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第二章 ― 遥斗 ―

希望⑤

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「梱包と発送は明日一緒にやりましょうよ」
「いや、行きつけの宅急便屋があるから、そこに相談してみる」
「行きつけ……」

 その表現がおもしろかったのか、優がふふっと笑う。

「何度も大きな絵を持ち込んでいるから、顔見知りになったんだ」
「なるほどー。たしかにプロに聞くのがいいかも。最近はこういう手作りサイトの発送用の箱とかいろいろあるみたいですし」
「そうだな。明日、日中に行ってみる」


 そんなことをしているうちに、日が暮れてきた。

「あ、帰んなきゃ!」

 時計を見て、慌てて優が立ち上がった。

「先輩、さよなら。また明日!」
「あぁ、また明日」

 ぶんぶん手を振って帰っていく優を見送る。


 パソコンの前に戻って、作業をしようとしたとき、優の声が聞こえた気がした。なにか叫んでいる感じだった。
 ドアを開けてみると、廊下のちょっと先の方に、野球部のユニホーム姿の男二人と優がいた。

「……だから、違います!」
「そんなこと言って、俺たち知ってるんだぜ? 毎日久住のところに通ってるだろ? そんな純情そうな顔して欲求不満なのか?」
「熱心に通ってる一年って君のことだろ? 俺たちが慰めてやろうか?」
「だから、そんなんじゃないって……きゃっ」

 優が首を振って否定しているところに、一人の男が優の腕を掴んだ。

 カッと怒りで目の前が赤くなる。
 
 優になにしてるんだ!

 声を出そうとしたとき、別の声が響いた。

「なにやっているんだ!」

 男たちの後ろからもう一人の野球部員が現れて、男の手を振り払うと優をかばうように背中に隠した。

「なんだよ、森。カッコつけんなよ」
「格好なんかつけてない。この子はただの写真部の部員だ。部室に通っているだけだ」
「はぁ?」
「写真部なんてあったか?」
「この子が作ったんだ。それに、田中。この子は、佐伯先輩の妹だぞ?」
「マジ? やべー」

 ひとりは優の兄を知っていたようで、首をすくめた。

「いや、わりーな、俺行くわ」
「なんだよ。つまんねーな」
「他のくだらない噂をしてるやつにも言っとけよ! この子は違うって。じゃないと佐伯先輩に言いつけるぞ?」
「はいはい、じゃーな」

 二人はそそくさと立ち去った。
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