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第三章
すごい!②
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教えてもらった新聞部のメールアドレスに、写真と記事のデータを送る。
これでよし!
「今日はメールチェックするのを忘れてた」
遥斗先輩が寄ってきた。
ちょっと貸してくれと言って、後ろからパソコンを操作する。
近い! 近すぎるよ、先輩!
「ふーん、遥斗はメールも使い始めたんだ」
「絵を売り始めたから、チェックしないといけないんだ」
「絵を売る?」
「…………売れてる」
「えっ、また売れたんですか? すごいですねー!」
俯いていた視線をパソコンに戻すと、たしかに『売れました』の文字が目に入る。
「遥斗先輩は、先週から手作りサイトで絵を売り始めたばかりなのに、もうこれで3枚も売れたんですよ!」
「すごいじゃない! さすがねー」
私が得意げに言うと、真奈美先輩が目を丸くする。
「そうですよねー。まぁ、素敵な絵ばかりだから……」
「違うわ。さすがって言ったのは優ちゃんのこと」
「えっ?」
「1ヶ月ちょいでこの変化はすごいなーって。ね、遥斗?」
真奈美先輩が同意を求めると、遥斗先輩は苦笑していた。
「自分で猪突猛進って言ってたしな」
「それは言い得て妙ね」
二人とも私を見て、吹き出した。
私はむくれかけたけど、自分でもおかしくなって、一緒に笑ってしまった。
家に帰ると、お母さんが私宛に郵便物が届いていたわよと教えてくれた。
市役所からの封筒。
なんで市役所?
不思議に思いながら開けてみると、なんと私の写真が審査員特別賞を取ったというお知らせだった。
ゴールデンウィーク前に応募した市の『私の街コンクール』だ。
遥斗先輩が優しい表情で街を見下ろしている写真。もちろん、気に入って応募したんだけど、それが審査員特別賞?
うそ………。
「お母さん! お母さん! 見てみて!」
急いで台所に駆け込む。
「なあに? 騒がしいわねー」
のんびりと言うお母さんに、封筒を押しつけて、読んで読んでと繰り返す。興奮して、それ以上言葉が出てこなかった。
料理の手を止めて、お母さんは手紙に目を通してくれた。
「え、すごいじゃない、優!」
「すごいでしょ?」
「すごい! すごいわ!」
二人してすごいを連発して、それ以外の言葉を失っていた。そのうち帰ってきたお父さんも加わって、三人ですごいを繰り返した。
明日、遥斗先輩に報告しなくっちゃ。
喜んでくれるかな?
きっと喜んでくれるはず。
笑顔の遥斗先輩を期待してしまう。
これが新たな火種になるなんて、そのときは夢にも思っていなかった。
これでよし!
「今日はメールチェックするのを忘れてた」
遥斗先輩が寄ってきた。
ちょっと貸してくれと言って、後ろからパソコンを操作する。
近い! 近すぎるよ、先輩!
「ふーん、遥斗はメールも使い始めたんだ」
「絵を売り始めたから、チェックしないといけないんだ」
「絵を売る?」
「…………売れてる」
「えっ、また売れたんですか? すごいですねー!」
俯いていた視線をパソコンに戻すと、たしかに『売れました』の文字が目に入る。
「遥斗先輩は、先週から手作りサイトで絵を売り始めたばかりなのに、もうこれで3枚も売れたんですよ!」
「すごいじゃない! さすがねー」
私が得意げに言うと、真奈美先輩が目を丸くする。
「そうですよねー。まぁ、素敵な絵ばかりだから……」
「違うわ。さすがって言ったのは優ちゃんのこと」
「えっ?」
「1ヶ月ちょいでこの変化はすごいなーって。ね、遥斗?」
真奈美先輩が同意を求めると、遥斗先輩は苦笑していた。
「自分で猪突猛進って言ってたしな」
「それは言い得て妙ね」
二人とも私を見て、吹き出した。
私はむくれかけたけど、自分でもおかしくなって、一緒に笑ってしまった。
家に帰ると、お母さんが私宛に郵便物が届いていたわよと教えてくれた。
市役所からの封筒。
なんで市役所?
不思議に思いながら開けてみると、なんと私の写真が審査員特別賞を取ったというお知らせだった。
ゴールデンウィーク前に応募した市の『私の街コンクール』だ。
遥斗先輩が優しい表情で街を見下ろしている写真。もちろん、気に入って応募したんだけど、それが審査員特別賞?
うそ………。
「お母さん! お母さん! 見てみて!」
急いで台所に駆け込む。
「なあに? 騒がしいわねー」
のんびりと言うお母さんに、封筒を押しつけて、読んで読んでと繰り返す。興奮して、それ以上言葉が出てこなかった。
料理の手を止めて、お母さんは手紙に目を通してくれた。
「え、すごいじゃない、優!」
「すごいでしょ?」
「すごい! すごいわ!」
二人してすごいを連発して、それ以外の言葉を失っていた。そのうち帰ってきたお父さんも加わって、三人ですごいを繰り返した。
明日、遥斗先輩に報告しなくっちゃ。
喜んでくれるかな?
きっと喜んでくれるはず。
笑顔の遥斗先輩を期待してしまう。
これが新たな火種になるなんて、そのときは夢にも思っていなかった。
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