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第三章 

突然の別れ②

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 心配そうに見ている友達に、『あとで』と口パクで伝えて廊下に出た。




「遥斗先輩!」

 部室に行くと、先輩はぼんやりとして座っていた。
 瞳に光がなく無の表情で、胸が締めつけられる。

「遥斗先輩!」

 もう一度名前を呼ぶと、かろうじてこっちを向いてくれた。
 その頭を抱きしめる。

「優……? どうして?」
「私も行きます」
「そこまでする必要はない」
「ありますよ! だって、彼女だもん!」

 そう言うと先輩はつらそうに目をつぶった。

「遥斗、行こう」

 和田先生が声をかけると、先輩は立ち上がって、三人で先生の車で病院に向かった。




 病院に着くと泣き腫らした目の中年の女性が出迎えてくれて、先輩に泣いて謝ってきた。

「ハルちゃん! ごめんね、私がちゃんと見ていれば……。ふらついて危ないとは思っていたのよ。でも、まさか……」

 派手な色のドレスを着ていて、夜のお仕事の人かなと思ったら、遥斗先輩のお母さんの勤め先のスナックのママだそうだ。

 先輩のお母さんは昨夜、店が終わったあと、ずいぶん酔っていて、ふらっと車道に飛び出して車に跳ねられたらしい。
 すぐ救急車で病院に運ばれたけど、即死状態で、ママが遥斗先輩に連絡を取ろうとしていたけど、誰も連絡先を知らず、結局、朝になって、先輩の中学校経由で連絡が来たらしい。

 遺体と対面したあと、無表情の先輩がママに頭を下げた。

「母がご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんて! 私が気をつけていたらよかったのよ。最近、危ないとは思っていたのに」

 そう言って、またママは号泣した。

「いえ、あなたのせいではありません。母の不注意なだけで」

 淡々とした表情で遥斗先輩が声をかける。
 
 少し離れた場所に警察と一緒にいた男の人が近寄ってきて、深く頭を下げた。

「本当になんとお詫びしていいか……」

 車を運転していた人だった。
 遥斗先輩はその人にも「母のせいでご迷惑をおかけしました」と言っていた。

 そのあと、事故の処理の打ち合わせ、葬式の手配など、様々な事務作業が待っていたけど、スナックのママが大概を引き受けてくれた。付き合いのある弁護士がいるとかで、事故の処理は任せて、葬式の方は自ら動いてくれた。
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