※第7回ライト文芸大賞奨励賞受賞作品です。
※表紙イラスト=ミカスケ様
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ノーパン派の沼尻さんが俺にだけ無防備すぎる
平山安芸
青春
クラスメイトの沼尻(ヌマジリ)さん。ちょっとミステリアスな雰囲気が魅力の美少女。
クールビューディー、学校のアイドル、高嶺の花。そんな言葉がよく似合う、文句のつけようがない完璧な女子高生。
ただし露出狂である。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる