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第三章
嫌な予感②
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遥斗先輩はそのうち飽きるって言っていたけど、翌日はさらにフィーバーしていた。
噂を聞いた子が家で広報誌を見て、先輩を見に行った子がまた噂して……とどんどん話が広まっていった。
私もあれこれ知らない人にまで聞かれるようになって、なんて答えていいか困った。
菜摘ちゃんとさやちゃんが適当に捌いてくれるのが本当に助かった。
先輩のもとにもひっきりなしに誰かが来ていたようで、放課後に寄ったときにはげんなりしていた。
私がいる間も、トントンと何度もノックの音がして、これが続いたら、ノイローゼになりそうと思った。
「先輩、大丈夫ですか? 思ったよりひどいですね」
「まぁ、なんとかな。明日は土曜だから、さすがに来ないだろう。土日が過ぎれば少しはマシになるんじゃないか?」
願望も込めて先輩が言う。
「そうだといいですね」
週末は、約束のホットケーキを持ってきて、先輩と一緒に食べた。
土曜日までここに押しかける子はいなくて、ほっとする。
これで落ち着いてくれるといいなぁ。
そう思ったけど、甘かった。
週明けは、どこで聞いたのか、写真同好会に入りたいという子が殺到した。
どうやら遥斗先輩がずっと鍵をかけて居留守をつかっているから会えなくて、代わりに私のところに来たらしい。
『会員は募集していない』と丁重にお断りすると、みんな不満げに去っていった。
そのうち、通りすがりにコソコソ話されるようになって、とってもイヤな感じ。
友達がそばにいるときはいいけど、一人でいるときなんかはちょっと怖い。
なんで女の子って群れると凶悪になるんだろう?
部室に行くときにはキョロキョロ辺りを見回すようになっちゃった。
一度、集団に囲まれて責めたてられているところを通りすがりの森さんに助けられた。
「お前、久住に関わってから、碌なことないな」って言われたけど、「遥斗先輩は悪くないです!」と答えたら、呆れた顔をされた。
はぁっ。
これっていつまで続くのかな?
部室に行くと、遥斗先輩も疲れていた。
なぜかカーテンが閉まっている。
「どうしてカーテンを閉めているんですか?」
私が聞くと、心底うんざりした顔で、先輩は答えた。
「窓から忍び込まれそうになった」
「え、だって、ここ2階……」
「あぁ、隣の部屋から伝って覗こうとしていたから、慌ててカーテンを閉めたんだ」
想像して、思わずゾクッとする。
それは気持ちが悪すぎる。
「はぁ……。俺の周りにはなんでこんな女しかいないんだろうな」
暗い目で先輩がつぶやくから、煩わせている女の子みんなに腹が立ってくる。
私が怒りで黙り込んでいると、先輩が誤解したようで、私の頭をなでた。
「あぁ、お前は違うぞ? 優は安心できる」
そんな風に言われて微笑まれて、うれしいけど、切なくなった。
先輩にとっては、私は女ではなくただの安全牌なんだろうなぁ。
「はい、安心してください。私はストーカーにはなりませんから」
「いや、来るなと言ってもここに来てたけどな。ある意味、一番しつこい」
先輩がからかうように言った。
「しつこいって、ひどい!」
膨れた私をまた先輩がなでた。
噂を聞いた子が家で広報誌を見て、先輩を見に行った子がまた噂して……とどんどん話が広まっていった。
私もあれこれ知らない人にまで聞かれるようになって、なんて答えていいか困った。
菜摘ちゃんとさやちゃんが適当に捌いてくれるのが本当に助かった。
先輩のもとにもひっきりなしに誰かが来ていたようで、放課後に寄ったときにはげんなりしていた。
私がいる間も、トントンと何度もノックの音がして、これが続いたら、ノイローゼになりそうと思った。
「先輩、大丈夫ですか? 思ったよりひどいですね」
「まぁ、なんとかな。明日は土曜だから、さすがに来ないだろう。土日が過ぎれば少しはマシになるんじゃないか?」
願望も込めて先輩が言う。
「そうだといいですね」
週末は、約束のホットケーキを持ってきて、先輩と一緒に食べた。
土曜日までここに押しかける子はいなくて、ほっとする。
これで落ち着いてくれるといいなぁ。
そう思ったけど、甘かった。
週明けは、どこで聞いたのか、写真同好会に入りたいという子が殺到した。
どうやら遥斗先輩がずっと鍵をかけて居留守をつかっているから会えなくて、代わりに私のところに来たらしい。
『会員は募集していない』と丁重にお断りすると、みんな不満げに去っていった。
そのうち、通りすがりにコソコソ話されるようになって、とってもイヤな感じ。
友達がそばにいるときはいいけど、一人でいるときなんかはちょっと怖い。
なんで女の子って群れると凶悪になるんだろう?
部室に行くときにはキョロキョロ辺りを見回すようになっちゃった。
一度、集団に囲まれて責めたてられているところを通りすがりの森さんに助けられた。
「お前、久住に関わってから、碌なことないな」って言われたけど、「遥斗先輩は悪くないです!」と答えたら、呆れた顔をされた。
はぁっ。
これっていつまで続くのかな?
部室に行くと、遥斗先輩も疲れていた。
なぜかカーテンが閉まっている。
「どうしてカーテンを閉めているんですか?」
私が聞くと、心底うんざりした顔で、先輩は答えた。
「窓から忍び込まれそうになった」
「え、だって、ここ2階……」
「あぁ、隣の部屋から伝って覗こうとしていたから、慌ててカーテンを閉めたんだ」
想像して、思わずゾクッとする。
それは気持ちが悪すぎる。
「はぁ……。俺の周りにはなんでこんな女しかいないんだろうな」
暗い目で先輩がつぶやくから、煩わせている女の子みんなに腹が立ってくる。
私が怒りで黙り込んでいると、先輩が誤解したようで、私の頭をなでた。
「あぁ、お前は違うぞ? 優は安心できる」
そんな風に言われて微笑まれて、うれしいけど、切なくなった。
先輩にとっては、私は女ではなくただの安全牌なんだろうなぁ。
「はい、安心してください。私はストーカーにはなりませんから」
「いや、来るなと言ってもここに来てたけどな。ある意味、一番しつこい」
先輩がからかうように言った。
「しつこいって、ひどい!」
膨れた私をまた先輩がなでた。
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