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第三章
不満があります!③
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荒い息を吐く私の耳許に口づけながら、先輩がささやく。
「ほら、こんなことになるんだよ……」
それはとても色っぽい声で、ただでさえ力が抜けているのに、それだけで腰砕けになりそうだった。
へにゃへにゃになった私を先輩は壁際のマットに連れていき、座らせた。
まともに立っていられなかったから、有り難い。
「お前にはまだ早いだろ?」と笑って自分は立ち上がろうとするから、しがみついて、無理やり隣に座らせ、抱きつく。
「優……まだわからないのか?」
気がつくと、先輩の顔越しに天井を見ていた。
押し倒された!?
鋭い切羽詰まった瞳で先輩が見つめてくる。
「そんなに抱かれたいのか?」
先輩が覆いかぶさってきて、激しく口づけられる。
髪をくしゃくしゃに掻き乱されて、首筋から肩を伝い、腰を這うようになでられる。
男の顔をした先輩は怖くはないのに、身体が震えた。
このまま抱かれるの………?
先輩の愛撫に慄きながら、目を閉じると、ふっと手が止まった。
瞼を開くと、じっと観察するように先輩が見下ろしていた。
「優、どうしてそんなに焦っているんだ?」
先輩は静かに聞いた。
「焦ってなんか……」
「わざと俺を煽ってるだろ?」
見抜かれている……。
私が誰かに対抗したいと思っているのもバレてる?
「優、そんなに焦らなくていい」
「でも、だって……」
「震えてるじゃないか。怖いんだろ? 俺は十分満たされている。だから、焦って俺に全部くれなくていいんだ」
首を横に振った。
私が焦っているのは自分勝手な理由だ。
「違うんです! 私が嫌なんです。誰か他の人が私より遥斗先輩を知っているのが。だから……」
「優……」
優しく抱きしめられ、口づけられた。
「お前、なんでそんなにかわいいんだ」
チュッチュッと頬や耳許にキスを落とされる。
「お前以上に俺を知ってるやつなんかいないよ。優と会ってから、俺は初めてばかりだ。キスをするのも初めてだし、こんなに誰かを愛しく思うのも初めてだ。それじゃ、ダメか?」
甘い甘い瞳で先輩が言ってくれるから、顔が火照って真っ赤になる。
キスするの初めてだったんだ。愛しいって……。
相変わらず、先輩の言葉はストレートで、一番欲しい言葉を惜しげもなくくれる。
「ダメじゃないです」
顔を先輩の胸にうずめて、続けた。
「………先輩、好き」
「俺もだ。お前が思っているよりもずっと好きだ。だから、不安になるな」
先輩が私の伸びた髪をなでた。
その優しい手つきに不安が消えていく。
急に引っ張り起こされ、その勢いのまま、先輩の胸に閉じ込められる。
頭のてっぺんに耳に頬にキスの雨が降ってくる。最後に先輩は私の顔を上げさせると、チュッとふれるだけのキスをくれた。
そして、真摯な表情で顔を覗き込まれる。
「お前を本当に大事にしたいんだ。衝動的になんかしたくない。ゆっくり……ゆっくり慣れていこう」
そう言うと、急に私を放して、立ち上がってしまった。
「先輩……?」
「だから、これ以上はダメだ。我慢できなくなる」
ケチ……。だから、いいって言ってるのに。
絵の前に逃げていった先輩を追いかけていく。
先輩は動揺すると、絵を描いて、気持ちを落ち着けようとするくせがある。
かわいい。
「遥斗先輩の感覚だと、どれくらい経てばいいんですか?」
「そんなのわかるか!」
「えー、じゃあ、遥斗先輩のお誕生日にっていうのはどうですか? って、そもそも誕生日はいつですか?」
「11月1日だ。でも、まだ早い!」
「えぇー、だいぶ先じゃないですか!」
不満げにつぶやく。でも、まだ過ぎてなくてよかった。
先輩はちらりとこちらを見た。
「ゆっくりって言っただろ?」
こうなったら先輩は頑固だ。きっと今までと同じで私にふれてくれなさそう。
でも、頑固なのは負けてない。
「じゃあ、先輩。キスぐらいはしてくださいね」
そうねだると、チュッとキスを落とされた。
「これくらいのな」
了承されるとは思ってなかった私は赤くなって、俯いた。
「ほら、こんなことになるんだよ……」
それはとても色っぽい声で、ただでさえ力が抜けているのに、それだけで腰砕けになりそうだった。
へにゃへにゃになった私を先輩は壁際のマットに連れていき、座らせた。
まともに立っていられなかったから、有り難い。
「お前にはまだ早いだろ?」と笑って自分は立ち上がろうとするから、しがみついて、無理やり隣に座らせ、抱きつく。
「優……まだわからないのか?」
気がつくと、先輩の顔越しに天井を見ていた。
押し倒された!?
鋭い切羽詰まった瞳で先輩が見つめてくる。
「そんなに抱かれたいのか?」
先輩が覆いかぶさってきて、激しく口づけられる。
髪をくしゃくしゃに掻き乱されて、首筋から肩を伝い、腰を這うようになでられる。
男の顔をした先輩は怖くはないのに、身体が震えた。
このまま抱かれるの………?
先輩の愛撫に慄きながら、目を閉じると、ふっと手が止まった。
瞼を開くと、じっと観察するように先輩が見下ろしていた。
「優、どうしてそんなに焦っているんだ?」
先輩は静かに聞いた。
「焦ってなんか……」
「わざと俺を煽ってるだろ?」
見抜かれている……。
私が誰かに対抗したいと思っているのもバレてる?
「優、そんなに焦らなくていい」
「でも、だって……」
「震えてるじゃないか。怖いんだろ? 俺は十分満たされている。だから、焦って俺に全部くれなくていいんだ」
首を横に振った。
私が焦っているのは自分勝手な理由だ。
「違うんです! 私が嫌なんです。誰か他の人が私より遥斗先輩を知っているのが。だから……」
「優……」
優しく抱きしめられ、口づけられた。
「お前、なんでそんなにかわいいんだ」
チュッチュッと頬や耳許にキスを落とされる。
「お前以上に俺を知ってるやつなんかいないよ。優と会ってから、俺は初めてばかりだ。キスをするのも初めてだし、こんなに誰かを愛しく思うのも初めてだ。それじゃ、ダメか?」
甘い甘い瞳で先輩が言ってくれるから、顔が火照って真っ赤になる。
キスするの初めてだったんだ。愛しいって……。
相変わらず、先輩の言葉はストレートで、一番欲しい言葉を惜しげもなくくれる。
「ダメじゃないです」
顔を先輩の胸にうずめて、続けた。
「………先輩、好き」
「俺もだ。お前が思っているよりもずっと好きだ。だから、不安になるな」
先輩が私の伸びた髪をなでた。
その優しい手つきに不安が消えていく。
急に引っ張り起こされ、その勢いのまま、先輩の胸に閉じ込められる。
頭のてっぺんに耳に頬にキスの雨が降ってくる。最後に先輩は私の顔を上げさせると、チュッとふれるだけのキスをくれた。
そして、真摯な表情で顔を覗き込まれる。
「お前を本当に大事にしたいんだ。衝動的になんかしたくない。ゆっくり……ゆっくり慣れていこう」
そう言うと、急に私を放して、立ち上がってしまった。
「先輩……?」
「だから、これ以上はダメだ。我慢できなくなる」
ケチ……。だから、いいって言ってるのに。
絵の前に逃げていった先輩を追いかけていく。
先輩は動揺すると、絵を描いて、気持ちを落ち着けようとするくせがある。
かわいい。
「遥斗先輩の感覚だと、どれくらい経てばいいんですか?」
「そんなのわかるか!」
「えー、じゃあ、遥斗先輩のお誕生日にっていうのはどうですか? って、そもそも誕生日はいつですか?」
「11月1日だ。でも、まだ早い!」
「えぇー、だいぶ先じゃないですか!」
不満げにつぶやく。でも、まだ過ぎてなくてよかった。
先輩はちらりとこちらを見た。
「ゆっくりって言っただろ?」
こうなったら先輩は頑固だ。きっと今までと同じで私にふれてくれなさそう。
でも、頑固なのは負けてない。
「じゃあ、先輩。キスぐらいはしてくださいね」
そうねだると、チュッとキスを落とされた。
「これくらいのな」
了承されるとは思ってなかった私は赤くなって、俯いた。
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