全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第三章 

私の魅力①

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 いろんなことが起こっている間に7月になった。
 いつものように部室で過ごして、帰り支度をしていると、送ってくれようと遥斗先輩が立ち上がった。
 あれ以来、先輩は毎日送っていってくれている。
 でも、もう事態は収まった。もう誰も私を気にしていない。もう大丈夫よね?
 ズルズルと引き伸ばしていたけど、7月になったら言おうと思っていた。

「先輩、もう送ってくれなくても大丈夫ですよ?」

 遥斗先輩は静かに私を見た。
 毎日、とりとめもないことを話しながら帰るのは楽しかった。話しているのはほとんど私だったけど。でも、毎日そんなことをさせるのは悪いとも思っていた。

「お前は………」

 先輩はなにか言いかけたけど、なんでもないと首を振って、また私を見た。

「俺は意外と……たんだけどな」

 ぼそりとつぶやく。

「え?」

 聞き返すけど、先輩はまた首を振って、わかったと言い、絵に戻ってしまった。

 待って、待って、今『気に入っていた』って言った?
 先輩も楽しいと思ってくれていたの?

 ………なんで余計なことを言っちゃったんだろう。私のバカ!

 泣きたい気分で立ち尽くしていると、先輩がどうしたとばかりにこちらを見る。

「先輩………やっぱり今日は送っていってほしいです」

 自分で断ったくせにと呆れられるかと思ったら、遥斗先輩は優しく微笑んで、立ち上がった。

 せっかく送ってもらったのに、その日は胸がいっぱいでほとんどなにも話せず、ただ黙って家まで歩いた。




「優、髪伸びたよね?」
「うん、肩について跳ねるの。なんとかならないかなぁ」

 色気のないのをなんとかしたいと、ひそかに髪を伸ばしていた。
 でも、今、中途半端な長さで毎日跳ねるから、毎朝髪と格闘している。

「あー、その時期は仕方ないよねー。巻いたら?」
「巻く?」
「コテで巻くとごまかせるよ」

 さやちゃんがあっさりと言う。

「コテなんて使ったことないー」

 ずっとショートヘアーだったから、髪の毛をいじったことなんかない。
 女子力の違いを感じる。

「やったげようか? 私、コテ持ってるよ?」
「ほんと?」
「私もやってー。さやちゃん、いつも髪の毛かわいくしてるよねー?」

 お弁当を食べたあと、トイレでゆるふわ巻きの講習が始まった。

「これくらいを挟んで、くるんと」
「おぉー! 綺麗なカールができた! 私がやるとなんか変な跡がつくのよ」
「それは固定しすぎだよ」
「私はコテを買ってくるところから始めなきゃ」

 わいわい言いながら、さやちゃんに髪を巻いてもらう。
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