135 / 171
第三章
すごい!②
しおりを挟む
教えてもらった新聞部のメールアドレスに、写真と記事のデータを送る。
これでよし!
「今日はメールチェックするのを忘れてた」
遥斗先輩が寄ってきた。
ちょっと貸してくれと言って、後ろからパソコンを操作する。
近い! 近すぎるよ、先輩!
「ふーん、遥斗はメールも使い始めたんだ」
「絵を売り始めたから、チェックしないといけないんだ」
「絵を売る?」
「…………売れてる」
「えっ、また売れたんですか? すごいですねー!」
俯いていた視線をパソコンに戻すと、たしかに『売れました』の文字が目に入る。
「遥斗先輩は、先週から手作りサイトで絵を売り始めたばかりなのに、もうこれで3枚も売れたんですよ!」
「すごいじゃない! さすがねー」
私が得意げに言うと、真奈美先輩が目を丸くする。
「そうですよねー。まぁ、素敵な絵ばかりだから……」
「違うわ。さすがって言ったのは優ちゃんのこと」
「えっ?」
「1ヶ月ちょいでこの変化はすごいなーって。ね、遥斗?」
真奈美先輩が同意を求めると、遥斗先輩は苦笑していた。
「自分で猪突猛進って言ってたしな」
「それは言い得て妙ね」
二人とも私を見て、吹き出した。
私はむくれかけたけど、自分でもおかしくなって、一緒に笑ってしまった。
家に帰ると、お母さんが私宛に郵便物が届いていたわよと教えてくれた。
市役所からの封筒。
なんで市役所?
不思議に思いながら開けてみると、なんと私の写真が審査員特別賞を取ったというお知らせだった。
ゴールデンウィーク前に応募した市の『私の街コンクール』だ。
遥斗先輩が優しい表情で街を見下ろしている写真。もちろん、気に入って応募したんだけど、それが審査員特別賞?
うそ………。
「お母さん! お母さん! 見てみて!」
急いで台所に駆け込む。
「なあに? 騒がしいわねー」
のんびりと言うお母さんに、封筒を押しつけて、読んで読んでと繰り返す。興奮して、それ以上言葉が出てこなかった。
料理の手を止めて、お母さんは手紙に目を通してくれた。
「え、すごいじゃない、優!」
「すごいでしょ?」
「すごい! すごいわ!」
二人してすごいを連発して、それ以外の言葉を失っていた。そのうち帰ってきたお父さんも加わって、三人ですごいを繰り返した。
明日、遥斗先輩に報告しなくっちゃ。
喜んでくれるかな?
きっと喜んでくれるはず。
笑顔の遥斗先輩を期待してしまう。
これが新たな火種になるなんて、そのときは夢にも思っていなかった。
これでよし!
「今日はメールチェックするのを忘れてた」
遥斗先輩が寄ってきた。
ちょっと貸してくれと言って、後ろからパソコンを操作する。
近い! 近すぎるよ、先輩!
「ふーん、遥斗はメールも使い始めたんだ」
「絵を売り始めたから、チェックしないといけないんだ」
「絵を売る?」
「…………売れてる」
「えっ、また売れたんですか? すごいですねー!」
俯いていた視線をパソコンに戻すと、たしかに『売れました』の文字が目に入る。
「遥斗先輩は、先週から手作りサイトで絵を売り始めたばかりなのに、もうこれで3枚も売れたんですよ!」
「すごいじゃない! さすがねー」
私が得意げに言うと、真奈美先輩が目を丸くする。
「そうですよねー。まぁ、素敵な絵ばかりだから……」
「違うわ。さすがって言ったのは優ちゃんのこと」
「えっ?」
「1ヶ月ちょいでこの変化はすごいなーって。ね、遥斗?」
真奈美先輩が同意を求めると、遥斗先輩は苦笑していた。
「自分で猪突猛進って言ってたしな」
「それは言い得て妙ね」
二人とも私を見て、吹き出した。
私はむくれかけたけど、自分でもおかしくなって、一緒に笑ってしまった。
家に帰ると、お母さんが私宛に郵便物が届いていたわよと教えてくれた。
市役所からの封筒。
なんで市役所?
不思議に思いながら開けてみると、なんと私の写真が審査員特別賞を取ったというお知らせだった。
ゴールデンウィーク前に応募した市の『私の街コンクール』だ。
遥斗先輩が優しい表情で街を見下ろしている写真。もちろん、気に入って応募したんだけど、それが審査員特別賞?
うそ………。
「お母さん! お母さん! 見てみて!」
急いで台所に駆け込む。
「なあに? 騒がしいわねー」
のんびりと言うお母さんに、封筒を押しつけて、読んで読んでと繰り返す。興奮して、それ以上言葉が出てこなかった。
料理の手を止めて、お母さんは手紙に目を通してくれた。
「え、すごいじゃない、優!」
「すごいでしょ?」
「すごい! すごいわ!」
二人してすごいを連発して、それ以外の言葉を失っていた。そのうち帰ってきたお父さんも加わって、三人ですごいを繰り返した。
明日、遥斗先輩に報告しなくっちゃ。
喜んでくれるかな?
きっと喜んでくれるはず。
笑顔の遥斗先輩を期待してしまう。
これが新たな火種になるなんて、そのときは夢にも思っていなかった。
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる